Other Philadelphia Orchestra Recordings

  Philadelphia Orchestra の録音ならなんでも取り上げます。また、Philadelphia Orchestra に関連する録音も同様に取り上げていきます。

<Table of Contents>

・「ジャケットの謎の人物」「フィラデルフィア」「未確認飛行物体」・・・
 謎だらけの三位一体アルバム
・R.Strauss : Eine Alpensifonie
・Andre Kostelanetz plays Tchaikovsky
・Andre Kostelanetz 〜Scenarios for Orchestra〜
・Shostakovich : The Dance Album
・Arturo Toscanini The Philadelphia Orchestra Recordings 1941-1942


**************************


「ジャケットの謎の人物」「フィラデルフィア」「未確認飛行物体」・・・
謎だらけの三位一体アルバム

Naxos 8.559165(CD, (P)2004)
Michael Daugherty:Philadelphia Stories, UFO

Marin Alsop/Colorado Symphony Orchestra
Evelyn Glennie(percussion)

 2001年に作曲された「フィラデルフィア物語」は3楽章からなり、「サウス・ストリートの日没」「告げ口ハープ」「ストコフスキーのためのベル」となにやら曰くありげな曲が並ぶ。同年11月15日にデイヴィッド=ジンマン指揮フィラデルフィア管弦楽団により音楽アカデミーにて初演されている。まず第1の謎、何故作曲を依頼し初演したフィラデルフィア管弦楽団ではなく、実力のある女性指揮者として最近話題のマーリン=オルソップとコロラド交響楽団がナクソスにレコーディングしたのか・・・・。
 第2の謎、このジャケットのユニークなおっちゃんは一体何者?このひげ面ナイスガイの謎の微笑は一体何を意味しているのか?
 第3の謎、カップリングの"UFO"、 曲名自体謎である。何故「独奏打楽器とオーケストラ為の協奏曲」がどのような経緯で未確認飛行物体になるのだろうか・・・川口隊長も驚く謎だらけの一品である。この未確認飛行物体が刻まれた未確認ディスクを窓から放ればお手軽に未確認飛行物体になってしまうという訳のわからない世界に突入するのはこの際止めておこう。
 だが、このなぞ解きは拍子抜けするくらい簡単だ。ブックレット最後の写真を見れば謎は一気に氷解する(かもしれない)・・・が、それには尊い犠牲が必要だ。そう、ストラヴィンスキーもびっくり、黄熱病で倒れたあの野口英世博士である。彼を握りしめレコード屋に潜入し、その尊い犠牲を1名差し出せば良い・・・が犠牲者は二人必要かも・・・なぜならこの日本には消費税という、これまた成立した経緯も3%から5%に跳ねあがった理由も今後跳ね上がること間違いなしという理由も全て闇の中という、存在理由も必然性も未確認だらけの悪税が存在するから。その苦難を乗り越えたあなたは、望む回答と盗難防止用ユビキタスタグを手にして家路につくことが出来るかもしれない。そして、そのUCD(未確認コンパクトディスク)をトレイに乗せて再生(re-production)した暁に何が起きるか・・・その答は誰も知らない・・・なんちゃって。

 ま、興味のある方はトライしては如何?失敗してもナクソス価格ですから先物に手を出すよりよっぽど安全ですよ。実に安あがりなミステリーですなあ。猛暑対策にはちょっとヒネリが足りないかな?で、肝心の曲ですか・・・ま、私の駄文より「百読は一聴に如かず」ということで・・・お粗末!(2005.8.6)



R.Strauss : Eine Alpensifonie
 EMI Classics RED LINE 7243 5 74116 2 2 (P)1983 (P)remastering 2000
 R.Strauss : Eine Alpensinfonie, Don Juan(※)
 
 Andre Previn/The Philadelphia Orchestra,Wiener Philharmoniker(※)
 recorded 1983.2.28 at The Old Met,Philadelphia

 初めてシュトラウスのアルプス交響曲を聴いたのは何時のことか忘れてしまったが、FM放送でショルティ/バイエルン放送響の演奏を聴いたのが最初の体験だったことは憶えている。小学生の頃だったかな?その曲の美しさにのめり込んで以来、色々レコードを探したり実演(外山さんが指揮する名フィルの演奏を20程前に聴いたが、レコードとのあまりの落差に落胆し、その後、長い間名フィルを聴くことは無かった)に接したりした。名盤と言われた、ケンペ指揮ドレスデン国立歌劇場管弦楽団のダブル・ジャケットLP(EMI)を買い求め何度聴いたことか・・・これは確かに名盤であり、藁科雅美氏による譜例付きの親切な解説はアルプスの風景まで想起させてくれた。その後も、ハイティンク/アムステルダム・コンセルトヘボウ(PHILIPS)やプレヴィン/ウィーン・フィル(TELARC)のCDも聴いた。何故か、名盤の誉れ高いカラヤン/ベルリン・フィルの演奏は好きになれなかった。

 オーマンディー/フィラデルフィアのコンビによるこの曲の演奏は、残念ながら無いようだ。しかし、プレヴィンが1983年に指揮した録音があり、フィラデルフィア管のファンにとって少しは溜飲が下がる・・・かな?RED LINEという廉価盤なのでお手ごろ価格というのも有り難いが、録音データの詳細は記載されていないのは残念。録音日と録音会場のデータは「続・長岡鉄男のレコード漫談」(1985年、音楽之友社)に記載されていた独EMI 1435771(LP)のデータによる。この当時はEMIは "The New Philadelphia Sound" と銘打ってフィラデルフィア管弦楽団のレコードを発売しており、この録音もその一環と思われる。プレヴィンを起用したのはその新機軸の企画によるものかもしれない。

 ここには「威圧的なフィラデルフィア・サウンド」は無い。「軽快なサウンド」と言って良いほど綺麗な音響に満たされる。オーマンディー/フィラデルフィアのような演奏を期待している向きには物足りないかもしれないが、万全とも言えるオーケストラに支えられて聴く「アルペン・シンフォニー」は格別だ。「終末」のオルガンの音も実に美しい。

 シュトラウスはこの曲を「反キリスト」と呼びたいと言ったそうだ。一般にこの曲は単にアルプスの風景を描写したものととらえられているが、作曲者本人はそれ以外の意図を盛り込んだようだ。「ツァラツストラかく語りき」のような「反キリスト」「自然信仰(という表現が妥当かどうか自信はないが)」と同様の何かを期待していたのかどうか・・・ま、「アルペン・シンフォニー」を聴きながら考えましょうか。(2005.3.26)


Andre Kostelanetz plays Tchaikovsky
  米Columbia ML-4151 (Blue label LP)
  
  Tchaikovsky
   Nutcracker Suite(*), None but the lonely heart Op.6 No.6, Melodie Op42,No.3
   The Sleeping beauty Waltz, Barcarolle from "The Months", Andante Cantabile from String Quartet no.1
   Andre Kostelanetz/His Orchestra(*), Robin Hood Dell Orchestra of Philadelphia

  久々に、入手したLPをクリーニングして聴きました。億劫なもので、GWという長期間の休みになってようやくその気になったというか・・・気温が20度を超えたので、心配なくLPをかけられるということもありますが・・・(気温が低いとカンチ・レバーのサスペンションが固すぎてレコードに損傷を与える恐れがあり、特に、最内周ではビビリ音が顕著になるのでちょっと怖いのです)アメリカから入手したLPは埃だらけでクリーニングに時間がかかるので・・・

  オーマンディ掲示板で話題に上げた "None but the lonely heart"というチャイコフスキーの曲(原曲は「6つの歌」作品番号6の第6曲目)ですが、なんという偶然か、たまたま入手していた Kostelanetz のLPにも収録されていました。しかもオーケストラは Robin Hood Dell Orchestra of Philadelphia です。横田さんによれば、かのシナトラも歌っていた(残念ながら私が持っているCD2枚組のベスト盤には収録されていませんでしたが)ということですから、アメリカでは昔からポピュラーな曲のようですね。

  このアルバムは、彼の楽団(His Orchestra、自身お抱えの楽団かあるいはスタジオ・オーケストラでしょう。演奏はなかなか良い)を指揮した「胡桃割り人形」組曲と Robin Hood Dell を指揮した編曲物(Music of Tchaikovsky)がそれぞれLPの片面に収録されています。

  片面の「胡桃割り人形」は通常の組曲版です。序曲と「花のワルツ」の部分はちゃんと区別できるようにトラック間は送り溝がカッティングされています。デッド気味の録音ですが、若干のエコーも感じられ、耳あたりは悪くなく聴きやすい仕上がりです。快速なマーチにゆったりとした金平糖の踊り、突っ走る「ロシアの踊り」など、緩急を明確に示した演奏です。「花のワルツ」は若干のカットがあります。

  もう片面の Music of Tchaikovsky 、こちらはさらにデッドな録音でエコーが殆ど感じられません。恐らく Academy of Music での収録でしょう。"None but the lonely heart"は最初ゆったりとした弦楽合奏で始まります。Ormandy/Philadelphia が録音したA.Harris編曲版では木管で始まるので、Harrisはきっとこれまでの編曲版を意識して独自の編曲を施したのでしょう。残念ながら、このLPには編曲者の名前は記載されていませんので、誰の編曲かは分かりませんが、Philadelphia のたっぷりとした弦の響きを堪能できる、なかなか楽しめるアルバムです。最後の「アンダンテ・カンタービレ」は「5月の島」(1940)としてポピュラーになっていると「ムード音楽」(浅井英雄著、誠文堂新光社,1979年)に記載されていますが、このアルバムでは単に Andante Cantabile と記載されているだけです。もしかしたら別の編曲があるのかもしれませんが・・・

  なお、philadelphia orchestra の A Cenuty of Music のディスコグラフィーにこのLPの録音の記載はありません。同本によれば、

  ...Earlier in the 78-rpm era, the Orchestra served occasionally as Victor's house orchestra,
 recording as the Victor Symphony Orchestra, mostly with Charles O'Connell accompanying Marian Anderson
 and Richard Crooks in oratorio arias on Red Seal.
     On Columbia 78s and early LPs from both companies, there were also recordings by the Robin Hood Dell
 of Philadelphia, which was not, strictly speaking, the Philadelphia Orchestra, but an ensemble recruited
 largely from its regular members. It made discs under Erich Liensdolf, Dimitri Mitropoulos, Vladimir Golschmann,
 Fritz Reiner, William Steinberg, Antal Dorati, and Andre Kostelanetz. On RCA's now defunct Camden label,
 which had been devoted to LP reissues from 78s, the Philadelphians under Stokowski and Ormandy masqueraded
 as the Warwick Symphony Orchestra, with no conductor listed. Much later, some of Ormandy's concerto recordings
 were ascribed to the Columbia Symphony Orchestra...

「・・・厳密には『フィラデルフィア管弦楽団』とは言えない・・・」とは、オーケストラメンバーに対してエキストラの比率が大きいということでしょうか?そのような理由で、Robin Hood Dell Orchestra of Philadelphia の録音はディスコグラフィから外しているということでしょうか?個人的には Robin Hood Dell Orchestra の録音に興味があるのでちょっと残念です。(2004.5.7)


Andre Kostelanetz 〜Scenarios for Orchestra〜
 米Collectables COL-CD-6800 (P)(C)2001 CD
 
 Kern : Show Boat(1951), Rodgers : South Pacific(arr.Benet, recorded 1951), Slaughter on Tenth Avenue(1951)
  -Andre Kostelanetz conducting The Philadelphia Orchestra Pops
 Gershwin : An American in Paris - Andre Kostelanetz conducting His Orchestra
 Gershwin : Porgy and Bess -  Andre Kostelanetz conducting The Philharmonic-Symphony Orchestra of New York

  最近、Andre Kostelanetz という指揮者に興味を持ち、色々音源を集めています。恐らく、セミ・クラシックやポップスを中心に活躍していた指揮者だと思いますが。このCDはレコ芸の海外盤試聴記で紹介されていたもので、amazon.com より入手しました。この Collectables というレーベルは大手の昔の音源複刻を専門にしているようで、ウェッブサイトwww.oldies.com の名前からもそれが伺えます。
  音源の録音年代は記載されていませんが、1951-1952年でしょう。philadelphia popsの録音については A Century of Music のディスコグラフィに記録があり正確な年代が分かりましたが、その他は不明です。His Orchestra は臨時編成、The Philharmonic-Symphony Orchestra of New York は 恐らくNew York Philharmonic でしょう。
  演奏はどれも素晴らしく、 Kostelanetz の手腕は見事なものです。Philadelphia Orchestra との3曲はこのオーケストラとしては珍しい曲ばかりなのでファンとして一聴の価値があります。Gershwin の 2曲も秀演。リマスタリングはノイズが良く抑えられており聴きやすい。(2002.6.23)



Shostakovich : The Dance Album
  英Decca 452 597-2 (P)1996 (universalclassics)
    Moscow-Cheryomushiki suite from the Operetta (edited by Andrew Cornall, world premiere recording)
    The Bolt suite from the ballet
    The Gadfly excerpts from the film music
  
  Riccardo Chailly/The Philadelphia Orchestra
  Erez Ofer (Concertmaster & Solo violin)
  Produced by Andrew Cornall, recroded Dec 1995

  Riccardo Chailly と Philadelphia Orchestra による Shostakovich の曲集。Chailly は他に Royal Concertgebouw と組んだ Shostakovich の2つのアルバム The film Album(英Decca 460 792-2(C)(P)1999) と The Jazz Album(英Decca 433 702-2) を録音している。Entertainer としての Shostakovich を楽しむのに好適なアルバム。Moscow-Cheryomushiki は producer の Andrew Cornall が編集したスコアを用いており、世界初録音を謳っている。ただ、以前紹介したアルバム(米Sony Classical Essential Classics SBK62642)に収録されていた、断片とはいえ Andre Kostelanets & His Orchestra による "Moskow-Cheryomushki" の1965年録音があるので、厳密に世界初録音といえるかどうかは少々疑問。しかし、そんなことは取るに足らないことであり、アルバムを楽しむのになんら問題はない。Chailly の好バトンと philadelphia orchestra の ヴィルトゥオーソ ぶりを気楽に楽しめる。私が特に好きなのは、Moscow-Cheryomushiki の Galop と The Gadfly の Galop と The market place の3曲。(2002.3.3)



Arturo Toscanini The Philadelphia Orchestra Recordings 1941-1942
  米RCA Victor Gold Seal 60328-2-RG (4CDs) Vol.67-70 (C)1990
   Debussy: La Mer,Iberia, Repighi:Feste Romane, Tchaikovsky: Pathetique Symphony, R.Strauss: Tod und Verklarung
   Schubert: "The Great" Symphony , Mendelssohn: Incidential Music to "A Midsummer Night's Dream"
   Belioz: Scherzo from "Romeo & Juliet"
  
  Arturo Toscanini/The Philadelphia Orchestra

    1957年(45年前)の一昨日(1/16)は Maestro Toscanini の命日ということで、彼の philadelphia recordings を。
  Stokowski が philadelphia orchestra を辞任しその後の全米交響楽団との仕事も終わり NBC SO. の共同指揮者として招かれた(わずか1シーズンで終わったそうですが)その頃の録音です。経緯はともかく、歴史的にも貴重な録音と言えるでしょう。
  全部は聴いていませんが、「ローマの祭り」は彼の NBC との録音には及ばないと思います。「真夏の夜の夢」は夢も覚めるような快速テンポで颯爽と進みます。ここらへんはやはり Toscanini というところでしょうか。(2002.1.18)


End of Page.