その他食用作物の生産概況

日本語で「食料」とは食べ物全般を指し、「食糧」は「食料」の中でも特に主食物である米麦を指す。
  ベトナム語においても、食べ物全般を指す言葉として
thức ăn があり、この中でも特にでんぷん質の高いコメ・トウモロコシ・イモ類を lương thực という。
  トウモロコシやイモ類を野菜に分類せずに別の項目を立てたのは、この理由による。


1. トウモロコシ

2. イモ類
3. 野菜・果樹


.トウモロコシ
 コメに次ぐ第二の食用作物であるトウモロコシは、2001年現在生産量は約216万トン(ドイモイが始まった15年前の約3.8倍)で、うち約三分の一を北部山岳地帯が占める。
 トウモロコシは、北部山岳地域で秋作物(5〜9月)として栽培され雨季に収穫される。短期成熟の稲が普及した紅河デルタの水田では、稲の夏秋作と冬春作の間に冬作のトウモロコシが栽培される。メコンデルタでは12〜3月または4〜7月(6月中に未だ畑にたっているトウモロコシの上に稲を播種する)に栽培される


2.イモ類
 サツマイモは、2001年現在生産量は約165万トンで、うち30%が北中部沿岸地域、27%が紅河デルタによって占められ、北部(北中部沿岸地域までの地域)で78%を占める。ドイモイが始まった15年前の生産量は196万トンで、むしろ最近は生産が縮小傾向にある。サツマイモは主食であるコメが不足している地域にとって重要な栄養源であったが、ドイモイ以後のコメの不足状態が改善されるにしたがって生産が縮小してきた。
 キャッサバは、2001年現在生産量は約351万トンで、うち43%が東南部、20%が北部山岳地域によって占められる。最近特にホーチミン市周辺の東南部にて生産が急増している。


3.野菜・果樹
 野菜及び果樹は1990年代に急成長を遂げた。栽培面積では、野菜が年平均5%の伸び、果樹が6.5%の伸びである。この伸び率は他の食用作物の2.5%の約2倍の伸び率である。
 ベトナムの農家の8割以上が何らかの野菜か果樹を栽培していると言われ、また生産量の約3分の2が市場に流れる。これは、貧しい農家にとって野菜や果物が格好の現金収入源となっている事を示している。2001年現在、野菜の栽培面積は50万ha、生産量は660万t、果樹の栽培面積は57万ha、生産量は450万tである。また近年輸出も急増している。2001年の輸出総額は3億3000万米ドル(98年の6倍強)。輸出相手先の65%がアジアで、特に重要な輸出相手国は中国・韓国・台湾である。

 野菜の生産は現在のところ北部の方が優位であるが、中央高地のラムドン省が現在急速に産地として成長している。このラムドン省のダラットは標高1500mの高原で、平均気温19度のベトナムとしては比較的冷涼な気候に恵まれ野菜が周年栽培されている。野菜の集荷は地域によって異なる。北部のハノイ近郊では農家自身が、やや離れた産地で集荷業者がハノイの卸売市場に持ち込む。一方ダラット周辺では、産地近くの地方市場に野菜が集荷され、そこから産地の集荷業者がホーチミン市等の市場に運ぶ。価格決定の主導権は集荷業者にある。また近年、農民達が自らの価格の主導権を握ろうと野菜合作社を結成する動きが見られる。特にハノイ近郊では農薬投入量の少ない安全野菜の販売を行う野菜合作社が誕生してきている。
 果樹栽培の主産地はメコンデルタで99年の時点で栽培面積の38%を占める。しかし最近、北部山岳地域が急成長を遂げ、23%を占めるに至っている。これはハノイ向け及び中国への輸出向けの生産が原因である。果樹の中で特に伸び率が顕著なのは、ライチ類(ライチ・リュウガン・ランブータン)・柑橘類(マンダリン・キングオレンジ)である。反面、バナナは停滞しており、パイナップルは90年代には生産が縮小している。


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