TRONSHOW2004,TEPS2004 雑記

  2003/12/11(木)〜12/13(金)に東京有楽町の東京国際フォーラムで行われた、TRONSHOW2004とTEPS2004に行ってきました。といっても私が行ってきたのは最終日のみで、これまで毎年恒例のBTRON Clubの一般参加も出来る例会がなかったので、個人的にはちょっともの足りないところもありましたが・・・

  この感想を書くのも既に6カ月後で記憶もだいぶ怪しくなってきていますが、TRONWARE Vol.85&86の記事及び当時(になってしまった)のメモで記憶を補完しながら簡単に記します。(2004.5.8記)


<最初は事前登録から>
   今回からは、参加するのに事前登録する必要があるとのこと。超漢字の基本ブラウザで行うことは出来たが、「登録完了のページを印刷してご来場の際にご提示ください」という Misson Impossible さが・・・基本ブラウザは印刷できないし、そもそも私はプリンターを持っていない。各事務局に問い合わせたところ、印刷できなくても他の方法で確認するから大丈夫という回答をいただいて一安心。今後はこういう方法が増えていくのかね。

  朝は新幹線で行きました。本当は前日夜行バスで行くつもりでしたが、疲れきって寝てしまい、目覚めた時は既に手遅れ、結局、翌日出発になってしまいました。(ああ、夜行チケットが勿体ない・・・)当日は良く晴れていて、新幹線から富士山が綺麗に見えました。東京駅の中央口(なんですかね?)のドームはなかなか宜しい。こういうのは残して欲しいと切に願う。現在の無機的な建築物は私の好まざるものだから。
  東京国際フォーラムの「でかさ」にびっくり。最近はやりの鉄骨を見せた吹き抜けの建築物だけど、私はこういうものには全く感銘を受けない。無機的で冷たくて嫌いな建物だ。建築家の自己満足を見せつけられているようでいやになる。こういう巨大な吹き抜けの建物は膨大な空調負荷を要求し増エネになってしまう、まったく、時代に逆行した建物だ。
  同時期に「人体の不思議展」をやっていた、名古屋でもやっていたやつだ。献体を樹脂で固めてスライスしたものを様々な形でディスプレイしたもので、私も一度見たことがあるが、暫くは肉を食べる気にはならなかった。(内容は非常に興味深いので、機会があったら見てみると良いでしょう。)
    
(写真)左:新幹線から見た富士山、中央左:東京駅ドーム、中央右:東京国際フォーラム、右:人体の不思議展

  TRONSHOW会場へ向かう際に面白いものを見つけた。通路の真ん中で手をたたくと不思議な音が聞こえる・・・というものだ。時間と共に音の高さが高くなるスウィープ・エコーが聴けるという。看板の解説によれば、この廊下を通りがかったNTTの研究者が偶然発見したとのこと。私も試してみたが、なかなかその音が聞こえない。数回トライして、「なるほど」と納得。久しぶりに学生時代に戻った感じ。それにしても大仰な建物である。



<TRONSHOW2004>
 〜ユビキタス、TRONに出会う〜

  いよいよTRONSHOW会場である。それにしても、最終日のTRONSHOWのセッションが午前中のみというのはちょっと早すぎるんでないの。

  やはり注目はT-Cubeか。何故かみかんと一緒に展示されていた。これだけ小さいんですよ・・・ということだろうが、私は「みかん星人」を思い出してしまった。写真を撮影するため色々ポーズを取っていた(遊んでいた)ら、パーソナルメディアの担当社から「鏡もちじゃないんですから・・・」とたしなめられてしまった。まあ、訳の分からない Wintel 脱却の第一歩になることを期待しましょうか。といってもパソコン・ユーザーではなく組込用途でしょうね。

※2004年3月11日に発売のプレスリリースがありました。
http://www.personal-media.co.jp/press/press/040311_teacube.html
超小型T-Engineアプライアンス「Teacube」発売開始

  Mozilla の軽量版であるFirebird(今はFirefoxか)も実演されていた。文字のコピー&ペーストはO.K.だったが画像は駄目の模様。画像もO.K.にして早いところ完成度を高めて配布して頂きたいものだ。(結構切実)

  原稿プロセッサ(何年前かだったも忘れていました)も展示してありましたが、これは文筆家に必要なもので一般ユーザーには関係ない・・・がそれはそれとしていじっていて結構面白かった。詳細は下記を見られるのが宜しかろう。
※2004年4月20日に発売のプレスリリースがありました。
http://www.chokanji.com/press/ckgproc/040420ckgprocpress.html
手書きの良さを取り入れた原稿執筆用ソフト「超漢字原稿プロセッサ」新発売
〜 豊かな表現力を活かせる17万字の多漢字機能と推敲支援機能で執筆活動を支援 〜

  ユビキタス・ショーケースは予約とお金が必要なようだったし、報道陣らしきカメラマンがいたりして、結局ショーケース外側からぐるぐる廻って中を見るだけで終わった。

  T-Engine特別セッション「使ってみようT-Engine」では、T-EngineやT-Cubeをおもちゃにしていかに遊ぶか・・・ということに大の大人が興じているという、これまでのパソコンや組み込みの世界では見られないエンジニアの遊び心が蔓延していました。T-CubeやT-Engineで合体ロボや電子ブロックをやろうとか、パソコン付きACアダプターを作ろうとか。「電子工作」復活のきざしかもしれない。

  まあ、今回は超漢字・BTRONについては取り立てて大きな話題はなさそうである。お次はTEPSの方を・・・



ユビキタス・コンピューティングとイネーブルウェア(Part2)
〜私たちは今、何ができるのか〜」

  こちらは毎年熱気がある。現状をなんとか打破していきたいという情熱が感じられ、こちらも襟を正す思いがする。(ちなみに、TEPSとはTRON Electric Prosthetics Symposium の略で、TRON 電子補綴技術に関するシンポジウムのこと)

  最初は坂村先生の基調講演。ユビキタス・コミュニケーターの紹介と、ユビキタス・コンピューティングの問題点「プライバシー」についても研究を行っていくとの内容が興味を惹いた。


  矢崎創業の植野氏より「ブレイル・トーク」という点字入力端末の紹介があった。昨年度のシTEPSでも見たが、更に完成度を高めたとのこと。点字入力された文は音声で読み上げることも可能で、パソコンとつないで文書のやり取りも出来るからメールも可能とのこと。2004年7月頃の発売を予定しており、利用者の利便を考えてベスト・セラーよりもロング・セラーを狙うとのこと。

  凸版印刷の中林氏からは「ICタグ内蔵視覚障害者誘導ブロックを用いた歩行者ITS」の紹介があり、これはTRONSHOWでも展示されていた。
  
  この後の参加者ディスカッションで、歩行者が持つアンテナ付き杖と点字ブロックとの通信距離がブロックの情報15cm,巾30cmという制限があるということが問題有りと指摘された。実際杖を使って歩く立場からすれば、杖はもっと広い範囲で使うのでその通信範囲では実用にならないという意見が会場から出た。これは今後改善すべきことであり、メーカーと利用者との意見交換がこのTEPSの目的の一つでもある。どんどん改善してほしい。なお、歩行者の杖に企画も県ごとで違うという意見もあった。何ということだろう。標準化されていないのか・・・

  お次は社会福祉法人日本点字図書館評議員の長谷川氏より、福祉テレサポートのお話。この方のお話はいつも鋭いところを衝いていて実に興味深い。今回も自身の経験より色々と行政に苦言を・・・福祉機器や表示の標準化の荒っぽさに怒っておられた。JISでは通路もトイレも同じ種類の点字ブロックが使われるが、場所が分かるようなブロックの種類を定めるべきだとのご意見。これは点字ブロックに限らず福祉行政全てに言えることだそうで、一番の原因は実際の利用者である障害者の意見をしっかり取り入れていないから・・・ということだそうな。
  最近のカメラ付き携帯電話を利用して、利用者が携帯電話で映したものを離れたところにいるサポーターが見てそれを利用者にガイドする「テレサポート(Tele-Support)」を積極的に福祉に利用する「福祉テレサポート技術」への拡大について熱っぽく語っておられた。しかし、クリアすべき問題点も多いとのこと。携帯電話で何気なく映される人の「肖像権」はどうするかとか・・・。利用者の安全(交通量の多いところでは危険)も配慮する必要がある・・・等など。

  有限会社サイパックの工藤取締役社長からは「文字放送、クローズドキャプションからの文字情報の取り出しとスピーチサーバーの開発」について。4年ほど前から視覚障害関係の仕事をされているとのこと。テレビの文字放送のチューナーから文字情報を取り出し、そのデーターを元に音声化するサーバーについて発表された。開発でも最も困難だったのは、チューナーから出力されるデータが非公開のため、チューナーのシリアル出力を解析することだったそうな。USB等のインター・フェースではそれすらも困難だろうということで、今後はチューナー・メーカーとの密接な協力が欠かせないとのこと。正直、これは商売にならないがこの一連の開発行為で文字放送機器の標準化に一役買えれば・・・という抱負を語っていた。

  最後のお話は「聴覚障害者はユビキタス・コンピューティングに何を期待するか?」これは筑波技術短期大学の長谷川助教授より。この方も情熱的に聴覚障害者がおかれた立場・状況とそれを如何に解決して欲しいかということを語った。「聴覚障害者は日本中何処へでもいけるが、どこも言葉の通じない『外国』に等しい」というのは言われてみないと分からないものだ。音が全く聴こえない人は車の免許を取ることも出来ない。「聴覚障害者が安全に車を運転する仕組みを作ことは、窓を閉めてカーラジオを聴いている人の安全対策としても有効である。」とは眼から鱗が落ちるような視点だ。また、火災等非常時の通報も現状はベル等の音響主導の方法であるが、聴覚障害者でも危険を知らせ非難場所まで安全に誘導するシステムを実現してほしい・・・等々要望が次から次へと・・・。
  この後の出席者のディスカッションで、演劇・ドラマなどの「脚本」「台詞」などの「テキスト情報」を第3者が2次利用することについての「著作権」の厚い壁が利用の大きな障害になっているということを取り上げられた。つまり「字幕」で「芸術を平等に楽しむ権利」と「著作権の保護」が両立していないことが大きな問題であると・・・。これは、福祉テレサポートでも同じような問題があるだろうと指摘された。つまり、いくら善意であってもそれは著作者と出版の利益と衝突する・・・ということだ。
  ボランティアが字幕のないテレビドラマや劇に、字幕用のテキストを起こす(脚本家から脚本をもらうか実際の舞台を見て)のはクリアしなければならない諸条件が多すぎて困難であるという・・・これは「福祉」利用に於いては「著作権」の規定を緩和しなければこれは解決しないだろう。
  氏としては、この問題を解決しない限り前進は無いと、「ドラマか何かの字幕・脚本をテキストとして起こし、紙で配って、それが法律違反と言われれば裁判でも何でもやって世間に訴えたい・・・」とさえ熱っぽく語っていた。と、まあ、実際問題としてはともかく(坂村先生が「まあまあ」と押さえる一幕もあったが・・・)、「義賊」「確信犯」とはこういう人にこそ使う言葉であろうと珍しく感動してしまった。それだけ聴覚障害者の苛立ちも大きいということなのだろう。福祉行政の歩みの遅さに対して。
  ちなみに、坂村先生は「アメリカではクローズド・キャプション法により、テレビ放送には字幕情報の提供とテレビ側にもその標示機能が義務付けられている」と仰った。今の日本の技術でそれが出来ないはずはあるまい。要はやる気の問題だろう。これからのディジタル・テレビへの導入が気になるところだ。標準機能でなければ高いオプション機器となり普及が阻害されてしまうから。

  このあとは会場でパネルディスカッションがあり、やはりこの法律関係・利権関係の問題を如何にクリアすべきかという話題が上がった。会場より、「全世界での標準化を・・・」という提案に対して、坂村先生が「それは無理」と電話の例(まだ世界には電話の無い人が何10万人もおり、そのような国に大して各国の電話会社が熾烈な売り込み合戦を繰り広げているというお話)を交えて興味深い話をされていた。

  なお、シンポジウム会場では手話通訳の方が大活躍していた。これも他のコンピューターショウでは見られませんな。
 

  TEPSが終わると外は暗かった。ライトアップされた植栽はなかなか美しかった。
 

  この後は学生時代の友達と飲み、その夜夜行バスで返るという強行軍で疲れてしまいました。やれやれ。来年はどうしようかな?

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