大仏と月

薄暮の中で大仏は長く静かな瞑想から目覚め、人知れず小さくため息をつきました。私は上弦の姿で空から彼の肩の辺りを照らし始めていたので、丸い背中が一瞬微かに上下に動くのを見ていたのです。しかし、誰一人それに気付く者はありませんでした。彼の唇の先の虚空に浮かぶ私の姿を見上げて、一人の男が独り言のように呟いただけでした。「大仏のため息……」
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