演繹定理の証明

演繹定理(Deduction Theorem)
A1, …, An-1, An → B なら A1, …, An-1 → An⊃B
A1, …, An-1 → An⊃B なら A1, …, An-1, An → B

1)証明とは何か、仮定からの演繹とは何か、を確認する。

証明」とは、有限な式の列を言う。その式の列の各行は、
a) 公理であるか、
b) それ以前の式に推理規則(A と A⊃B から B を得る)を適用した式であるか、
のどちらかである。
この式の列の最後の式を定理といい、この式の列をその定理の証明という。

仮定(A1,…,An-1,Anからの(Bの)演繹」とは、次のような式の列を言う。その式の列の各行は、
a) 公理であるか、
b) 仮定(A1,…,An-1,An)のどれかであるか、
c) それ以前の式に推理規則を適用した式であるか、
のどれかである。
このとき、式 B は仮定 A1,…,An-1,An から演繹されたという。

2)演繹定理とは何か?

(略)

3)演繹定理の証明
(1)A1,…,An-1,An→B なら A1,…,An-1→An⊃B を証明する。
いま、A1,…,An-1,An→B が成立していると仮定する。
すると、Bの式の証明が存在する。それを C1,C2,…,Cm とする。(CmがB である。)

a) 今この式の列の中の任意の Ci について、i=1 の時
C1 は、(1)公理か、(2)仮定(A1,…,An-1)の一つであるか、(3)An そのものである。
(1)公理と(2)仮定(A1,…,An-1,)の場合、
それぞれ →C1  A1,…,An-1→C1 であるから
公理1 →C1⊃(An⊃C1) と推理規則(MP)によって
A1,…,An-1→An⊃C1 つまり
A1,…,An-1→An⊃B
(3)Anの場合、
定理によって An⊃An(=C1) だから、 →An⊃C1
つまり A1,…,An-1→An⊃Ci

b) i>1 の時
いま任意の式 Ci について、それ以前の式 Ck については、数学的帰納法の仮定として、
A1,…,An-1→An⊃Ck が成立していると仮定する。
すると次の四つの場合が考えられる。
(1) Ci は、公理である
(2) Ci は、仮定(A1,…,An-1,An)のどれかである
(3) Ci は、Anそのものである
(4) Ci は、それ以前の式に推理規則(A と A⊃B から B を得る)を適用した式である
(1)(2)(3)の場合は、i=1 の場合と同じ。
(4)の場合、
Ci はそれ以前の式 Ch と Cj から推理規則によって得られたとする。
すると、そのどちらか一方(Cj とする)は、Ch⊃ Ci という形をしているはずである。
帰納法の仮定により A1,…,An-1 → An⊃Ch       (x)
          及び  A1,…,An-1 → An⊃(Ch⊃Ci)  (y)
公理2 →(An⊃(Ch⊃Cj))⊃((An⊃Ch)⊃(An⊃Cj) を使って(y)から
       A1,…,An-1 → (An⊃Ch)⊃(An⊃Ci) (z)
推理規則により(x)(z)から A1,…,An-1 → An⊃Ci

a)とb)から
A1,…,An-1,An→B を証明する式の列(C1,C2,…,Cm )のどれにおいても、それに対応して
A1,…,An-1→An⊃B を証明する式の列(An⊃C1,An⊃C2,…,An⊃Cm )が存在する。ゆえに、
A1,…,An-1,An → B なら A1,…,An-1 → An⊃B

(2)A1,…,An-1→An⊃B なら A1,…,An-1,An→B を証明する。
いま、A1,…,An-1 → An⊃B が成立していると仮定する。
すると、An⊃Bの式の証明が存在する。それを C1,C2,…,Cm とする。(CmがAn⊃Bである。)
この式の列に Cm+1,Cm+2 として、An とB を加える。
この新たな式の列は A1,…,An-1,Anという仮定の下での B の証明である。
(Anは仮定であり、An⊃B とAn からMPにより B が得られる。)
つまり、A1,…,An-1,An → B


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