SUMMER WALTZ 

 6th story The second part: Rei2_B

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どういうこと?」

 

 奇妙な空気にヒカリが聞いた。

 

「えっと、どういうこと?」

 

 答えられないアスカはシンジに振った。

 

「うーん、どういうこと?」

 

 問われたシンジは、驚いたことに張本人達に返した。

 もっとも効率の良い対処法であるが、普通はできない。

 ある意味、すごい。

 アスカは呆れと感嘆半ばにシンジを見つめる。

 

「少し前に…会った」

 

「色々とな?」

 

 そんな曖昧な表現を返されても、困るしかない。

 想像力豊かな才媛達は様々なことに思いを巡らし、わけのわからない人はわけのわからないまま。

 けれど、碇シンジはすごかった。

 

「そっか、知り合いだったんだ、二人とも」

 

 まるで、全ての疑問が解けたかのように、笑顔で二人に語りかけるシンジ。

 あまつさえ、改めて二人に自己紹介をさせ、話題を提供していく。

 

「綾波は僕と同じピアニストの卵。同じと言っても、実力は僕とは雲泥の差だけどね」

「鈴原君もヨーロッパに居たんだよね?」

 

 シンジという緩衝材を通して、二人の会話は進んでいく。

 三人の女性が見守る中、どういう経緯かトウジがレイの手を引いて、店にいくつかあるキーボードの一つに座らされた。

 何事かトウジに話し掛けられ、少し困った顔でシンジを見つめる。

 フロアに取り残されたシンジは―――笑顔で頷いた。

 

 レイがおずおずと鍵盤を叩きはじめた。

 

 ♪♪♪♪...♪♪♪♪...♪♪♪♪♪♪...

 

 モーツァルトのトルコ行進曲。

 いかにも、楽譜通りのその音に眉をしかめたトウジは、手の止まっていたDJの方を見て、合図をする。

 頷いたDJはミキサーに手を伸ばし、テクノ調の音を重ねる。

 初めてのセッションに戸惑うレイに悪戯っぽくウィンクすると、次は照明に指示を出した。

 光が飛び交うとともに、徐々にレイの音もアップテンポになり、もうそれはクラシックとは言えない現代のサウンドになった。

 

 トウジは絶妙のタイミングでDJに合図を出し、照明を変えさせ、最後にはダンサーをステージに上げた。

 つい最近『音の楽しさ』を知ったばかりのレイはそれが楽しくて、合わせて弾きながらいつもは見せない華やいだ表情をしていた。

 少し離れたところから、笑顔で彼女の演奏を見守っているシンジのことはもう、忘れている。

 切っ掛けは、いつも、彼がくれるということすら今の彼女の頭にはない。

 

 蚊帳の外にされた格好の三人は、カウンターから二人と一人の様子を見ていた。

 

「ヒカリ…いいの?」

 

 カウンター越しの厨房で皿を磨きながら、ちらちらと様子を伺っているヒカリに訊いた。

 

「わ、わたしは別に!!?」

 

 いつものアスカなら、ヒカリを元気づけるくらいしただろう。

 しかし、アスカの意識はレイを見つめながら、笑顔を貼り付けて戻ってくるシンジの方に向いていた。

 

「なら…いいけど」

 

 そんなアスカとヒカリを見ながら、リツコはため息を吐く。

 恋愛はロジックではない。

 一夜限りの恋でも、道ならぬ恋でも、関係ない。

 アスカもヒカリも誰かを気遣い、感情を露にしないのが気に入らなかった。

 

<『いいこ』過ぎるのよ…>

 

 だから、煽ってみた。

 仕事は倫理を忘れずにロジカルに、プライベートは常識を忘れてマッドに。

 それが、彼女のモットーだった。

 もっとも本人は自覚はしていないが

 

「まさか、一度逢ってたなんてね。

『ああ、アナタはあの時の』

『あ、キミはあそこで逢った』

こういうの、運命っていうのかしらね?」

 

話を振られて、困ったように笑うシンジ。

リツコはシンジとレイのことをよく知らない。

リツコを『わかっている』自分達を煽るだけならばまだいい。

だが、シンジはそうではない。

普段温厚なシンジでも、そこまで言われれば、怒るまではなくとも、不機嫌にはなるだろう。

止めよう、と思ったアスカの目にシンジの横顔が目に入る。

『先生』の顔をしていた。

 

気にいらない。

 

この前のことは覚えてないのだろうか?

これは、このままリツコに渇を入れさせておこう。

その前に、もう一人の当事者は除いておかなくてはならない。

ヒカリはシンジほど強くないから―――違う、傷つくことに慣れていないだろうから。

 

「ヒカリ、アタシお腹空いちゃった♪」

 

「あ、うん…焼きそばでいい?」

 

「ありがと!ヒカリの手料理久しぶり〜♪」

 

手のひらをひらひらさせながらヒカリを送り出した後、振り返ってギョッとした。

シンジの肩に体を預けたリツコがそこに居た。

アスカは自分達を煽ってくれているとのばかり思っていたのだが、それだけではなかった。

彼女も人肌が恋しいお年頃。

 

「リツコ…」

 

「何か、あの二人いい感じよね。お嬢さんと不良っていうのかしら?

フフフ…」

 

シンジの胸元に頬擦りまでしだした。

幾らなんでもやり過ぎだ。

シンジは、困ったように笑うだけ。

ちょっと染まった頬がアスカをムカつかせてくれる。

 

<人がこんなに心配してんのに、コイツはっ>

 

「ちょっと…リツコってば」

 

「中々見事なキューピッド振りでしたわよ?

いいえ、どちらかというとピエロかしら?

ちょっとつまらないわね、折角修羅場が見られると思ったのに。

シンジさんも損な役周りね…私と同じ」

 

シンジを見上げる彼女の瞳は、『私達は私達で寂しいもの同士…』と訴え始める。

すかさず、シンジの胸の中に滑り込もうとするリツコの襟元をアスカが掴む。

 

「リツコ…地雷踏んでる地雷」

 

「今日は持ってきてないわよ?」

 

子猫のように、襟を掴まれたまま、キョトンとした顔で言い返すリツコ。

 

「…今のは冗談、よね?」

 

 それにしては即答だった。

 

「え?ええ、面白かった?…アスカ、いくら自分がシングルだからって人の恋路まで邪魔しちゃだめよ」

 

「ホントに冗談なんでしょうね…じゃなくて」

 

 アスカはステージの上に居るレイを指差し、次にシンジを指差した。

 シンジは、まだ困ったように笑っている。

 

「あら?シンジさん、元気ないわね。いいお薬あるんだけど、どう?」

 

 ヒカリとか、自分達の気持ちや状況はすぐにわかるくせに、シンジとレイの関係は全然察っせないリツコにアスカは盛大なため息を吐いた。

 でも、無理もないのかも知れない。

 コイツの考えはわかりにく過ぎる。

 

<でも…あんな風に言われて平気、なわけないわよねぇ…>

 

 アスカに捕まれたまま、それでもにじり寄って来るリツコの相手をしながら、時折レイ達の方を見るシンジの横顔は―――落ち着いていた。

 憂いを感じさせる影を確かに漂わせてはいるものの、どこか満足げだった。

 

<まぁた、『先生』なワケ?>

 

 自分の言ったことを無理強いする気はない。

 けれど、ここでのそれは明らかに逃げだと思う。

 もし、そんな根性でいるのなら、鳩尾に肘鉄の喝でも入れてやる。

 『ポイッ』っとリツコを投げ捨てると、アスカは据わりまくった目でシンジを見た。

 

「おい、そこのピアニスト未満」

 

「え?」

 

「いいのか?」

 

「何が?」

 

 アスカに睨まれても、キョトンとしている。

 

「何って…」

 

 もう一度、ステージを指差すアスカ。

 

「あぁ、なんだ、そういうこと?

うーん…いいんじゃない?」

 

 ものすごく簡単に答えを返すシンジに、ついアスカも語彙を荒げてしまう。

 

「ホントに?ホントにいいの!?」

 

「アスカの言いたいことはわかってる、わかってるつもりだよ?

でも、今は…いや、今だからいいんだ」

 

「今だからダメなんでしょうが!!」

 

 本気で怒ってくれるアスカを見て、シンジはまた笑う。

 務めて軽く、『何でもないよ』と言い聞かせる笑顔で。

 

「ありがと、アスカ…でも、本当に、今は、これがいいんだと思う」

 

「ナーニがいいのよ!?」

 

「色々考えたんだ、できること、したいこと、かっこいいこと、よろこばれること、なにをすれば僕は納得できるのかって。

でさ、決まったんだ、一応」

 

「また、そうやって…」

 

 一人で考え込んで答えを出す。

 それは、確かに価値のあることなのかもしれないが、こと恋愛に関してはうまくない。

 『とりあえずさらっちゃえ』

 考えるより即行動、押しの一手が一番打率が高いのだ。

 二人きりの時間、雰囲気に流されてのキス、酔った勢いのセックス等々の証拠として残るものの方が、

 言葉での触れ合いなどよりも男女の関係を進ませる―――特にこの国では。

 はてさて、碇シンジといえば―――

 

「うまく…言えないけど、今、僕、『先生』はやってないんだ。

たぶん、もう、必要ないし」

 

 ウダウダ考えた挙句に、ウダウダと理屈を並べるシマツ。

 一生かかっても、さらえない人種なのである。

 それを、情けない、とアスカは断じてしまえなかった。

 いつかのように、シンジの声に入り込めないようなシビアな響きが含まれ始めていたから。

 逃げてるワケではないらしい。

 でも、何か間違ってるのだ。

 

「じゃあ、なんのつもりなのよ」

 

「『自分の気持ちに嘘を吐かず、立派で正しいこと』をするための下準備、かな?」

 

「なによ、それ…」

 

「『お兄さん』…いや、『お父さん』のつもりじゃないかなぁ?」

 

「ハァ?」

 

 曖昧なのかそうでもないのかわからない返事をするシンジにアスカが問いただしても、それ以上は語らなかった。

 

 レイは音の楽しさを知った。

 今、ステージの上で彼女の奏でている音はそれまでの硬質な美しさだけでなく、そこに温度が込められている。

 無機的な宝石のような美しさではなく、極上の彫像や絵画のような創り手の熱を感じさせる優美さ。

 奏でる音がポップスであろうとテクノであろうと、それは、単純な造形の美を超えて、芸術と呼べる領域に入り始めている。

 元々技術の有る彼女がそれを理解し始めたのだ、後は真綿が水を吸い込むようなものだろう。

 後は彼女が自分の音を見つけるだけ。

 もう、先生は必要ないのだ。

 

 だが、まだ、彼女には欠けている部分がある。

 それはピアニストとして、だけではなく人間として重要な何か。

 今はまだいい。

 有る部分が幼すぎる彼女にとって、シンジを介して見る世界は、全てが新鮮でその喜びや驚きはピアノにすら表れる。

 だが、その先は?

 子供にとって初めて接する異性が父親である。

 碇ゲンドウは綾波レイにとって信仰の対象とも言うべき存在であり、異性にはなりえなかった。

 ならば、綾波レイにとっての自分はそれになるべきなのだろう。

 無償で愛を与え、知識と知恵を教え、やがて反抗され、巣立っていく子供を見送る存在である父親に。

 もちろん、何も知らない彼女の思慕の情をそのまま恋愛へとすり替えることもできる。

 狭い世界の中で、温かい安定と安心で彼女を縛りつけることは、そういう関係になるには最も近道なのかも知れない。

 けれど、そこは、単色の世界。

 それでは、余りに不健康すぎるし、何より卑怯だ、とシンジは思ってしまった。

 それが、もしかしたらレイ自身にとって、いちばん幸せなのかも知れないのに。 

 

 だから、レイに想いを打ち明けるようになれるには、もう少し先。

 色んな人の想いに触れ、心が育ち、自分の元から立ち去ってから。

 

<初恋を…したくらいに、かな?>

 

 たぶん、それは、そんなに先のことではないのだろう。

 ステージの上に居る二人を見てれば、そう確信できる。

 

「アンタ…酔ってるでしょ」

 

「そんなに飲んでないけど?」

 

 テーブルの上で頬杖をつき、けぶるような視線でステージに目をやるシンジにアスカが素っ気ない口調で言った。

 

 

「自分に、よ」

 

「…やっぱり、そう思う?」

 

「思うわよ、バカ。

アンタが何をしようとしてるかなんてわかんないけど、誰も気にしてないようなことを勝手に思い悩んで、

自分の得にならないことを言い訳にしつつ、一人で結論出してるくらいは想像つくもの」

 

 厳しい言葉とは裏腹に、その口調はどこか優しかった。

 それを受け取ったシンジはステージに固定されていた視線を外し、下を向いて表情を隠す。

 シンジは今、このタイミングで、そう言ってくれる人を待っていたような気がした。

 そして、それは、やっぱりアスカだった。

 

「やっぱ、アスカだよね」

 

「なにが?」

 

「いや…ありがとう」

 

 そんなことを言うシンジに、全く手に負えないといった感じでそっぽを向くアスカは一つ確信する。

 なよっとした外見、柔和な性格、ピアニスト志望という職業を持ったこの男が『モテない』と言った時は、いまいち信用出来なかったが、

 コイツは絶対にモテない。

 『イイヒト』過ぎる。

 しかも『イイヒトなんだけど…』といったレベルではなく『イイヒトよね!』と絶賛されながら恋愛対象から外れる究極のタイプ。

 不安定な恋人という位置よりも、異性の友人という安定したポジションに置いておきたいと思われてしまうに違いない。

 アスカとしてはそんなシンジを結構気に入ってしまっているため、これ以上焚きつけることができない。

 それでも、この一生幸せになれなそうにないこの男に一言、言っておくことがあった。

 

「ホントに…バカね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シンジが下を俯きながら店内に流れる音に耳を傾け、アスカが黙ってステージを睨みつづけた数分間の後、どこに行っていたのかリツコが戻ってくる。

 二割増の化粧の濃さとやる気でシンジにからんでくるリツコを流石に見かねて、アスカはシンジとレイの関係を大分端折って説明した。

 始めはショックを受けていたリツコもアスカ以上の恋愛下手な彼を知るにつけ、流石に呆れたようだった。

 

「で、あんたはやっぱり行かないワケ?」

 

「こういうところで弾くのは苦手なんだよ」

 

 アスカがシンジに顔を寄せながら言っているのを冷ややかに見つめるリツコ。

 先程、アスカに吐露した理由とはまた別の『シンジなりの理由』を聞き、その不甲斐なさを再確認、今度はシンジを煽ってみたくなった。

 保護欲、に似ているのかもしれない。

 

「手、早いわよ?」

 

「えっ…・?」

 

 含みを持たせまくった口調に、シンジは思わず反応しリツコの方を向いた。

 その素直過ぎるリアクションに満足し、トウジを指差した。

 

 アスカは不可解な思考をしているくせに、こんなときは素直に反応するシンジに呆れ、かつ同情し、ため息をついた。

 

 リツコが続ける。

 

「そして、一途。なにせ、小学校の時に女の子を妊娠させて、駆け落ちをした過去があるんですもの」

 

 どこかに携帯をかけつつ、の片手間で、さらりととんでもない爆弾を落した。

 即座にアスカはフォローを入れる。

 

「妊娠はさせてないでしょ?」

 

「…駆け落ちはしたんですね?」

 

 フォローになってないみたい。

 シンジの問いに返事をしないアスカに、シンジは『強敵だな…』とか呟き、気持ちを引き締めている。 

 アスカとリツコに言わせれば、シンジのような男は敵にもならないだろう。

 だが、 『父親の役割』とか言ってるくせに、シンジは本気で焦っていた。

 それだけ、真剣なのだ。

 傍から見れば滑稽なほどに。

 

 ワァァァァァァッ!!!

 

 客達の喝采を浴びながら、ピアノを弾き終わったトウジとレイが席に戻ってきた。

 再会した時の険悪さはもう微塵もなく、仲良さげに戻ってきたふたりにリツコが拍手を贈る。

 

「かっこよかったわよ、二人とも」

 

 どんなコンクールでも受けたことのない種類の賞賛を受けたレイは、照れて俯きながらもどこか嬉しそうだった。

 シンジもリツコに合わせて拍手をしたが、その心中は複雑だった。

 

「すごい、綾波さん、うまいのね」

 

 アスカもレイを褒め、その後、トウジに文句の一つも言ってやろうと思ったが、すぐにどこかに行ってしまった。

 去っていく、トウジの背中をレイは一瞬、目で追ったが、すぐになにもなかったような顔を取り戻した。

 アスカも、リツコもそんなレイの様子に気が付かなかったが、シンジだけは彼女の横顔に寂しさを見つけていた。

 

 トウジはすぐに戻ってくると、汗をかいていたレイの前に、ミネラルウォーターの入ったグラスをさり気なく置く。

 

「お疲れ」

 

「特技、サッカーって本当だったのね」

 

 トウジはセッションの最中に、リフティングともダンスともつかないボールを使ったパフォーマンスで客を盛り上げていた。

 

「ワシ、嘘は何も言うとらんで」

 

 横に立ったまま、レイの瞳を見つめて答えるトウジ。

 あの時、彼が言ったことを思い出し、レイの鼓動が少し跳ねる。

 

「あら、やっぱりお似合いよね?」

 

 リツコが意地悪く、シンジの方を見ながら言う。

 

「えっ、ワシらですか?」

 

 照れもなく、嬉しそうに言うトウジにアスカはすかさず言った。

 

「いや、似合ってない、ぜんぜんっ似合ってない。

ガッツ・イシマツとジュリア・ロバーツが並んで歩いてるみたい」

 

 いや、それはそれで面白いと思うのだが。

 ガッツもなんだか国際派風味の名前だし。

 

「アスカ、悪いけど、私、今日帰らせてもらうわ」

 

 突然、リツコが帰り支度を始めた。

 

「えっ?」

 

「私のダーリンとハニーが、ちょっと風邪気味でね」

 

「ダーリン…ハニー?」

 

 物憂げにため息をつくリツコを訝しがってシンジが訊き返す。

 

「私のアマン達…じゃあ、悪いけど」

 

「ちょっと、アンタ、地雷踏むだけ踏んで…」

 

 アスカがそう言うのもかまわず、リツコは意味深な笑顔を残し、さっさと帰っていった。

 レイの隣の席が空くと、トウジは当たり前のようにそこに座った。

 

「ダーリンとハニーって…二股?」

 

 シンジはリツコのことをよく知らないので、アスカに聞いてみた。

 

「猫よ、猫」

 

「あぁ…猫が好きなんだね、リツコさん」

 

「猫屋敷よ、アイツの家」

 

「へぇ」

 

 とか、変なところを気にしているシンジに、突っ込みを入れる気も失せてくる。

 他に気にするところがあるだろう。

 例えば、いつの間にふたりの世界に突入しだした隣の男女など。

 

「ピアノうまいんやな、ポップス系もやれるし」

 

「いいえ、あんなこと、初めて」

 

「でも、結構、うまくあってたよな。ワシら」

 

「そう…」

 

 言葉だけ聴くと素っ気ないけれど、レイの頬は目に見えて紅潮している。

 恥じらいながらもレイはトウジとの対話を楽しんでいる、ようにシンジには見えた。

 

「指、長いのね」

 

「ほうか?」

 

 トウジはレイに手を広げて見せた。

 

「1オクターブと3つは届くわね、CからEまで」

 

「それって、すごいんか?」

 

「ええ…私はオクターブが精一杯」

 

「どれ、見せてみぃ」

 

 トウジはさりげなく自分とレイの手を合わせた。

 肌と肌がいきなり触れて、レイの心臓が少し、跳ねた。

 彼の手は自分の手よりも、ひとまわりも大きかった。

 

「ちっちゃい手やな…」

 

 手を合わせたまま、呟くトウジ。

 これだから、ラテン系と関西系の男子は恐ろしい。

 無防備に相手のふところに飛び込んで、しり込みをしない。

 トウジの声に、ビクッと反応しただけで、何も出来ないシンジとは対称的である。

 

 その、双方を見て、アスカは『やっばいなぁ…』と、何故だか一番危機感を募らせていた。

 

「あ!ねぇ、ねぇ!せっかくみんなでいるんだから、みんなで話さない!?」

 

「何言うてんねん、オマエ」

 

 トウジが冷たく言い返した。

 そんなことを言われなくても、白々しいのは百も承知。

 

「いや、ほら…山手線ゲームとか」

 

「ひとりでやれや」

 

 素っ気なく言うと、トウジはまたすぐレイの方を向いた。

 

「ピアノ、いつからやってるんや?」

 

 甘く危険な眼差し(シンジ主観)というのか、エロ親父のスケベそうな眼(アスカ主観)と言えばいいのか、

 とにかく、そんな感じの眼差しが、レイを見つめる。

 

 旧友の冷たい態度にブチ切れそうになるアスカに、シンジが声をかける。

 

「恵比寿」

 

「…五反田」

 

 いきなりのシンジの言葉に毒気を抜かれたアスカは、思わず答えてしまう。

 しかも、シンジは続けてきた。

 言い出しっぺが答えない訳にはいかないだろう。

 

「…新宿」

 

「原宿」

 

「日暮里」

 

「目黒」

 

「渋谷」

 

「…シンジ、楽しい?」

 

 アスカがついに痺れを切らして言った。

 

「たぶん、アスカと同じ」

 

「……・ごめん、シンジ。こんなはずじゃ」

 

 アスカは、しょんぼりと肩を落した。

 シンジの態度は確かに情けないが、元をただせば、二人を招待したのは自分なのだ。

 謝る自分に『気にしないで』という素振りで苦笑するシンジだが、そういう風に出られると余計気にしてしまう。

 

<ヒカリがいないのが、せめてもの救いか…>

 

 と思う彼女は甘々シュガーベイブ。

 客席から死角になる厨房の影から、ヒカリはずっと一部始終を見ていた。

 かなり、思い詰めた瞳で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                       第6話:決戦、第3新東京市 <後編>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トウジとレイの会話は、噛み合わない。

 お互い専門にどっぷりと浸かった人生を送ってきたのだから、共通の話題が少ないのだ。

 それでも、会話は弾んでいた。

 トウジは聞き役に徹し、レイの話題を常に引き出していく。

 話題がころころ変わっても気にしない。

 会話の内容自体に意味は無く、言葉を交わしていくことだけでも親睦を深めるのに重要だということを彼は知っていた。

 同じ聞き役に徹するのでも、言葉の意味を噛み砕き考え込んでしまうシンジとは偉い違いである。

 

 その差を知ってか知らずか、シンジはぼんやりとけぶるように二人を見ていた。

 アスカは居たたまれなくて、何度かトウジに噛み付こうかと思ったが、その度に絶妙のタイミングでシンジが話し掛けて制する。

 ヒカリは、厨房でアスカに頼まれたとっくに出すタイミングを失った焼きそばを傍らに、そんな四人を見つめていた。

 そんなどうにもならない五重奏が、閉店まで続いた。

 

 

 

 

 

 

 

「お、もうこんな時間かい」

 

 おそらく一番時間が過ぎるのが早かったであろうこの店のオーナーは、客のまばらになったフロアを見て、やっと気がついた。

 スタッフに閉店の指示を出し、三人を促し、外に出るとすぐにタクシーを捕まえた。

 

「乗れや」

 

 タクシーの脇に立ち、レイをエスコートするここまでまるで淀みがない。

 

「大丈夫、ひとりで帰れるわ」

 

 レイが断るのを見て、アスカはシンジをせっついた。

 ここは譲れないだろう。

 

「あ、シンジ、送ってきなさいよ。大学の先輩なんだし、ね」

 

「え、そうなん?」

 

 自分が送っていくつもりだったトウジは心外そうだ。

 

「いいよ」

 

 シンジは断った。

 

「えっ…でも、やっぱり、ここはほらシンジが行かないと」

 

「いいんだ」

 

 一生懸命言うアスカに、シンジは笑顔を貼り付けたまま、きっぱりと言った。

 シンジはしっかりと傷ついていた。

 今、この状況で、二人の仲に割ってはいる気まずさが心の中にある。

 家族としての役割、とか偉そうなことを言っても結局逃げているだけかもしれない、という心の中のわだかまりがアスカの態度を発端として、

 浮かんできてしまった。

 そのクセ、二人の仲に嫉妬している自分。

 余計なことばかり考えて、トウジやレイやアスカの純粋な想いに気まずさを覚える。

 嫉妬、迷い、矛盾を抱え込みすぎている。

 

「?ほな…」

 

 不思議そうにシンジを見た後、レイとタクシーに乗り込んだ。

 シンジが後部座席に座るレイを見つめる。

 一瞬、目が合った。

 即座に、娘を見守る父親の仮面を被ったシンジを見て、何故かレイは目を伏せた。

 

 顔には出さなかったが、心の中で、シンジはしっかりと傷つけられていた。

 レイに、ではなく、ましてやトウジやアスカにでもなく、自分自身の曖昧さに。

 何よりも、『理由』を『言い訳』に汚してしまったのかもしれない、今の自分の笑顔が情けなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 行ってしまうタクシーをしばらく見送ると、シンジは何も言わずに歩き始めた。

 仕方なく、アスカもその後をついていく。

 気まずい、空気。

 言葉もなく、ふたりは歩き続ける。

 

 そんな雰囲気に、やはり耐えられなくなったアスカが話し掛けようとすると、シンジが立ち止まった。

 

「……僕」

 

「?」

 

「…ラーメン食べてくから」

 

「あ…うん」

 

 『一風』に入ってく寂しい背中に、アスカは一瞬声をかけようか迷ったが、結局何も言えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゆっくりと、時間をかけてラーメンを食べてシンジが自分の家のドアを開けると、そこは有り難いことに真っ暗だった。

 今、アスカに会っても、どんな顔をしていいかわからない。

 

「ハァ…」

 

 そんなことにホッとしてしまう自分に呆れ、そのまま蹲り、ドアに背を預ける。

 何で、自分はこんななんだろうか。

 不純なのだ。

 気遣い、気配り、行動に伴う結果とか余計なことを考え、感情に純粋になれない。

 相手の為、とかそんなのは嘘だ。

 結局、自分の納得できるようにしてるだけなのに、勝手に傷ついている。

 そして、そんな自分を見て、アスカは心配してくれている…・

 

「ったく…」

 

 もう寝ているだろうアスカに気を使ってささやかな舌打ちを一つ鳴らし、ポケットからタバコを取り出す。

 

シュボッ…

 

 暗闇に灯る安物のジッポの火。

 何だか、今の心情に合ってる気がして、しばらく見つめた。

 そんなことしてしまうのは、アスカの言っていたように自分に酔っている証拠だろう。

 

「ダサ…」

 

 タバコを消し、立ち上がろうとして絶句した。

 そこには、廊下の壁にもたれて座っているアスカが居た。

 

「あ…アスカ?」

 

「おかえり」

 

 アスカは暗闇の中、シンジの方も見ずに壁を睨んだままだ。

 

「た、ただいま…じゃなくて何してるの?」

 

「考えてたの」

 

「…灯りもつけずにこんなところで?」

 

「今日の失敗、今後の傾向と対策」

 

「あ…」

 

 やっぱり、心配させてしまっている。

 

「でもね、いくら考えても良い考えなんて浮かばないの。

当たり前よね、アタシ、アンタが何考えてるかなんてわかんない。

それなのに、アンタが望んでいるようなことなんてできるワケないのよ」

 

「アスカ…」

 

「お詫びもお礼もできないんだ、アタシ」

 

「いや…でも…ありがとう、だよ。アスカには」

 

「そう?」

 

 そこで、アスカは初めてシンジの方を向いてくれた。

 そんなアスカに、今できる精一杯の笑顔を浮かべるシンジ。

 

「うん…」

 

「……」

 

 アスカは何も言ってくれなかった。

 また誤解させてしまった、と思ったシンジはアスカから視線を外し、次の言葉を探す。

 

トン

 

 シンジの胸に柔らかな感触。

 

「あ、え、アスカ?」

 

 何時の間にか、自分の腕の中にアスカが居た。

 頭をシンジの胸に触れるか触れないかの位置で、座り込んでいるアスカは、柔らかくて、暖かくて、だいぶ酒臭い。

 

「へらへら笑ってんじゃないわよ、バァカ」

 

「…アスカ、飲んでるでしょ?」

 

 アスカは答えず、妙に落ち着いた声で独り言のように言った。

 

「わっかんないの…。

なんで笑ってられんの?苦しくないの?辛くないの?」

 

「自分で勝手にやってることだから…苦しそうに辛そうにしたら、かっこ悪いよ」

 

「ふーん、いいかっこしぃ、か」

 

「…だと思うよ」

 

「何パーセントくらいがアタシのせい?」

 

「何言ってんだよ…言ったろ?アスカには『ありがとう』だよ」

 

「全然、嬉しくないのよね。

あんなシュチエーションを創ったアタシに、なんでアンタが『ありがとう』なのよ。

わけわかんない」

 

「…わけわかんないのは、アスカの『お礼』とか『お詫び』も一緒だよ」

 

「お互い様…か」

 

「そうだといいね」

 

 そこで、会話が止まる。

 アスカが少しだけシンジに体を預け、ふたりの触れる面積が増えた。

 吐息が感じられる距離。

 

「…じゃ、いいのか」

 

「だといいね」

 

 曖昧な言葉、曖昧な関係。

 それが考えすぎて生きていくことしかできないふたりには妙に心地よかった。

 

「でもさ、アタシが余計なことしてんだったら…言ってよ」

 

「そんなこと、ないよ。アスカの言うことは、何て言うか…勉強になるよ」

 

「…あ〜あ」

 

 ポス…

 アスカがシンジの胸の中に顔をうずめてきた。

 

「あ、あすか?」

 

 シャンプーの臭いとアスカの体温。

 動揺させるのに充分すぎる材料だ。

 反射的に上がったシンジの腕は中途半端な位置で固まってしまう。

 

「やっぱ全然わかんないわ、アンタの頭ん中。

お手上げ、もう余計なことしない。

これ以上、迷惑かけたくないもの」

 

「そんな…」

 

「でも…きっと、説明されても納得もしないし、好きになれないと思うんだ。

アンタのやってること」

 

「…うん、僕もそう思うよ」

 

 自分でさえ、納得してないし好きになれないのだから、当然だと思う。

 

「でもねアンタ見てると、泣きそうになんの。

たまに、だけどね。

痛いんだ、胸。

例えとかじゃなくて、ホントに痛い。

これ、なんなの?」

 

 それもまた、アスカ自身がわかってないのだから、シンジにわかるはずもない。

 

「…さぁ」

 

「なんなのかなぁ…」

 

 その奥に答えがあるとでも思っているのか、シンジの胸にえいえいと顔を擦り付けてくる。

 甘える子猫のようなその仕種は、シンジを慌てさせるよりも、愛しさやすまなさを起こさせた。

 

「ごめん…」 

 

 固まっていたシンジの腕がそっとアスカを包みこむ。

 触れるか触れないかの微妙な位置で、羽毛のように回されるその抱擁がアスカにはどうしようもなく心地よかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どのくらいそうしていたのだろう。

 それは数秒だったかもしれないし、数時間だったかもしれない…ということはなく、きっかり三時間十六分ふたりはそのままの体勢だった。

 なぜ、そんなに長時間そうしていられたのかというと、眠ってたから。

 シンジは両腕をアスカから数マイクロの位置で器用にも固定してうたた寝を、アスカはシンジのシャツに盛大な涎のシミを創って熟睡していた。

 朝起きてこの状態で顔を合わせたらかなりの気恥ずかしさが爆発していただろう。

 

 「ムニャムニャ、というものが食べたい」

 

 寝言にしてはやけにハッキリした口調でアスカが謎の言葉を発した草木も眠る丑三つ時。

 

ピン、ポーン…

 

 やけに余韻を残すチャイムの音。

 シンジは目を覚ますと腕時計を見た。

 まだ、午前3時。

 

ピン、ポーン…

 

 またしても、薄気味悪いチャイムの音。

 

<だれだよ、いったい…>

 

 シンジが寝ぼけた頭のまま、のっそりと立ち上がる。

 

ベチャ

 

「いったーい…」

 

 もたれかかっていたアスカは床とキス。

 それを不思議そうに見つめるシンジ。

 まだ、寝ぼけている。

 

ピン、ポーン…

 

 三度、チャイムは鳴った。

 起き上がったアスカと目が合う。

 

「ふあ…ねぇ、いまなんじ?」

 

「さんじ」

 

 腕時計を指差しながら現状確認。

 どう考えても、来客のある時間じゃない。

 

ピン、ポーン…

 

 四度目。

 静まり返ったマンションに残る残響。

 

「何?」

 

 アスカが訊く。

 

「誰?」

 

 シンジにもわからない。

 

「こんな夜中に…アンタの水子じゃないの?」

 

「ウェディングドレス着た幽霊だったら怖いよね」

 

「しつっこいわね」

 

コツ、コツ

 

 更に恐い事に今度はノックに切り替わった。

 

シクシクシク…

 

 おまけに女のすすり泣きまで聞こえてくる。

 演出過剰にも程がある。

 

「ぜったいウェディングドレスだ…」

 

 茶化すつもりで言ったシンジだったが、唾を飲み込んでしまった。

 アスカは何も言わなかったが、シンジの後ろに隠れてビビっていた。

 後に『お化けと猫とか何考えてんだかわかんないものは苦手』とか言っていた。

 猫と同レベルのことなのか、と言えば正解で、それは拭えない忌まわしい記憶に根差している。

 彼女の過去に何があったかは外伝を待っていただきたい(嘘)

 

 しばし扉の前で震えていたふたりだったが、一向にノックとすすり泣きは止まない。

 どちらかが行って確かめるしか、状況は打破できない。

 

 こういう時にどちらが動くか、と言えばやはり短気な彼女の方だった。

 

「……駒込」

 

「…品川」

 

「大崎」

 

「五反田」

 

「ブー、さっき言った」

 

「言ってないよ」

 

「言ったわよ」

 

「もう…仕方ないな」

 

 シンジはおそるおそるドアノブを掴む。

 アスカは固唾を飲んで成り行きを見守っている。

 

ガチャン!

 

 シンジが鍵を開けるとドアは大きな音を立てて開いた。

 一瞬、目を瞑る。

 何も来ない。

 そっと顔を出して外を見ると、そこに居たのは濡れた瞳のヒカリだった。

 

「なんなんだよ…もう」

 

 胸を撫で下ろしたものの、異常事態には変わりない。

 シンジは訝しげに彼女を見た。

 

「こんばんは…」

 

 涙に濡れた瞳で、ヒカリが挨拶した。

 

「こんばんわ……って、夜中の3時なんですけど」

 

 シンジがやっとの思いで言った。

 

「帰ってこないんです…」

 

「え?」

 

「鈴原が綾波さんを送ったまま帰ってこないんです」

 

「……………え」

 

 絶句したシンジを見て、アスカも言葉を失った。

 幽霊か水子の方が全然マシだったことだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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A HEART WORK

 


 

after word

 

 

 わーい、寒いねウィンター。

 『冬だーいすき♪』とか言っちゃいたいテリエです。

 あーだいぶ間が空きましたね。

 特に言い訳も用意してございません。

 ただ、超マイペースなだけでございます。

 ライフワーク。

 ラブ アンド ピース。

 ってな感じで。

 

 ただただ、900000HIT超のURIさまに感嘆と羨望と万歳の嵐。

 そして、ホントにホントにありがとう、とホントに(×10)すいませんです、をUrielさんと読んでくれるみなさんへ。

 …ホントに、ね。

 

  今回の反省点

 ●「何が決戦なんだい?」という根本的な欠点。

 ●「自分自身との」とかそんなカンジの言い訳で。

 ●シンジ君の性格で修羅場になるとは思えなかったんだ、その気持ちは本当だと思うから。

 ●心理描写が相変わらずアレ。

 ●今度はリツコさんがミサトっぽい。

 ●話が進まない。

 ●仕事は進まなくてもいいらしい。

 

 

 

 

Let’s 不完全燃焼

 


テリエさんから頂きました。
多謝。
今回のポイント。
○ 幽霊
○ 修羅場。
○ 真夜中の訪問者。

例えば妻子持ちが素人娘と不倫した時。
女同士の修羅場になっても、男はオロオロするだけで為す術を持ちません。
ただ、時折上手に丸め込み、いつの間にか多人数プレイにすら持ち込む男も居ます。
シンジの場合はどう考えも前者なんですが、ヒカリ×レイだと…沈黙が延々と続きそうで、その意味では
今回の大海戦回避は懸命であったと言えましょう。
やはり砲弾が飛び交い、多人数を巻き込む戦闘こそ修羅場の醍醐味と言えるのです。

傍迷惑な解説者より。


コメントIN女神館の住人達+X

彼女も人肌が恋しいお年頃。

さ:「こう言うの…何とかっていうんですよね、ほらえーと…」
シ:「漁夫の利」
さ:「そうそう、そうでした。でも、横からすうっと持っていく方が揉めたりしないですよね」
シ:「さっさと食べちゃえばね…って、何処に連れてく気よ」
さ:「うふふ〜、あたしも見習っちゃおうかなあって」
シ:「……」

ちょっとつまらないわね、折角修羅場が見られると思ったのに。

U:「修羅場修羅場ー!!」
さ:「ド、ドキドキワクワク?」
U:「当たり前だ」
シ:「き、期待で高揚中?」
U:「無論。さ、修羅場修羅場ー!」
シ:「それはまあ、少し気持ちわかるけども」
さ:「あの、救急車呼んだ方がいいですか?」

『とりあえずさらっちゃえ』

U:「真理だが、気づくのが遅い」
さ:「あの…本当にいいんですか?」
U:「対碇シンジ用拉致道具一色三万円から。買う?」
す:「し、仕方ありませんわね。お金に困っていらっしゃるようですから、特別に買ってさしあげますわよ」
さ:「あっ、すみれさんずるいです、あたしもそれ買いますっ」
U:「毎度あり〜」
マ:「……」

それはピアニストとして、だけではなく人間として重要な何か。

ミ:「ふふーん、やっぱり爆よねえ、爆」
ア:「はあ?」
ミ:「女たるもの豊満な乳で男を挟んで−あ、違った受け止めてあげないとねえ。ま、アスカも頑張るのよ〜」
ア:「人間としてって言ってんでしょっ、絶対コロすっ!」
シ:「今…寒気がしたぞ」

シャンプーの臭いとアスカの体温。

シ:「あちあちあちっ…ア、アスカっ?」
ア:「あたし、熱いでしょ…ナカも外も」
シ:「うん、アスカのナカすっごく熱…ってちがーう!アスカ熱あるじゃないかっ、すぐ着替えないとっ」
ア:「シンジが着替えさせてくれたらね〜」
シ:「わ、分かったよ僕が…え?」
U:「熱でも随分と余裕はありそうだ」


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