お気に入り

コーナーを一つ作るほどではないけど、放っておけないお気に入りのディスクのご紹介。

その1

<Table of Contents>

・Living Scat Featuring KAYO ISYU.
・BENJAMIN BRITTEN:WAR REQUIEM
・BEYOND THE SUN -An Electronic Portrait of Holst's "THE PLANETS"


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Living Scat Featuring KAYO ISYU.
 Solid neostandards CDSOL-1080
 

「アルプスの少女ハイジ」「ルパン三世」「パネルクイズアタック25」「霊感ヤマカン第6感」「クイズタイムショック」・・・まさに Queen of Scat、いや、Queen of Vocalies か? ハっとさせられる印象的なテーマ音楽を支えてきた彼女の声のエッセンスを集めたCDである。有名なネスカフェのダバダ〜(「めざめ」という曲だそうな)のロング・バージョンが入っているので、ダバダ〜を心ゆくまで楽しめてしまう逸品である。

 ネスカフェと指揮棒を傍らに「めざめ」をかければ、気分はマエストロ「男!岩城」になれること請け合いである。ついでに、ベートーベンのシンフォニー(何番でも良い)のミニチュア・スコアを揃えれば完璧。実質が伴わなくても雰囲気だけで良いのである。これであなたも「違いが分かる男」になれる・・・かも・・・え、女はどうするって?・・・オレ男だから知らんよ。(2008.8.21)


BENJAMIN BRITTEN:WAR REQUIEM
英DECCA SET252/3(LP)
  Benjamin Britten : War Requiem
   Words from Missa pro Defunctis sung in Latin, Poems by Wilfred Owen
  recorded January, 1963
  
  Galina Vishnevskaya(s), Peter Pears(t), Dietrich Fischer-Dieskau(b)
  The Bach Choir & London Symphony Orchestra Chorus
  Highgate School Choir, Simon Preston(Org.), Melos Ensemble
  Benjamin Britten/London Symphony Orchestra(recorded January, 1963)

 このレコードを手にしてからもう20年経ってしまった。「長岡鉄男の外盤A級セレクション1」(共同通信社 1984)で歴史的名盤の優秀録音と評価されていたので購入したものだが、我ながらミーハーではある。

 "Simple is the Best."を具体化したこのアルバムデザインは秀逸だ。数年前に購入した B&H社のミニチュア・スコアのデザインがこのレコードジャケットそっくりなので、レコードジャケットを真似たのかな?と思いきや、事実はその逆だったと最近知った。
  
 アルバム製作の経緯については、昨年日本語訳が出版された「レコードはまっすぐに "Putting the Record Straight"」(学習研究社 2005)を読んで頂くのが良いだろう。英DECCA のレコーディング・プロデューサーであった John Culshaw の回想録で、これは面白い。お勧めしたい。

 それはともかく、手に入れてから20年後の2006年正月にようやく針を通す気になった。軽々しくBGMで聴ける曲ではないので、その気になるまで気長に待っていたら・・・「3年寝太郎」や「オリンピック男」よりも気の長い話ではある。実はCD(英DECCA 414 383-2)も持っているのだが・・・ヤレヤレ。

 この「戦争鎮魂曲」、第二次世界大戦中ドイツ空軍による爆撃で破壊されたコヴェントリー大聖堂が1962年に再建され、その披露会の為に作曲されたという。大聖堂を破壊したドイツ空軍機は、当時最高の電子技術であった電波誘導航法により海を越えて正確に誘導され、その「目的」を果たした。一方、潜水艦の音を聞き分けるために開発された音響技術を転用した英DECCAのffrr(full frequency range recording)により、この「戦争鎮魂曲」がレコーディングされるとは・・・とことん「戦争」に縁のある作品だ。(これはこじつけだが)

 ブリテンと言えば、1940年、時の日本政府より皇紀2600年記念の慶祝曲を依頼されている。R.シュトラウス、J.イベール 等も同様に依頼を受けている。それで出来た曲が「鎮魂交響曲」"Sinfonia da Requiem" 。結局、紀元2600年奉祝会では演奏されなかったそうな。「縁起でもない」と突っ返されたのかはともかく、西暦2006年現在(皇紀なら2666年か)から過去を振り返ってみれば実に興味深い。ブリテンの真意が奈辺にあったのかが気になるが、1945年の大日本帝国滅亡を予言したと考えるのはワイドショー的発想と言うものだろう。この曲はそんなくだらない出来事で評価されるべきではない。日本の敗戦日でもウォール街は通常どおり取引が行われている。ライブドア騒動で証券取引機能が麻痺する日本とは違うのだ。日本の敗戦などアメリカのビジネスにとって日本の敗戦とはその程度のことに過ぎない。

 とまあ、紆余曲折(?)を経て、正月にゆっくりスコアを眺めながらようやく耳に届いたこの曲・・・。実に込み入った構成で、1回聴いただけではその真価は分かりそうにもない。まだまだ聴き込む必要がある・・・が、"I am the enemy you killed, my friend....."のソロから "In Paradisum ..." のコーラスで曲を閉じるまでの感動は何と言い表して良いのやら・・・私の拙い文章ではとても書けない。正に、名曲・名演・名録音の三拍子がそろった歴史的な名盤と言って良いと思う。スコアを眺めながら聴いて頂きたい曲なのだ。(2006.1.28)



BEYOND THE SUN -An Electronic Portrait of Holst's "THE PLANETS"
米Mercury Golden Imports SRI80000 (LP, (P)(C)1976)

Patric Gleeson,Eu Polyphonic Synthesizer
Additional Performances by Julian Priester

 シンセサイザーによる「惑星」はTOMITA以外にもある・・・と何かの記事で読んで探し当てたのがこの盤。確か、秋葉原の石丸電気レコード売り場で見つけたような記憶が・・・。で、期待して聴いたのだが・・・。率直に言って「オモロナイ」、これに尽きる。「惑星」のスコアを忠実にシンセサイザーで演奏しました・・・という感じなんだけど、だったらオーケストラの演奏の方が面白い。残念ながら、このシンセサイザーの演奏は音色もオーケストラの作り出すそれに及ばない。努力は認めるけど、結果は残酷だ。"TOMITA PLANETS"を先に聴いているからこういう辛辣な感想になるのかもしれないけど、要は「シンセサイザーでなければ出来ないこと」を音化しなければそれをする意味が無いということ。オーケストラの演奏の方が魅力的であればわざわざシンセサイザーなんか使う必要は無いのだから。それなりに音の遊びとかも入れているけど、それも徹底しきれておらず中途半端なのだ。とはいえ、シンセサイザー演奏の「創世記」の演奏だから、これはこれで貴重な物かもしれないが。(2005.8.28)



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