(1)土地法改正と土地問題

1-1. 1993年土地法改正
1-2. 1998年土地法改正
1-3. 2001年・2003年土地法改正
1-4. 土地所有の不平等化
1-5. 収量の限界


1-1. 1993年土地法改正
 
93年に改正された土地法Luật đất đaiは、土地の所有権は国家に属するとの原則を維持しながら(注1) 、土地の使用権を交換・譲渡・賃貸・相続・抵当する権利を新たに与えた(第3条2項)。また農林水産用地の使用期間に関しては、一年生作物地および水産養殖は20年間・それ以外は50年間の長期使用を認め使用期間終了後も違法行為等がなければ継続使用を認める事とした(注2)。また土地面積に関しては、一年生作物地は3haまで、それ以外は政府規定によるものとした(第44条)。この93年土地法から土地権利証書の発行が始まり現在ではほぼすべての農家に交付されている。また93年土地法によってコメの生産はさらに飛躍的に増大した。


(注1) 第1条に原則論、第26〜27条には不正使用および有事の際には国家が土地を収用できる規定が存在
(注2) 第20条、ちなみに居住地は永年使用


1-2. 1998年土地法改正
 
さらに98年にも土地法が改正されたが、これは93年時のような全面改正ではなく、93年土地法の一部の条文を補足・修正したものである。93年土地法第22条にある農林水産業(養殖・製塩業も含む)目的の土地使用に関する土地使用料免除に関して、98年改正ではさらに明確に「農業、林業、水産養殖、製塩の直接労働に関わり、主たる生計がこれらの活動から得ている世帯または個人で、社xã/坊phường/市鎮thị trấnの人民委員会 がこれを確認したもの」という明確な免除規定を設けた。さらに98年改正の発効以前から制限面積枠を超えて農地を使用している場合には土地交付期間の2分の1の期間中は追加納税によって継続使用が許可され、継続使用期間終了後または98年改正発効以降の超過面積も「借地」という形で許可され、土地法第44条の制限面積以上の農業経営も事実上認められるようになった。さらに修正第78条第2c項で、土地使用権を他人の生産および経営のために出資することを認めた。このように98年改正は農業の市場経済化をより一層推進するため93年土地法以降に進んだ農地の規模拡大を追認した内容となっている。この改正以降、工芸作物の多くはさらに生産拡大をすることになった。


1-3. 2001年・2003年土地法改正
 土地法はその後2001年および2003年にも改正された。2001年改正では、第31条に新たに第3項が追加され、土地使用権の財産価値に基づいて政府はその賃貸・相続・抵当するための具体的手続きを規定しなければならない事を明記した。
 93年土地法改正以来の全面改正である新土地法が2003年11月26日に国会で可決され、2004年7月1日より施行される予定である。前述のように 93年土地法第44条では個人世帯の長期使用が認められる一年生作物以外の土地面積は政府規定によるものとされていたが、2003年土地法では多年性作物地はデルタ地域で10ha・山岳地域で30haまでと法律で明記された(第70条第2項)。また国が水田から非農地への転換を制限し、高収量・高品質な水田への財政援助や投資奨励策をとることを規定した(第74条第1項)。国が民間農場への奨励策をとることも規定された(第82条第1〜2項)。
 2003年の改正において最も注目すべき点は、第122〜131条にわたって個人が土地使用権を登記・交換・譲渡・賃貸・相続・抵当するための具体的手続きが詳細に定められたことである。おそらく1993年の土地法改正によって土地の事実上の私有が認められてから10年で土地をめぐる紛争が多発したのであろう。


1-4. 土地所有の不平等化
 図1は、ベトナムの代表的農業地帯である北部の紅河デルタと南部のメコンデルタにおける経営規模(農用地面積)別に見た農家世帯の分布である。紅河デルタは経営規模が小さいが比較的均等なのに比して、メコンデルタでは経営規規模の平均は大きいが土地所有の不平等化が進んでいる。これは独立前から大土地所有制が発展し農業集団化もほとんど行われていなかったという歴史的経緯とともに市場経済化がメコンデルタの方でより進んだためと考えられる。


(図1)紅河・メコン両デルタにおける経営規模別に見た農家世帯の分布(単位%)

出典; Tổng Cục Thống Kê,2003), Kết Quả Tổng Điều Tra  Nông thôn, Nông nghiệp & Thủy sản 2001, Nhà Xuất Bản Thống Kê


1-5. 収量の限界
 図2は、ベトナムの代表的農業地帯である北部の紅河デルタと南部のメコンデルタにおける米の収量の最近20年間の変化である。紅河デルタの収量が圧倒しているが、これは限られた農地に労働力及び肥料を大量投入して達成したものである。狭い農地が多くの人間に平等に細分化されている現状では機械化が進むことは不可能で、これ以上の収量増加は望めない。反面、輸出米の生産基地であるメコンデルタでは収量は停滞している。


(図2)紅河・メコン両デルタにおける最近20年間のコメ収量の変化(単位;t/ha)

出典; Tổng Cục Thống Kê, Vụ Nông - Lâm nghiệp - Thủy sản2000), Số Liệu Thống Kê Nông - Lâm nghiệp - Thủy sản Việt Nam (1975-2000), Nhà Xuất Bản Thống Kê

Tổng Cục Thống Kê (2001), Niên Giám Thống Kê 2000, Nhà Xuất Bản Thống Kê


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