Tokyo University Digital Museum 3 体感記(2002.2.1)

  2/1(金)に東京大学総合研究博物館主催の Digital Museum 3 を見て来ました。所用で東京へ行った際、半日の余裕があったので東京大学まで足を運んだわけです。(2002年2月11日記)


eTRONカード

  BTRON Club の会員証として eTRONカードが配布され、これがDigital Museum 3 の会場で使用できるとのこと。早速受付でカードを提示して(Digital Museumで使用できるよう)登録してもらう。恐らくeTRONのIDを読み取ってサーバーに登録するのだろう。eTRONカードはこの展示のパンフレット(有料)に付属しているので、それを使う想定になっている。eTRONカードは無くとも、各展示場所にお試し用eTRONカードがあるので問題は無い。ただ、eTRONカードを持っている人は、インターネット環境で自分の見た展示物の一部(絵画等)を見ることが出来るようになっている。


音声ガイダンス

  音声案内(半導体素子に音声案内を吹き込んだものかな?)を無料で貸し出していたのでそれを借りる。展示物の必要箇所で必要な説明を自動的に行ってくれるとのこと。天井に赤外線発光部があり、音声案内本体の受光部がその発光部からの光信号を検知し必要な案内を行ってくれる。


eTRONカードの役割(?)

  受付から少し離れたところに入館者の登録場所があり、そこでさっきの eTRONカードを指定の場所において、この会場での自分のニックネーム・年齢・好み等を登録する。各展示にてこの eTRONカードを提示(といっても指定場所ポンと置くだけ)すると、登録情報から解説の詳細さ(大人向け・子供向け)などを判別してディスプレイから必要な案内が流れる仕組みだ。

  更に、その人が何を見たのか、またその展示に対する感想(フィードバック)等もeTRONカードとディスプレイ(タッチセンサーによるインターフェース)によりサーバーに蓄積される。これにより、入場者が何を見忘れているか等の把握も出来るようになっている。(受付近くの登録場所にて、これまたeTRONカードを提示して確認できる)


ディジタルアーカイブ化の意義

  ディジタルアーカイブ化のそもそもの目的は、「貴重な資料の、展示や移動による傷みや破損等の防止」「鐘等、音を聞く物について何回もカンカン叩くわけには行かない物の音も録音しておけば多くの人に聞いてもらえる」「ディジタル化すれば会場へ足を運ばなくても見聞きすることが出来る」というところだろうと私は思っていたしそれは間違いでは無いのだが、今回足を運んでそれ以外の効用もあることが分かった。

  例えば、貴重な本や絵巻物について。これらは実物が展示されていても、その全てを閲覧することは出来ない。というのも、本は見開き2ページしか見ることが出来ないし(入場者が本をめくることは出来ない)、絵巻物も巻いてある長さ全てを展示するということは不可能だ(通常、30〜50cmくらいしか展示出来ない)。しかし、絵巻物や本をその全ての部分をスキャンして取り込み、展示に相応しいインターフェース(本はページめくり、絵巻物はトラックボール等による左右移動)で閲覧できるようになったら、多くの人がそれらの全ての部分に目を通すことが出来る。実際、絵巻物についてそのような展示方法になっており、拡大も容易なので、視力の弱い人でもより見やすく出来る。痛んだ部分はディジタル修復すれば良い。

  本についても、検索機能を付加すれば実際の本以上の機能性を持たせることが出来る。(既に、超漢字4(3)用のソフトウェアにて実現されている)

  実物と複製(レプリカ)とディジタルアーカイブを柔軟に適材適所で使い分けることで、近所の人も遠方の人もさまざまな形で貴重な文化に触れることが出来るということは素晴らしいことだ。これに Enableware が融合すれば、健常者・障害者 の垣根無しに誰でも文化に触れることが出来る。


ディジタルアーカイブ化と扱う古今の文字について

  古代の文字(甲骨文字等)と、それらの文字を表現できる超漢字の展示(デモンストレーション?)がありました。これは、超漢字ユーザーとしてはうれしいところ。この展示に限らず、各展示の端末は超漢字4で動いている物が殆どでしたが、まだ不安定な部分があるようで20台程度の端末のうち2台くらいハングアップしていました。(いけませんね、Windows じゃないんだから・・・)基本ブラウザがキオスクモードで活躍していました。

  現在のコンピューターはアルファベット文字の国で開発されたものであり、それ以外の文字はホントにひと括りに「それ以外」として扱われてしまう。現在のUnix,Windows,Mac等のコンピューターが扱える文字数では、明治時代から昭和初期の文学作品でさえまともに扱うことは出来ない。要は、使い物にならないということだ。

  中国の書記長であった小平や明治の文豪の森外という文字すら満足に出すことも出来ない。(このページを見られている皆さんの端末では、はビットマップ画像で表示されていると思います)文字は文化そのものであり、これがコンピューターに載ってこなければ、これら昔の文学作品は完全にお蔵入りになってしまう。Alphabet や 漢字のみならず 世界中の全ての文字が障壁無しに流通できるシステムの実現を期待したい。

  私は、Globalization と言う言葉が大っ嫌いで、これは Alphabetzation とか Englishzation とか Americanization とか Capitalization とか Unification とかの誤用と思う。この言葉を聞く度に虫ずがはしる。ちなみに、これの最も愚劣な一例が日本でのお金の桁の扱いだと思う。日本の万進法に欧米の千進法をチャンポンにした訳の分からない表記のやり方である。私は未だに、\10,000,000 とか 200千円 と書かれた表記を見てそれがいくらの金額を表しているかを判別することが出来ない馬鹿者である。右から、千・万・十万・百万・一千万と数えないと分からない。万進法の数え方なら、\10,000,000 では無く \1000,0000 と書くべきではないか。これなら一発で 「一千万円」と読める。 \1,0000,0000 なら「一億円」である。実に単純明解。200千円 は 20万円と書いて欲しい。「にひゃくせんえん」って何? え、Globalization で万進法を排して千進法にする?それは勘弁してください・・・

  それはさておき、超漢字では飛躍的に扱える文字が増えたといっても、周辺環境はかくの如しだし、超漢字も色々と問題がありこれで文字問題が解決した訳ではないが、それでも超漢字とTRON Project に大いに期待したい。少なくとも、文字のUnification と言う解決方法ではなく、全ての文字にコードを割り振って扱うという TRON の思想に私は賛成する。


展示内容について

  江戸時代あたりの薬草学(木草学だったかな?)の展示(実物本やディジタルアーカイブによる)や、日本の歴史上の人物肖像画を10数台に及ぶ50インチのプラズマディスプレイにより映し出したりといった展示が印象に残った。外国の文化についての展示(ディジタルアーカイブ中心)もあったと思うがどこの国の物かは覚えていない。

  バーチャルリアリティ(コンピューターの3D迷路(?)に絵画が展示してある)にも展示スペースを割いていたが、個人的にこれは食傷気味。どんな資料があるか、いちいちトラックボールを操作してそこまで(画面上で)進む必要があるし、そこから絵を見る操作も面倒である。まあ、こういうのはアトラクション的な要素として必要なのかもしれないが、展示の本質とは無関係だと思う。

  残念なのは、この展示をインターネット上ではごく一部しか公開していないことだ。少なくともディジタルアーカイブについては、インターネット環境がある場所ならどこでも見れるようにして欲しいものだ。


その他

  会場には、超漢字に関心を持った方や、資料のディジタル化に関心を持った方、あるいはちょっと話の種に・・など様々な人が来ていた。他の博物館や美術館、図書館でもこうしたディジタルアーカイブを活用した展示方法が普及すると良いのだが。


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