東寺宝物館

1999年 秋期特別公開

東寺の37尊 ― 光背の立体世界 ―

1999年9月20日(月)〜11月25日(木) 〔会期中無休〕
9:00〜16:30(入館は16:00まで)
大人/500円 中学生以下/300円
  主    催/真言宗総本山 東寺
  お問い合わせ/京都市南区九条町一番地 電話(075)691-3325
  協    賛/(社)京都市観光協会
       (財)平安建都1200年記念協会

東寺講堂の諸尊修理事業も最終年度を迎え、あとは本尊大日 如来、不動明王を除く四大明王を残すのみとなりました。来年 2000年の4月末には、修理完成の開眼法要を大日堂の落慶法要と あわせて、盛大に行う予定になっています。

この夏に2年がかりで行われていました大日如来光背化仏37 尊の修理が完成いたしました。この機会に金剛界立体曼荼羅を 身近に見ていただきたいと考え、秋の特別公開で、宝物館に展 示することにしました。なぜなら、修理後、大日如来の光背に 戻してしまうと、あまりに高いためよくみることができないた めです。したがって、この37尊の姿をじっくりと見ていただく 最後の機会になると思います。

金剛界の37尊は大日如来を中心に、阿しゅく如来・宝生如 来・阿弥陀如来・釈迦如来の五仏に加えて、四波羅密菩薩・十 六大菩薩・内四供養菩薩・外四供養菩薩・四摂菩薩の32菩薩で、 構成された立体曼荼羅となっています。そして、中央の多宝塔 が大日如来をあらわしています。大日如来の化仏37尊が全て残っ ているのはわが国でも数えるほど敷かなく、しかもこれほど大 きなものはありません。特に貴重なのは平安時代の創建時のも のと考えられる化仏が一躯残っていることです。文明18年 (1486)、東寺は土一揆による火災で、金堂・講堂をはじめ主要 な建物のほとんどを失いました。その時も講堂の21躯の諸尊の うち、15躯までは持ち出せたのですが、あまりに大きいため持 ち出せなかった本尊大日如来化仏のほとんどは大日如来のせめ て化仏だけでもと考え、火中から取り出されたものが一躯今も 残っています。また、化仏のほとんどが大日如来と同様に室町 時代の再興像ですが、中には持物が失われていて、尊名が確定 できなかったり、いずれかの仏像が転用されていたりと完全な 形で残っているわけではありませんでした。それでも、光背に 金剛界37尊がほぼ規則通りに配置されており、先人の苦労の跡 がしのばれます。そして、ひとつひとつの化仏が日本彫刻史の 一つの流れを語ってくれているようです。まさに、光背の中に ひとつの小さな曼荼羅世界があるわけです。

是非この機会に、そのひとつひとつの仏達のメッセージ、語 りかけに耳を傾けていただければ幸いです。全て個性的で約30 センチメートルの小さな仏達が修理を終えて37躯皆様の手の届 くところに降りて参りました。これぞれの仏達がそれぞれの役 割を持ち、大日如来を供養し讃え、またまさに背面からバック アップしているのです。

これらの趣旨をご理解いただくと共に、宗祖弘法大師のご遺 徳を合わせて、東寺千二百年の寺宝に触れていただければ幸い です。


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