性転換
( TransSexualism )


1.「性」の概念

 セックスSEX (性別);生物学的・身体的区別
 ジェンダーGENDER(性役割);文化的・社会的性役割
  セクシャリティSEXUALITY(性欲);性的欲望と行動

a)生物学的要因;脳の男性化/女性化
  XX染色体とXY染色体―SRY遺伝子
  受精後20週頃から男性ホルモンを浴びることによって、脳が男性化する。
  前視床下部間核(ANIH 1-4)に性的二型があるという説もある。
b)心理的要因
  18カ月頃までに性意識が形成され、その後変わることはないと言われる。
  エディプス・コンプレックス(フロイト);ファロスの象徴性
  リビドーの表現型;フェチシズム
c)社会的要因
  社会的規範;男/女らしさは時と場所によって変わる。

2.性同一性障害(sexual identity disorder)

「生物学的には完全に正常であり、しかも自分の肉体がどちらの性に所属しているかをはっきり認知していながら、その反面で、人格的には自分が別の性に属していると確信している」(埼玉医科大倫理委員会)
身体違和(dysphoria);性自認(自分が男/女だという意識)は明らかで,体の方が間違っているという意識、自分を偽っていう感覚
 →同性愛者は身体違和を持たない
アメリカの調査では男性で2万4千〜3万7千人に一人
 女性で10万3千〜15万人に一人
従って日本では、総計2〜7千人の性同一性障害の患者が存在することになる。

3.性転換(TransSexualism

TransSexual; MTF(male to female)
   FTM(female to male)
TransGender;同性愛者(homosexual)はTransSexulityか?
   フェミニスト
  →Transvestism
The Harry Benjamin International Dysphoria Association
1)精神科学的な観察により、反対の性を自己と同一のものと認識することが固定しており、精神病や極端な感情の動揺がないことが確認されていること
2)身体的外観や癖や振舞から、男性の場合、その人が女性としての社会に適応するほどに異性のまねができると考えられる…
3)性転換手術の持つ危険と限界を理解しうるだけの知識のある者であること

4.治療

1969年、性転換手術を行なった医者に優生保護法により有罪判決が下されてからおよそ30年間、この問題は医学界のタブーとなっていたが、ようやく1996年になって埼玉医科大で、次いで1997年に日本精神神経学会で、性転換治療のガイドラインが作られ、1998年10月に国内で最初の性転換手術が行なわれた。
1)精神療法
2)ホルモン治療
3)性転換手術
性転換症の原因は必ずしも特定されないにしても、身体違和で苦しんでいる患者がいて、体を心に一致させる事によって、その人の苦痛を解消する事が出来るなら、手術という方法も許されるのではないか、と考えられる。

5.倫理的側面

生殖を目的とする性のみが「正常な」性であり、それ以外の性は変態であると見なす見方は、フーコーが言うように、近代の「性の装置」であるかも知れない。
「性の自己決定権」を認める事は妥当か?


参考文献
伏見憲明『<性>のミステリー』(講談社現代新書)
虎井まさ衛『女から男になったワタシ』『ある性転換者の記録(青弓社)

→埼玉医科大ホームページ
→Harry Benjamin International Dysphoria Association ; Standards of Care


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