James Levine & The Philadelphia Orchestra

 James Levine が Philadelphia Orchestra を振ったアルバムをご紹介。


<Table of Contents>

・フィラデルフィア管弦楽団の妖しいまでの弦の美しさが際だつマーラーの9番
・フィラデルフィア管弦楽団の高度なアンサンブルによる鮮烈なマーラーの5番


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フィラデルフィア管弦楽団の妖しいまでの弦の美しさが際だつマーラーの9番
  米RCA RCD2-3461 (C)1979 (also available on 日BMG Funhouse/RCA BVCC-38137〜8 (C)2001)
  Mahler : Symphony no.9 (recorded 1979)
  
  James Levine/The Philadelphia Orchestra

  Mahler の最高傑作とも言える9番交響曲には数多の名盤があるが、個人的にはこの演奏をベストとしたい。特に4楽章の弦の美しさは筆舌に尽くしがたい。弦ばかりでなく、全ての楽器が最上の音質とバランスをもって鳴り響いている。この演奏についても吉田秀和氏の批評の一部を紹介したいと思います。
  「・・・ここで素晴らしいのは、その音が、レヴァインが作曲者の指示、指定を厳しく最も忠実に守りながら演奏を進めているところから生まれていることである。彼は《無骨に、粗野に》とあれば、それに従い、《息絶えんばかりに》とあればほとんど死なんばかりの響きとなる。その他、管楽器の音の出る際の摩擦音から、弦楽器の弓使いの変化等々に至るまで、マーラーが望んだ全てを、総力を上げて、実現するのに努めている。其処には、一種の『やるせなさの限りのなげやり』といったものにさえ欠けていない。その結果どうなったか?  驚くべき音楽が鳴り出した。単純から複雑に至る変化の未聞の豊かさもさることながら、音の極限に到達したことにより、ついに音をつきぬけ、もうひとつ上の、音を超えた世界を予感さすところまできた音楽が、である。・・・」(音楽展望1980.11.21 より)
  Met で忙しい Levine が ormandy の 後任として philadelphia の music director になる可能性はほとんど無かったとはいえ、もしそうなったら・・・と考えずにはいられませんね。(2001.11.17)


フィラデルフィア管弦楽団の高度なアンサンブルによる鮮烈なマーラーの5番
  日BMG Victor/RCA New Best 100 BVCC-9364 (P)1994 (also available on 日BMG Funhouse/RCA BVCC-38136 (C)2001)
  独RCA Red Seal RL02905 (P)1978 with Adagio from Symphony no.10, (2LP's)
  Mahler : Symphony no.5 (recorded 1977)
  
  James Levine/The Philadelphia Orchestra

  Mahler の音楽はオーケストラに高度な技術を要求する。この5番交響曲もその1曲だが、philadelphia orchestra の高度なアンサンブルは作曲者と指揮者の要求に応えてこの複雑なスコアを見事に音化している。楽天的とさえ思える程透明で明るくそして力強いこの演奏を聴くと、正直、これ以上の完璧なアンサンブルは望めないのではないかとさえ思えてくる。この演奏については吉田秀和氏が、なるほど、と思わせる批評をしているのでその一部を紹介したいと思います。
  「・・・各部の響きの調和のよくとれたバランス、すべての声部が驚くべき明確さで聴こえてくるが、それは外面的、図式的に分離が良いというのと違って、それらの声部の一つ一つから、それぞれに与えられた音楽が聴こえてくるのである。・・・レヴァインは我慢できないほど込み入っていて、音の団子のような鈍い響きになりがちな箇所でさえ、辛抱強く、そのもつれた声部の糸の動きを一つ一つ拾いながら、それを切り捨てず再現しようとしている。・・・私はもしマーラーがこれを聴いたら『この男は私を理解した。私の一見複雑に絡み合ったスコアも、要するに自分の考えをできるだけ正確に伝えようとしたところから来たのであり、この指揮者は私のスコアに何かを付け加えようというのではなくて、それを正確に読み解すことに全力を尽くしたのだ』と言ったろうと思う。・・・」(音楽展望1979.7.19より)
  今年になって、BMG Funhouse より Levineの Mahler の交響曲集(1・6番(London SO), 3・4・7番(Chicago SO), 5・9・10番(Philadelphia) )がまとめて再発売されたので入手は容易です。RCA Red Seal のセールスとしては成功しなかったこれらの名演奏、聴いて損は無いでしょう。特に、philadelphia との録音は聞き逃せません。(2001.11.15)



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