A 一念発起、四国遍路へ 2014.7.22

本堂は急こう配の石段の上。(25番・津照寺)

 一念発起して、この5月に四国遍路に出掛けることにした。四国88ヵ所霊場は、弘法大師(空海上人)ゆかりの地であり修行の地だ。弘法大師が弘仁6年(815年)に高野山を開創してから今年は1,200年目の記念の年にあたる。

 永きにわたりお大師さまを慕う人々の心の拠り所として、霊場を巡り歩く1,200kmの道が“遍路道”として現在まで続いている。

 昭和初期までは、遍路は歩くことのみだったが、今では廻る人々の都合で、ツアーバス、自家用車、バイク、自転車、歩く、と様々となった。一番多くの人がとる方法はツアーバスだ。一つの札所(お参りをするお寺)で三つの団体に遭遇したこともあった。自家用車の場合は、一度に全てのお寺にお参りするのではなく、週末に夫婦で来て、数寺を回っている人(区切り打ち)が多かった。

 歩き遍路は一番の贅沢。まず健康と体力、加えて暇と金がなければお参りはできない。休暇を取り、大都会から夜行バスで来て、何日かかけて予定の札所を参拝し、また夜行バスで帰る若者や、大きな荷を背負い歩いている外国人にも多く会った。

 夜は遍路小屋(地元の方々が作った休み場所)やお寺の通夜堂に泊まり、低費用で歩くこともできる。毎年3,000人前後の人々が歩き遍路に挑戦をしているという。私には、1,200kmを歩くのが体力的に無理と思い、公共交通機関(列車・バス)を使い、夜は宿に泊まり、札所の前後ではなるべく歩くことにして、1ヵ月余りで一巡をすることができた。

 一概に四国というが、四つの県の集まりだ。歩いているとそれぞれの県の違いが随所で分かる。4県ともに海に面しているが、例えば、東南海地震の備えでは、徳島は地震発生時の津波からの逃げ道が宿屋の部屋に表示されているだけ。高知に入ると駅の近くなど、「海抜5m」と町中の目立つ所に表示されている。それが愛媛に入ると、海のすぐ近くであってもなんの表示もなく、香川では瀬戸内海の豊かさを享受するだけで、津波の心配はぜんぜんしていないようだ。ただ、海岸線に近い札所は、どこも長い階段の上か小高い山の上に本堂があった。その時々の対策より、1,200年の歴史の重みを各寺から学ぶことができた。(Y.I)

*【区切り打ち】…霊場に参詣することを「打つ」といい、88ヵ所すべてを廻ること「通し打ち」、何回かに分けて廻ることを「区切り打ち」という。