転校してすぐ、FWのレギュラー争いに巻き込まれていたりする今日このごろ。
 
いやっ、実力は充分、勝ってるんだけど、なんか、キャプテンから認めてもらえない。
 
なんでなんだろうね?
 
「こらーバカ監督!シンジを試合に出せ〜!」
 
「バカ監督?彼はバカなのね。だから、碇君を試合に出さないのね。」
 
「監督!ここは絶対、シンジ君を投入すべきです!もう、交替用紙も用意しました!」
 
そんなことを、すき放題、言いまくってる美女軍団…
 
いくら鈍い僕でもやっと分かってきたよ。
 
 
嫉妬のせいだね♪
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
         僕らの誓い    3話
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「はぁ〜アスカたちもいい加減にしてよ。」
 
シンジが言い出したのは、練習試合が終わり、みんなでご飯を食べている途中の事だ。
 
「なんでよ!間違ってることを間違ってるていって何が問題あるっていうのよ!」
 
「それだけは。赤毛ざるの言うとおりだわ。」
 
アスカに同意する途中でしっかり毒を吐くのを忘れないレイ…さすが、ファンクラブ会長…
 
「センセはそういう事、言ってるんちゃうで!お前たちがセンセを応援すると、つまらん嫉妬をするアホが出てきて
、キャプテンに認めてもらえないんや!」
 
「確かにその通りだね。シンジはダントツにうまいけど、チームの中じゃ、新参者なんだ。
 
シンジがレギュラーになるまで、惣流も綾波も静かにしててくれないかな?頼むよ」
 
その言葉を聞き、なにやら不満げなアスカとレイ…
 
「なんでよ!そんなくだらない上級生たちなら、あと一ヶ月で3年は引退なんだし、無理して、
 
シンジがレギュラーになる必要なんて、ないじゃない!困るのは向こうなんだし、
 
ほっとけばいいのよ!」
 
その言葉を聞き、今まで静かにしていた、カヲルが口を開いた。
 
「そういうわけにはいかないよ。僕らが国立の芝を踏むためには、シンジ君の力が必要なんだ。
 
今のチームじゃ、得点力不足で県大会を勝ち上がることさえ、不可能だよ」
 
「来年までま待つわけにはいかないの?」
 
「そーいうわけにはイカン!勝負事には絶対なんかないんや!チャンスは一回でも多いほうがええにきまっとる!頼む。このとうりや!静かにしててくれ」
 
トウジは土下座をして、二人に頼み込んだ。
 
実際問題、県大会までもう一ヶ月もないのだ。
 
「アスカ、レイ…お願い。」
 
「わ、分かったわよ。だから、シンジもそんな目で見ないでよ。」
 
「分かったわ。」
 
「ありがとう」
 
シンジは満面の笑顔で二人に感謝を述べた。
 
「「はうっ」」
 
破壊力抜群な笑顔の前にKO寸前な二人。
 
「シンジ君の笑顔はとても、素敵だよ。じゅる。めくるめくアブノーマルな世界にご紹介ってことさ」
 
いやっ、もう一人いた。ちょっと系統は違うけど…
 
「カヲル…何をいうとるんや…」
 
「トウジ…いつものことだろ」
 
そういいながらも、引き気味のケンスケ…
 
「さあ、練習あるのみだよ」
 
どこかスポコンが入りだすシンジ…
 
そうして、朗らかな陽気の元で開かれた昼食会は過ぎていった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
午後から始まった、3年生中心のレギュラーを揃えるAチームと、レギュラー以外の1,2年の
 
控え組Bチームの紅白戦。
 
ケンスケ、トウジ、カヲルはレギュラーチーム。シンジだけはやっぱり、控えチームである。
 
「あのバカキャプテンはぁ〜!」
 
怒り絶頂のアスカ…しかし、シンジとの約束があるため、大声では叫ばない。
 
「ピィ〜」
 
試合が始まった。
 
序盤は自力に勝るAチームが優勢に立つ。カヲルとケンスケが中盤でしっかりとボールを保ち、試合を支配する。
 
しかし、なかなか得点は決まらない。
 
いいパスは行ってるのだが、FWにいるのは、ただ最上学年というだけの、スキルも全くないプレーヤー。
 
決まるものも決まらない。
 
そんなことをしているうちに流れが変わり始めたのが、前半中盤…
 
それまで、パスがなかなか繋がらず、前線にボールを運べていなかったBチームだが、
 
シンジが中盤に下がってきて、ポストプレーヤーに徹することで、パスが繋がり始めたのだ。
 
そして、得点が生まれた。
 
中盤からの大きなパス…それまで、中盤に下がっていたシンジが一気にDFの裏を抜ける。
 
トウジとの1対1…シンジは冷静にキックフェイントでトウジをかわし、ゴールへとボールを
 
叩き込んだ。
 
一気に盛り上がるBチーム…終了寸前にも、シンジからのラストパスを受けた、
 
シンジと同じ学年の1年生FWムサシによって、追加点が生まれる。
 
「ピィ〜」
 
ここで、前半終了…予想だにしない展開に、
 
笑みが止まらないBチームを尻目に、浮き足出すAチーム。
 
くっきりと明暗を残す結果になった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「なんで、こんなことになるんだよ!!!!」
 
苛立ちを隠しきれずに、叫ぶキャプテンこと、田中…
 
「てめ〜ら、しっかり決めろよ!あんだけ、ケンスケとカヲルから決定的なパスが出てるだろうが!」
 
「そんなこと言われても、あいつら、結構組織ができてるんだよ…」
 
苦渋に満ちた表情になるレギュラーFW。
 
「ああんっ?!てめえらより強いDFと戦って碇はしっかりと得点とアシストあげてるじゃねえか?」
 
「それは…パスと運がよかっただけだろ。」
 
これだけ決定的な差を見せられても、まだ認めない様子に、次第に心が離れだすレギュラーたち。
 
「まあ、いい!後半に結果出せなかったら、レギュラー交替だからな!それだけは憶えておけ!」
 
そう言い残すと、田中はどこかへと歩いていった。
 
「でも、まずいね〜シンジ君はさすがに止められないよ」
 
「だね。シンジのやつ、元々、ずばぬけてうまかったけど、ここまでなってるなんて、知らなかったぜ」
 
終了直前のやられた、ごぼう抜きからのラストパスには県選抜に選ばれているカヲルとケンスケを驚かせた。
 
「そやな。あっこまでフリーにさせられたら、いくらワイでも、止めようがないわ。」
 
両手を広げ、お手上げのポーズをとるトウジ。…こちらも県選抜のGK。
 
「何か手を考えないと…」
 
 
 
 
 
 
 
 
「いや〜碇、お前は本当にうまいぜ」
 
ラストパスを貰い、追加点をあげたムサシがシンジに言った。
 
「うんうん。一人だけずばぬけているよ。」
 
センターバックのケイタもそれに賛同する。
 
「いやっ、そんな事はないよ。みんなが動いてくれるおかげさ」
 
シンジは心からそんなことを言う。
 
その様子に、こいつ、将来騙されそうだな…としみじみ思うチームメイト達。
 
実際、彼らはシンジに醜い嫉妬なんかしておらず、なぜ?こいつが控え組?という気持ちなのである。
 
 
 
「おいっ!後半始めるぞ!」
 
その時、キャプテン田中からの号令がかかる。
 
「さあ、気締めていこうぜ!」
 
「勝つぞ!おおぉぉ」
 
気合満点のBチーム。
 
「お前ら、このままでは終われねえぞ!死ぬ気でプレーしろ!いいな!?」
 
「おぉぉおぉぉ!」
 
負けられないAチーム…
 
「ピィ〜」
 
 
 
 
意地の後半が始まった。
 
前半の立ち上がりと、同じく序盤の主導権はAチームが握る。
 
カヲルの中央からの切り裂くようなスルーパスに、ケンスケのサイドからのピンポイントのクロスが冴えまくる。
 
しかし、一向に試合は動かない。
 
そんな時、ハーフライン中央で、シンジにボールが渡った。
 
味方は、まだ自陣深くから帰ってきていない。目の前には4人の敵DF達…
 
シンジは走り出した。ゴールをきめるために…
 
軽くフェイントを入れ、最低限の動きで抜いていく。
 
そうしなければ、一度抜いたDFに追いつかれてしまうからだ…
 
圧倒的なスピード…ずばぬけたテクニック…
 
センターバックの田中は、日本代表と戦っている錯覚さえ覚えた。
 
背は165くらいしかない…だからこそかもしれないが、スピードと合わさって、
 
気をぬいたら、見失ってしまう。一瞬たりとも気を抜けない。
 
少しでもボールコントロールを乱したら、ファウル覚悟で突っ込む気だった。
 
しかし、気がつけば残された壁は自分ひとり…
 
重心を最大限に下げる。ファウルさえできればいいという体勢…ボールをとれるなんて、
 
この時点で諦めていた。
 
細かなフェイントを入れながらせまってくる。でも、スピードは一切落ちていない。
 
シンジは右で軽くフェイントをいれた…反射的に少しだけ反応してしまう身体…
 
重心をかけすぎたため、左に少しだけ流れた…
 
シンジはそれを狙っていたかのように、足がかけれない位置へボールをだした。
 
慌てて体勢を立て直し、ユニホームをつかもうとする。
 
しかし、シンジは一歩先をいっていた。
 
空中をつかむ自分の手…あると思っていたユニホームはずっと先にあった。
 
一気にひろがっていく距離…もう、追いつけなかった。
 
意を決して、飛び出すトウジ…出て行く途中でシンジと目があった。
 
微笑んでいた…やばい!瞬間的に思った。
 
だが、時、既におそし…ボールは自分の上を通り過ぎた後だった。
 
正確にコントロールされたボールはゴールへと吸い込まれた。
 
時が止まった。ピッチの上にたつものも、ピッチ外にいるものも、そこにいるカリスマに心奪われた。
 
静寂は、時を経て、大きな歓声へと変わり、グラウンドを飲み込む。
 
試合は結局、その後も1点を加えたBチームが4−0で制し、
 
シンジとムサシは晴れて、レギュラーを掴んだ。
 
大敗により、改革を迫られたキャプテン田中は右サイドバックに1対1に強いケイタを置くことをきめた。
 
県大会…一ヶ月前、やっとベストメンバーが揃い、
 
国立を目指す戦いが始まる。
 
 
 
その頃応援していたはずの、赤毛ざると、青髪ガールは、
 
シンジのあまりのかっこよさにグラウンド脇に失神していた。
 
壁が消え、無法状態となったシンジの周りでは、少女たちが集まり、
 
酒池肉林の世界が繰り広げられたことは、想像に難くない…




hot-snowさんに頂きました。


読みながら、北の国からのテーマが流れたのはどうしてかしら。
それはそうと、点が取れる突撃隊長ってやっぱりイイよね。

<日本って個人技のランクならランキングの底辺だよなあといつも試合の度に思う>URIELより。




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