聖林寺仰望

桜井駅前には僅かばかりのビルが建ち、 二月の力のない日差しを受けて落とした影が、 ロータリを一層活気なく見せていた。 聖林寺行きのバスは1時間に1本だけで、まだ40分も時間があったので、 開店したばかりで暖房も効いていない駅前食堂でうどんを食べて時間を潰した。

聖林寺前と名前のついた停留所でバスを降りると、 田圃と民家の散在する日本国中どこでもある光景が広がっていた。 一緒に降りた中年女性に聖林寺を尋ねると、 指差す先の小高い丘に白壁の寺が見えた。