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 日本原子力の終焉
Demise of Japan's nuclear power


 私は、日本という地域は、明文化されていない伝統的習慣にもとづいて、あらゆる組織、利害関係が成立していると解釈している。

 だから、日本には、言論の自由も、厳密な意味の正義も公正も期待していない。

 既得権益を守るために、どのような合法的利権措置がありとあらゆる組織で幾重にも考え出されて運用され、それぞれの利害関係者の縄張りの力関係の下に、さらに外部の既得権益者と結びついて、網目のようにはりめぐらされて、本音と建前と落としどころをはかって、物事が解決されていくかは、この国で半世紀も生きていればそれなりに推測できるからである。

 その意味で、2015/12/18の新聞の高速増殖炉もんじゅの官製談合疑惑を自民党議員が追及したという記事は、まことにめでたい、日本の原子力の終焉を実感させるものであった。

 記事の中身は、競争入札の平均落札率が99%であり、これは談合の証拠であるとするものだ。

 大小の公共事業から、出入り業者の日用品入札まで、お上、軍部、農協、国鉄、専売、郵政、なんとか公社、かんとか団体、なにやらセンター、とにかくすべての競争にさらされない利益団体なら、伝統的にこれら、さまざまな手法とコネによって、官民手をとりあって既成事実と利権構造を作り上げ、裏金を作ってさらに見えない力を増大させて、コストを社会に押し付けるのが日本的組織のセオリーである。

 今回の手法は、まことに単純・初歩、幼稚なものであるが、権力が後押しすれば、摘発などされない。はずだった。そして、この手のあらゆるコネ・談合に素直に応じないと分け前がもらえないのは当然なので、談合は、もともとないほうがありえない。

 書いてる新聞だって、イヤというほどこの程度は知っている。知っていて、「書いてね」とだれかが言ったので書いただけの話だ。びっくりした顔で。

 そもそも自民党が発表して、新聞に掲載になって、スキャンダルじたてにするということは、権力が原子力ムラを見限ったという通告なのである。まあ、なにかアメを用意して、詰め腹切らせるであろうが。

 (余計な一言を書けば、収賄や談合や既得権益による不当利益獲得は、公金を横領することであり、盗みです。私は、もし小学生が万引きを働いたのを見つけても、謝まり賠償すれば、不問にふして隠蔽してもいいと思います。でも、その際に誰にも見えない場所で耳を指で思いっきりひっぱります。耳ならたいした傷はつきませんが、痛みと恥ずかしさは一生忘れないでしょう。公金横領のコソドロネズミどもも、耳をひっぱってやりたいです)

 ともかく、もんじゅが20年間、脳死に近い状態で動かしていたというのは知られていたが、いよいよダメで言い逃れもきかないので、尻尾きりに入ったのだ。高速増殖炉を本気で開発する意欲はとっくにないし、利権の延命だけに使っていたが、運営主体の変更という「廃炉勧告」がされ、それに本当の開発をするとなったら、おこりうるリスクの大きさと、それに見合う利益が見込めないので、「やめた」ということであろう。

 本当に稼動したらフクシマ並みの大事故を起こしかねないし、実際に大災害(直下地震や破局噴火)などあれば、現状でもそうなるのだから、手に負えない。と、遅ればせながら手を打って、逃げることにしたのだろう。理性的判断なのでありがたい。

 そして、これはスキャンダルと腐敗組織の自壊なのだから、政権には痛手にはならないし、政策の主体的な変更ではないので、原子力を切り捨てる自己自演のチャンスとして活用されるであろう。まことに日本的で玉虫色、うやむやの既成事実の変更である。(底流ではしばらく前に決定済みだったろうが、それぞれタイムスケジュールを踏んで、プラン通りにリークしたのかな・・)

 東芝が海外の原発事業で赤字隠しをしていたというスキャンダル報道も、誰かが誰かを黙らせるための同様の措置かもしれない。叩けばホコリの出る隠しダマはいっぱいあるだろうし、既得権益団体同士をぶつければ、そこから新たな権力が出てくる。たぶん原子力ムラは縄張争いに負けたのだろう。

 再生可能エネルギーの前途の明るさも後押ししたはずだ。この意味で、菅直人さんはやはりある程度歴史的に評価しないといけないと思う。

 核燃料の処理のため六ヶ所村はまだ必要だし、核廃棄物を福島に集約するかどうかの綱引きもはじまっているだろうから、まだまだ紆余曲折は続くが、少なくとも民間原子力という悪夢は、日本から去りつつある。核燃料サイクルは崩壊したのだ。あとできるのは、再処理燃料を輸出するくらいであろうか?

 それにしても、あの国難のあとでの、原発の新設・輸出などは、一億玉砕の軍部と同じ空虚な言葉であった。本当に頭痛以外の何ものでもなかった。

 フクシマはようやく、根本的解決に向かってすすみだしたのです。

 だが、庶民にとってはここからが肝心である。核廃棄物(低レベルからハイレベルまで、いろいろあるが)の利権構造が崩壊してしまえば、身銭をきって管理する部門など無いのだから処理は「いいかげん(かつてのPCB焼却処理のように)」に確実になります。

 膨大な時間と非効率をかけて、だれもがあきれて忘れはて、ほとぼりが冷めたころに、我々の日常環境に汚染物質がうっすらとまかれて、「おしまい」。とならないように、ツボをおさえて、最後の最後まで、永遠にこのやっかいなゴミを監視しつづけねばならない。

 それでも結局は汚染が拡大するでしょうから、汚染されても生きられるようにも対策を考え、家族を防衛していきましょう。

 それにしても、日本人に核を持つ科学的資質・資格なんて、どこにもないなあ。

 我が愛する祖国と人々と子孫に、おてんとさまのお恵みが永久にありますように。

  

T.SAKURAI 2015/12/18