- (E)ワウペダルの周波数特性と簡単な改造
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ワウペダルの周波数特性を回路シミュレーションで確認してみましょう。
また簡単な改造を行った場合の、周波数特性も見てみましょう。
更新 19/Nov/2012
周波数特性図を更新。以前の図では「Pot: Bottom side」での
ワウポット抵抗値が10%になっていたので、抵抗値0.1%に修正しました。
更新 12/Nov/2012
オリジナルのワウ回路では、ワウジャック入力とワウ入力回路が常に接続されているため、
ワウ OFF 状態でもワウ側回路の影響が少しだけ残ります。
詳細は以下の「ワウ OFF 状態での周波数特性」を参照してください。
- (E)結果の早わかりまとめ
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最初に回路シミュレーション結果から分かる結論をまとめておきます。
詳細を確認したい場合はさらに読み進んでください。
- ワウOFF状態: ギターボリュームポット絞った状態では、ワウのカップリングコンデンサによる影響があり、
カップリングコンデンサ容量が小さいほど、低音域が少しだけ持ち上がった特性になる
(ボリューム全開近くではほとんど低音域の持ち上がりが無い)
- カップリングコンデンサ容量を 0.1uF に変更するとこの低音域持ち上がりを軽減できる。
- カップリングコンデンサ容量を変えると、ワウON状態での共振周波数ピークが少しだけ平坦に変わるが
気にならないレベルだと思える。
- ワウON状態: コンデンサを変えることで共振周波数を調節できる。
- コンデンサ容量を大きくすれば、共振周波数をより低く設定できる。
- 簡単な改造例と方法は、以下を読み進んでください。
- (E)シミュレーション条件
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- 等価回路(E)
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有名なワウペダルと類似の回路を想定しています。
シミュレーション条件のコンデンサ(Ccup)と、
測定する電圧ポイント(Vtr / Vout)には赤枠を付けています。

- シミュレーション条件(E)
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ポット位置 5段階 Bottom から Top
コンデンサ容量(Ccup) 4種類 0.01uF/0.022uF/0.047uF/0.1uF
- (E)シミュレーション結果(周波数特性)
電圧特性 Vtr (赤): 入力側トランジスタの出力電圧
電圧特性 Vout(青): ワウペダル出力電圧
ポット位置 5段階 Bottom から Top
周波数特性グラフを見てみましょう。
ワウペダル出力電圧 Vout(青) を見ると、中音域が持ち上がった独特な周波数特性カーブになっています
(バンドパス フィルタになっています)
これが「ワウらしさ」を生みだしていると考えられます。
ワウペダルを踏み込んでポット位置を変えると、ピークの周波数(共振周波数)を変えることができます。
また入力側トランジスタの出力電圧Vtr (赤) の時点で、
100Hz付近から低音域がカットされているのが分かります。
これは入力カップリングコンデンサ容量が 0.01uF と比較的小さいためですが、
ワウ ON 状態では中音域重視なので問題にならないと思います。

[図] ワウ ON 状態での周波数特性(中音域が持ち上がった独特な周波数特性)
- ワウ OFF 状態での周波数特性(ワウ カップリングコンデンサの影響)
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オリジナルのワウ回路では、ワウを OFF 状態にしたとき下図のような回路になります。
「Input」がワウジャック入力、「Output」がワウジャック出力です。
赤枠を付けた部品が「入力カップリングコンデンサ」です。
オリジナル回路では、ワウジャック入力とワウ入力回路が常に接続されているため、
ワウ OFF 状態でもワウ側回路入力カップリングコンデンサの影響が少しだけ残ります。

[図] ワウ OFF 状態でのワウ側回路入力カップリングコンデンサの影響
ワウのカップリングコンデンサが、ワウ OFF 状態のときに与える影響をシミュレーションしましょう。
ギターボリュームポット全開状態では、ワウのカップリングコンデンサによる影響はほとんどありません。
ギターボリュームポット絞った状態では、ワウのカップリングコンデンサによる影響があります。
入力カップリングコンデンサ容量を変えたときの周波数特性を見ると、
カップリングコンデンサ容量が小さいほど、ボリュームポット絞った状態で
低音域が少しだけ持ち上がった特性になります。
(実際には中高音域側が下がっています)
周波数特性グラフ上ではわずかな差ですが、多くのプレーヤーがこの中高音域低下に気付いているようです。
この影響を避けたい場合、トゥルーバイパス回路を使う、
あるいは「ワウペダルの簡単な改造」で説明する改造を行うと良いでしょう。
入力カップリングコンデンサ容量 0.01uF/0.047uF/0.1uF
ワウ ポット位置 Bottom 側
ボリュームポット全開状態: 縦軸 0 dB 付近の特性
ボリュームポット絞った状態: 縦軸 -6 dB 付近の特性

[図] ワウ OFF 状態での周波数特性(低音域が少しだけ持ち上がった特性になる)
- ワウペダルの簡単な改造(共振周波数の変更)
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共振周波数は、コイルのインダクタンス(H:ヘンリー)とコンデンサ静電容量(F:ファラッド)
により決まります。
ただしワウポット位置により、共振周波数に影響するコンデンサが変わります。
通常コンデンサはコイルに比べて安価なので、コンデンサを変えることで共振周波数を
調節すると良いでしょう。
ここでは等価回路に赤枠を付けた、コンデンサ(Ccup)を変えてシミュレーションをします。
コンデンサ容量を大きくすれば、共振周波数をより低く設定できます。
コンデンサ容量(Ccup) 0.01uF/0.022uF/0.047uF/0.1uF
ポット位置 Bottom 側

[図] コンデンサ(Ccup)を変えて共振周波数を調節
基板上でのコンデンサ(Ccup)の見つけ方ですが、コイルに接続されている
コンデンサを追って探すと簡単です。2種類のコンデンサのうち、電界コンデンサで無い方が
Ccup です。
コンデンサ容量を増やすのであれば、今ついている Ccup を外さずに、Ccup に並列に
追加コンデンサを接続すればより簡単に改造できます。

[図] コンデンサ(Ccup)の位置
- ワウペダルの簡単な改造(入力カップリングコンデンサの変更)
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「ワウ OFF 状態での周波数特性」で示したように、
オリジナルのワウ回路では、ワウを OFF 状態にしたとき低音域が少しだけ持ち上がった特性になります。
以下のような対策案があります。
- トゥルーバイパス回路改造を行う
インターネット上に詳しい改造方法が紹介されていると思います。
- 他のエフェクターと接続してワウを使う
ごく普通の使い方ですが、一般のエフェクターでは低音域がカットされることが多いので、
ワウ OFF 状態での低音域持ち上りと組み合わせると、幾分補い合えます。
- ギター ボリューム全開近くで弾く
「ワウ OFF 状態での周波数特性」を見てわかるように、ボリューム全開近くではほとんど
低音域の持ち上がりが無くなります。
- ギターアンプのトーンコントロールで調整する
BASS で低音域を調整するだけ、とても簡単ですね。
- ワウの入力カップリングコンデンサを変更する
入力カップリングコンデンサ容量を増やせば、ワウ OFF 状態での低音域持ち上りを軽減できます。
対策としてワウの入力カップリングコンデンサを変更した場合、「ワウ ON 状態」にも影響が出ます。
なのでここでは「ワウ ON 状態」でのシミュレーション結果を確認しましょう。
(ワウ OFF 状態の特性は、「ワウ OFF 状態での周波数特性」を参照してください)
入力側トランジスタの出力電圧Vtr (赤) を見ると
分かるように、カップリングコンデンサ容量を 0.047uF 以上に増やすと低音域がカットが軽減されます。
けれどもワウの中音域共振周波数には直接影響しないことが、 ワウペダル出力電圧 Vout(青) から分かります。
ただし低音域カットが軽減されるので、ピークが少しだけ平坦に変わってしまいますが、
気にならないレベルだと思います。
入力カップリングコンデンサ容量 0.01uF/0.022uF/0.047uF/0.1uF
ポット位置 Bottom 側

[図] 入力カップリングコンデンサ容量を変えた場合の周波数特性
基板上での入力カップリングコンデンサの見つけ方ですが、入力ジャックに接続されている
コンデンサを追って探すと簡単です。
コンデンサ容量を増やすのであれば、今ついているコンデンサを外さずに並列に
追加コンデンサを接続すればより簡単に改造できます。

[図] 入力カップリングコンデンサの位置