不思議現象 なぜ信じるのか

菊池聡、宮元博章 他著

 

 私はオカルトが大好きだ。最近は少なくなったがテレビの心霊番組があれば必ずといっていい程見ている。ただ本当に霊の存在とかUFOとかを信じているのかと云えばそういう訳ではない。ただ「面白い」から見るのだ。

 本書は私の大学生の時にとった心理学の教科書である。普通(?)教科書をじっくり読む事はあまりないが本書は扱っている内容が主にオカルトを心理学を通して読み解くというものであり、平易な記述も手伝って興味深く読んだ。オカルトとは科学で説明出来ない不可解現象のことである。また血液型占いや予知夢、更には「心理ゲーム」などもとり扱われている。
 本書を読むと科学的実証の難しさと問題点を感じざるを得ない。第5章「検査で「自分」がわかるのか」では雑誌などによく出ている心理ゲームを取り上げているが同時にロールシャッハテストやY-G性格検査、文章完成法検査なども詳しく紹介されている。前者はデタラメとまでいわずともやはりゲームであり科学的でないと思われている。一方ロールシャッハテストに代表される心理学者による分析は科学的であると思われている。しかしこれらのテストが「信頼性、妥当性についてはすでに十分に検証されており、信用しても良い」ものであるかどうかは「残念ながらそうとうは言い切れない」という。更に「「科学的」という権威の肩書きをつけているだけよけいにたちの悪いもの」になる可能性があると指摘する。
 だからといって科学的な検証を行わなくても良いのかといえばそういう訳では勿論ない。

 論理的に正しいとか科学的に正しいということは誰の目にも明らかなことであると思いがちである。しかしその「科学的」ということも信じられているという点では全く根拠を持たずに信じられているオカルトと同根であるという点から目を背けてはいけないだろう。何が正しく何が正しくないかと二者択一の姿勢は必ずしも科学的であるとは言い切れない。そして我々は感情のある人間の間で生きているのである。「正しいかどうかと、それが良いことかどうかは、別の次元の問題」である。

 他にも予知夢や心霊写真、気功など様々な不思議現象が扱われている。ただそれらを科学的にデタラメと決め付けるのではなく、心理学を通じて分析し改めて「なぜ信じるのか」という事を考えさせられる本である。

 本書は北大路書房から刊行されている。青字は本書からの引用。

2009/8/17


Book index

Home