安全で、エネルギー節約型の生活のために、住宅全体の高気密は、必要になります。
また、高度な外気汚染がある場合(花粉、黄砂、大気汚染、火山灰、その他)は、屋内を完全に密閉し、高気密化して、浄化した空気のみを取り入れなければなりませんので、計画換気になります。
高気密化すれば、どうしてもコントロールされた24時間の全体換気が必要になります。(1時間あたり、0.5回の空気の入れ替えが現在の法律では必要です)
生物的に。生活的に。快適な環境(暖房性能を確保し、体臭を抑える)のために、必要な換気量があるのです。それは確保されなければなりません。
気密性がなく、隙間風ばかりでしたら、換気はコントロールできず、意味がありません。
過剰になるか、不足するか、あるいはばらついて、性能がでないなど、全体のバランスが欠けたものになります。
そして、どれだけ高気密にしても、必要な換気をすると、燃費性能は落ちて当然であり、全体として一定以上の性能にはなりません。
気密性能と断熱性能と換気量は、どれも関係性をもった上限と下限の適正レベルがあり、同時に考えなければならないのです。
そして、強制的に機械で換気することで、在室活動中・在室安静中・無人・季節変化などの、状況に応じてファンの強弱で換気の量をコントロール可能になります。
また換気の経路を設定することで、とりこむ空気を浄化して内部に供給できますから、より安全です。
住人が窒息しない換気量は少量ですみ、自然のままにまかせても、まず平気です。
電力が使えなくなり、換気ができなくても、数日なら換気ファンを止めて、くらすことも可能です。
(緊急時の選択です。この場合、気密性があれば暖房性能が向上するので、電気が使えなくても比較的マシな生活環境を維持できますが、なければ大変なことになりかねません。)
また、個別の部屋に、独立した空気清浄機をおくことは意味があります。侵入した花粉などを捕捉する必要があるからです。
外気取り入れ
・第一期工事分では、一箇所だけです。
サンルームに面した土間から、リビングに引き込みます。
直接外気を取り入れるのではありません。外部から何者かにより、吸気口をふさがれる危険を減少させます。
準屋内ですから、ホコリや虫が少なく、温度差がやわらげられ、外部の風速や雨雪にも直接さらされない空気です。また一箇所だけにすることで、温度管理を容易にします。
・フィルターを取り付けます。フィルターはいくつか方法がありますが、下記二つを想定します。
・面積の大きな不織布(綿・紙繊維)を通して浄化する。
・塩などを溶かし込んだ比重の重たい水の中にポンプで通して浄化する。(エアーレーション)
・メンテナンスが、屋内から可能であること。
いくら準屋内とはいっても、状況によってはサンルームにも出られない状況があるかもしれません。空気の取り入れは重要ですから、保険をかけるのは意味があります。(フィルターの交換、あるいは汚れた水の交換などです。最低、毎週点検します。)
・地下熱利用エアコンの隣にします。24時間稼動ですから、運転音を一緒にして、防音対策を同時に行ないます。
屋内循環
・夫婦寝室と、こども部屋のリビングへのドア(木製)の下部には、内部が見えない通風スリットをつけます。そして夫婦寝室とこども部屋の間の壁の天井近くに、光のもれないファン付きの通風孔をもうけます。子供部屋にも地下熱利用エアコンがあります。
排気
・排気口は4箇所で、すべてファンのついた強制排気です。排気時にも掃除を楽にするための簡略な浄化フィルターをつけ、また外部から虫などの侵入を防ぐ網や、強風にさらされても逆流しないフード、自動シャッターなどをつけます。
・24時間排気する場所は、玄関とトイレです。使用時のみ、臨時に強制換気するのは、台所・風呂の二箇所です。基本的に南から北への排気です。(冬季対策・保温を重視します)
空気の流れは、
リビング→玄関 リビング→トイレ (臨時に リビング→台所 リビング→風呂)
子供部屋→夫婦寝室→リビング
子供部屋→リビング
(エアコン未稼働の春と秋は、リビング→子供部屋→夫婦寝室→リビング)
となります。屋内では、 「密閉空間」はなく、常に空気が動いて、均一な室内環境(温度・湿度・防臭)を維持します。
屋内での極端な寒暖の差や、汚れた空気や、結露は許容しません。
湿度管理
強制吸気・排気では、外気が冷たく、屋内が気密化して暖かい場合、取り入れた空気が温まる過程で湿度が低下して、「過乾燥」がおきます。結露の逆です。この場合、加湿しなければなりません。湿度は35%を下限目標とします。
方法は、加湿器、あるいは蓄えた温水(浴室と浴槽のフタを解放するのも一案)の一部を室内に露出させることでしょう。
洗濯物の部屋干しや、においのこもらない場合の調理熱を換気しないでそのまま屋内に放出することでもいいです。換気の空気の流れの上流部で加湿しましょう。
(やりすぎると、今度は室内温度が気化熱で奪われて冷えてしまいます)
これは屋内の気温を上げすぎると発生しやすいので、室温20度・湿度50%の快適環境を目標に、暖房温度をあげすぎないようにします。
追記
屋内でコントロールしない燃焼ガスを発生させることは、避けねばなりません。
(誕生ケーキかクリスマスのローソクくらいにします)
ファンはもちろん電力で動かします。もちろん家庭内バッテリーが必要です。電力の確保は絶対に必要です。
暖房と調理は木質燃料(バイオマス)に頼る場合があります。その場合、マドを開け放しての自然換気か、サンルームでの作業になります。
参考
民間用のシェルターには、停電時には手動で動かすことができるような換気装置が必ず設置しなければならないのは当然である。
ULPAフィルタ (ウルパフィルタ、英: Ultra Low Penetration Air Filter) とは、空気中からゴミ、塵・埃などを取り除き、清浄空気にする目的で使用するエアフィルタの一種である。
空気清浄機やクリーンルームのメインフィルタとして用いられる。日本工業規格 JIS Z 8122『コンタミネーションコントロール用語』 によって、「定格風量で粒径が0.15 ?mの粒子に対して99.9995%以上の粒子捕集率をもち、かつ初期圧力損失が245 Pa以下の性能を持つエアフィルタ」と規定されている。
ULPAフィルタはHEPAフィルタの粒子捕集効率を上げるために濾材密度を高め、空気抵抗を減らすために厚みを薄くさせたものである。そのため、強度が弱いという欠点を持つ。
冷暖房の意味は、生活の快適さのためだけと考えません。
あらゆる外部の環境変化に対しても、住んでいる人の生命を守る、死活的防衛装置として考えます。
ですから、いかなる状況でも、最低限の機能は維持し、エネルギーは極力節約し、耐久性があるものを求めたいです。
ですからひとつの設備に全面的に頼るのではなく、多重バックアップ体制で、さまざまな選択肢を使えるようにします。
基本手段
1 地中熱による、エアコン冷房・暖房。
外気温に無関係に室内の温度を維持します。
地下10メートルでは、その土地の年間平均気温の温度が保たれているそうです。
ですから極地なみの寒冷地以外では、熱・冷気を取り出して、ヒートポンプにかければ効率よい冷暖房が可能です。
基本的にはエアコンそのものですが、外気温や天候・大気の汚染状態にまったく影響されないシステムにできます。安定感のある設備となります。
通常の室外機をつけたエアコンでは、外気温で効率が変化しますし、暴風、水害で破損・水没すれば使用できなくなります。
豪雪にうもれたり、極端な大気汚染(火山灰の付着)などでも、運転不能になったり、故障します。そのような事態を回避するのです。
2 太陽熱温水・放射熱低温・井戸水を利用した床暖房・床冷房
日当りの良い屋根に、太陽熱を吸収する温水器をとりつけ、日中に暖めた水を断熱したタンクにためておきます。
通常は入浴や日常用水に使います。水は、井戸からくみあげ、浄水器にかけて使用します。
同じように、日当りのまったくない屋根に、放射冷却を利用した低温水をつくる冷水器をとりつけ、同じように冷水を別の断熱タンクにためておきます。
この二つの温水・冷水をリビングの床下に通したパイプに送れば、床暖房・床冷房に使用できます。
エネルギーを使わず、手動で作動可能ですから、補助の冷暖房になります。
また、井戸水は、地中熱により年間を通して一定なので、直接、床のパイプに送れば充分に冷暖房になります。井戸水は節約すべきですが非常用として有効です。
井戸水利用の最終冷房方法は、バスタブにためて、行水することです。
これが古来、熱帯での熱波に耐える最後の方法です。
3 薪炭利用のストーブ
電力が使用できない場合の暖房です。
バイオマス利用として間伐材などや製材の木屑をチップ化して、備蓄しておきます。
通常のマキも利用できるストーブを、リビングに 「保険」として設置します。
気密性の高い住宅ですから、使用時には換気を強化しなければなりませんが、調理にも使います。
また、エントツ部分に熱電素子を取り付けることで、小出力発電も行なえます。
これで電子機器のバッテリーなどの充電が可能で、通信機も使うことができるでしょう。
また、幼児やペットの安全のために、フェンスで囲っておきます。
4 基礎断熱した敷地下からの、地中熱を利用してベース温度を維持する。
基本的に住宅は断熱され、気密化されて効率はあがっています。
また、壁と天井の断熱材により、かなりの蓄熱、冷蓄がされて、内部環境が簡単に左右されない状態になっているのです。
これこそが最終的な安全装置で、なにもしなくても、かなり屋内の快適性は保たれるはずです。
また基礎断熱していれば、敷地の地下から自動的に地下の平均温度が伝わってきます。
ですから、狭い部屋(極論ですが収納スペースなど)に、家族集まって、毛布をかぶって肩をよせあえば、なんとかしのげるという事態も想定します。