コメの生産概況
コメはベトナム人の主食であり、また重要な輸出産物である。ドイモイ開始以降の急激な生産量の増加はもっぱら単収の上昇による(図1参照)。北部の紅河デルタと南部のメコンデルタで生産の約7割を占める。北部における稲作は二期作(12〜3月移植→4〜6月収穫の冬春作(乾季作)、7月移植→11月収穫の夏秋作(雨季作))、南部における稲作は三期作(2〜4月の春作、5〜9月の秋作、10〜1月の冬作)である。
かつてコメの恒常的な輸入国だったベトナムは、89年以降コメの輸出国に転じ、今やタイに次ぐコメの輸出国となっている。ドイモイ開始以降、主食であるコメはひたすら量的拡大が求められ、劣等地へも生産拡大が進められた。そのため、肥沃なデルタ地帯では6t/ha以上の生産をあげる一方、山間地や土地条件の悪いところでは2t/ha程度のところもある。
このようなコメの量的拡大政策は2001年に転換点を迎えた。この年にベトナム農業省は2010年までの食糧安全保障政策を打ち出し、稲作に関しては30万haの減反を実施する一方で、紅河・メコン両デルタに政府の投資を集中させることとなった。この時にコメ政策の転換がなされた背景には、国際的なコメ価格の下落がある。2001年のコメ輸出は、数量では前年比7%増にもかかわらず、金額では6%の低下となった。このため、ベトナム米の品質向上による単価底上げが、量的拡大よりも重要となったのである。
図1;過去20年間のベトナムにおけるコメの播種面積と生産量
(ドイモイ開始の1986年を100とする)
出典; Tổng Cục Thống Kê (1994), Niên Giám Thống Kê
1993, Nhà Xuất Bản Thống Kê
Tổng Cục Thống Kê (2001), Niên Giám Thống Kê 2000, Nhà Xuất Bản Thống Kê