【ステージセット】
- ステージを狭く使っている。
高い壁に囲まれた20畳くらいの空間。
台形の壁。奥に背の高いドア。終盤、奥の壁が開き、王宮内(と言ってもたいまつだけ)が見える。
パンフレットによると、床が傾斜しているらしい。
ゴムシートの端がめくれたみたいになっている。
鈍い鉄色の壁も、あちこちが ささくれ立っている。
床から70cmくらいのところまで20cmくらい出っ張っている。(大竹さんがおびえたとき、よく
そこに小鳥のように腰掛けていた)
- 登場はいつも客席から。
真ん中の通路前後、前半分の中央通路脇の人はオイシイ。
【衣装】
- アブストラクトで、でも素材はしっかりしていて、出演者の体型を際立たせていた。
真紅やグレーなど、クラシックな印象の色。
- オレステス(オカっち)
素足!
革のような(でも本当に革だったら重過ぎるだろうから、たぶん違う材質)1メートルくらいの大きな帽子(顔に影を落として素敵なのだ。大きな帽子を支える華奢な白い腕も素敵)
ズボンの上にゴツいスカート、腰には幅広の短剣。
黒のぴったりしたノースリーブTの上にも、ゴツい生地のコートのようなものを着ている(後半、エレクトラとの再会後は脱ぐ)。
左手の中指に銀の指輪(父王の形見)
- エレクトラ(大竹しのぶさん)
素足。
薄いグレーのスリップ型ワンピース。
わざとギザギザに髪をカットしているように見えた。
- クリュタイムネストラ(波乃久里子さん)
情欲を象徴するかのような真っ赤なワンピース。 靴は厚底靴。
やはりゴツい生地のコートを着ていたと思う。
- クリュソテミス(山口紗弥加さん)
いかにもお姫様という感じのえんじのドレス。 ハイヒール。 髪も綺麗に編み込みにしていたと思う。
【ストーリーに沿って】
- オレステスたち(オレステス、養父、友人)
会場内が暗転すると、客席から登場。
相手を油断させるため、オレステスが死んだと伝えて来い。
オレステスはアポロンに祈る
(クリュタイムネストラはゼウス、エレクトラは復讐の女神ネメシス…だったかな?)
(登場直後、養父が語っている間、ステージいっぱいに のたうちまわる オカっちが、前衛舞踏を見るようで うっとり)
オレステス「エレクトラの声が聞こえた気がする。早く行ってやらなければ」
養父「何事もアポロンの告げたとおりに。まず父上の墓参りを」
- エレクトラの嘆き
エレクトラがコロスと登場。
母と愛人が父を殺して、愛人が王の座についている。 自分は屋敷の外に幽閉されて、頼りにしている弟は
いっこうに来る気配がないと嘆く。
- 墓参りに行く妹と口論
母と愛人を受け入れて、屋敷内に住んでいる妹は、えんじのドレスを着て綺麗にしている(でも、結婚は禁じられているらしい)。
不吉な夢を見たクリュタイムネストラが、父の墓参りをクリュソテミスに言いつけた。
母の不幸を知って、嬉しそうなエレクトラ。
供え物なんかより、わたしたちの髪を供えて、復讐を誓いなさい、と2人の髪を引きちぎる。
- 母と口論
長女を生贄にした理由とは?
クリュタイムネストラがアガメムノンを殺したのは、友人(?)のために長女を生贄にしたからだと言う。
どうせ男にとっては子供なんて種を蒔いただけ、腹を痛めて生んだ母親の苦労なんて判っちゃいない。
エレクトラによると、長女の生贄はアルテミスの嫉妬で足止めされたギリシア軍のため
(波乃久里子さんが、ふてぶてしくて堂々としていて、凄い。 大竹しのぶさんとの口論は迫力)
- 使者(養父)がオレステスの死を伝える(エレクトラ、母)
「母親の愛情を知らない可哀相な子のまま死んでしまった」と、いったんは嘆くものの、これで安心して眠れると喜ぶ母親
弟の死も、母の態度も、信じられない、という表情のエレクトラ。言葉もない。
- 墓から戻った妹
息を切らせて戻って来たクリュソテミス。
アガメムノンの墓に、供え物があり、向うに人影が見えた。
オレステスが帰って来たのよ!
何をバカなことを言っているの、オレステスの死のニュースを運んできた使者たちが、いま、屋敷内でもてなされているわ、とエレクトラ。
エレクトラ、妹に復讐を持ちかける
断る妹。
- オレステスが正体を隠してやってくる
(遺灰の壺を持って)
エレクトラの哀れな身の上を嘆く
時代だからか、元は王家の出身だからか、結婚せずに子供を産まないことが大変な不幸なことのように語られる。
エレクトラも妹も、アガネムノンの直系の子供が生まれないように、結婚を禁じられている身の上なので、確かに不幸なのだが。特にエレクトラは
いつもは、屋敷の外に鎖で繋がれているらしい
- 遺骨の壺をひっくり返して半狂乱のエレクトラ
弟の死に立ち会うこともできず、遺骨を弔うこともできないなんて!
見かねてオレステスが正体を打ち明ける
感動の再会
- 母の愛人王が戻って来る
毛皮のコートを身にまとって。
単なる使者の振りをするオレステス。
扉の奥(屋敷の中)に愛人王が消えると、オレステスが屋敷に入っていく。 愛人王の絶叫が聞こえる。
- エンディングの記憶がない
母と愛人王のどちらに対する復讐が先立ったか?
壁の向こうで仇討ちが完遂して、遺体を載せたベッドがドアから出て来て終わりだったと思うのだが、そのとき、エレクトラとオレステスは出て来たかしら?出ていたとしたら
どんな表情だったかしら?あまり喜んでいた記憶がないので、復讐を終えて虚脱状態だった?
母殺しの後、血まみれの上半身だったオカっちが、ラストでは再び黒のタンクトップを着ていたのは覚えているのだが。
【感想】
- 作品自体のパワーと、それに負けない出演者の存在感に圧倒される
役者さんの顔や身体から、いろいろ水分が飛ぶ熱演。
- ときどき音楽
あまりよく覚えていない。 前衛ジャズのようだったり、打楽器だけだったりだったような記憶がある。
- オカっちの身体
クライミングのお蔭?腕の筋肉がスラリとしたまま綺麗に付いている。
大竹さんより10cm背が高いくらいかな?手脚がすらりと長いのが若々しい。
弟役のために大き過ぎず、敵討ちのために小さ過ぎず、ちょうど良い大きさ。
大竹さんとの再会シーンでは、熱く抱き合って腰を撫でたり、馬乗りになって胸に顔を押し当てて泣きじゃくったりするが、それほど身体の大きさに差がないせいか、"男女の絡み"
みたいな印象が皆無。
それでいて、異国で勇者として名を馳せ、父の復讐を遂げるだけの力を持っていると信じられる程度には、立派な体格。
声もよく通っていた。
- 山口紗弥加ちゃんの化けっぷり。
「二万七千光年の旅」やTVドラマ「月下の棋士」「マシーン日記」では、ひたむきだったり、すっとんきょうだったり、可愛らしいイメージがあったが、今回は、王家の娘らしい堂々とした立ち居振る舞いで、まるで別人のようだった。
- 波乃久里子さんの貫祿
長女を生贄にされ、長男と生き別れになった悲しみを抱いたまま、自分の思い通りに生きている、複雑なふてぶてしさに圧倒されていた。
オレステスの死(実は嘘)を告げられたとき、最初は「母の腕に抱かれることもなく、死んでしまった可哀相な子」と、自分の胸を揉みしだきながら慟哭するが、すぐケロリとして「いつ、あの子が私を殺しに来るかと不安で夜もゆっくり眠れなかったよ。これで安心」と使者をもてなす態度の変わりようが凄かった。
- 大竹さんは、小鳥のように可愛い。
声色や声の調子が微妙に変化、使い分けが上手。
特に小柄という訳でもないのに、身のこなしが本当に可愛らしくて(少女のようで)、「自分が男なら、こういう女性を一生かけて守りたい、って思うんだろうなあ」なんて思わせる。 "魔性の女" 的イメージもなるほど。
- カーテンコールのとき、主演のしのぶさんを立てつつ、二人で和やかにしていた。
特に手を振ったり、笑顔を振りまいたりする訳ではない。 オカっちが主役のコンサートのときのファンサービス振りとは、物腰がぜんぜん違った。 この謙虚さがV6。
- エレクトラ・コンプレックスというと、女の子の父親に対する愛情を指すはずだが、オレステスの死(狂言だが)を知ったエレクトラの悲しみを見ると、男女の兄弟の近親相姦的感情のことではないかと勘違いしそうになる。
【パンフレット】
- 舞台衣装や、舞台衣装と似た雰囲気の衣装を着た出演者の大きな写真、お芝居の背景、監督と白石加代子さんの対談など、まんべんなく載っている。
見応えも読み応えもあり(ギリシア悲劇は、ほとんど知らないので興味深い)
- オカっちのアップ … 唇に力を入れて出来たアヒル口(笑)。
- 「岡田の初舞台」と言われているのを聞いて、「『MASK』は封印されたのかしら?(大阪まで観に行ったのに)」と悲しい気持ちでギモンに思っていたが、「ジャニーズ外部の舞台出演が初めて」という意味らしい。
- いきなり花園神社で野外稽古! 通りかかった人は、さぞ驚いただろう。
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