Symphonie Concertante,
Music of Joseph Jongen

  ベルギーの作曲家、Joseph Jongen(1873-1953) が残した最高(と私が勝手に思っている)傑作が Symphonie Concertante(協奏交響曲)であり、Organ と Orchestra がこれ程見事に融合した作品は他に無いでしょう。しかし何故か知る人のみ知るという知名度の低さに甘んじています。実演で聴いてみたいのですが残念ながらその可能性はゼロに近いのです。
 でも幸いなことにCDは4種類出ており、ほぼ理想に近い(と私が勝手に思っている)演奏も出ているので、それらをご紹介しましょう。また、Jongen の他の作品も順次紹介していきたいと思います。


華麗なるOrganとOrchestraの融合、Symphony Concertante

  米Dorian DOR-90200 (P)(C)1994
      Saint-Saens: Symphony no.3
      Jean Guillou(org), Eduardo Mata/Dallas Symphony Orchestra
      The Lay Family Concert Organ, The Meyerson Symphony Center, Dallas, Texas
  独Koch Schwann CD 315 012 G1 (C)1991 (Musique en Wallonie)
      Symphony Concertante (P)1975
      Hubert Schoonbroodt(org), Rene Defossez/Orchestre Symphonique de Liege(recorded:Institute Lemmens Louvain)
      Suite Op.48 and Allegro appassionato Op.79 (P)1985
  EMI Matrix2 CDM 5 65075 2 (C)1994
      Symphony Concertante
      Virgil Fox(org), Georges Pretre/Orchestre du Theatre National de l'Opera (Les Invalides,Paris (P)1961)
      De Greef: Piano Concerto no.1
  米Telarc CD-90096(P)(C)1984
      Franck: Fantaisie in A,Pastorale
      Micheal Murray(org), Edo de Waart/San Francisico Symphony
      The Ruffatti Organ in Davis Symphony Hall, San Francisico
  米Direct-To-Tape Recording Company DTR8804CD (P)(C)1989
      F.Poulenc : Concerto in G for Organ, String & Timpani
      Joseph Primavera/Philadelphia Youth Orchestra, B.Schltz & D. Meredith (org)
  番外 日Columbia/LaserLight COCO-78093 (P)1990, LP (米Crystal Clear CCS 7001, Direct Cutting Disc)
      Virgil Fox, The Fox Touch
      Toccata from Symphony Concertante, etc
      Virgil Fox(org), The Ruffatti Organ of Garden Grove Community Church
            

 オーケストラとオルガンの為の最も有名な曲はサン=サーンスの交響曲第3番。なんてったって「オルガン交響曲」というあだ名があるくらいだから。とはいえ、オルガンが登場する部分は実は半分にも満たない。どちらかというと香辛料的な使い方で、極端なことを言えばオルガン無しでもとりあえず音楽にはなる。
 しかし、このヨンゲンの「協奏交響曲」では、オルガンは単なるアクセントではなくオーケストラと対等な役割を担っている。ある時はソロ、またある時はオーケストラの一楽器として振る舞い、30分以上絶え間なく演奏される。オルガンは曲を構成する重要な担い手としてオーケストラと見事に融合しており、これ無しで曲は成立しない。
  この曲は優美で力強く色彩感に富んでおりかつ親しみやすい。堂々たる第1楽章、何故か中華風の旋律に聴こえる場面もある軽快かつ優美な第2楽章、神秘主義的な第3楽章、そして華々しい第4楽章等々、全てが聴き所といえる希有な曲だと思う。オルガン愛好家には見逃せない旋律美に溢れている。

  さて、CDのお勧めだが、Guillou, Mata/Dallas Symphony のDorian盤 を第一に取り上げたい。Guillou のオルガンはずば抜けて素晴らしい演奏であり、ストップの使い方・フレージング・アーティキュレーション どれをとっても第1級だ。この人はただ者ではない。Mata/Dallas Symphony のサポートも好演。Mata は自家用機の事故で亡くなってしまったが、これからの人だったので実に惜しい。録音もずば抜けて優れており、ボリュームを上げると部屋をガタガタ揺さぶる。音響的快感を求める人にも自信を持ってお勧め出来る。第4楽章は史上最速で、Guillou のスピードにオケがやっとこさ追いついていっているという状況がわかり、聞いていて手に汗握る。さすがにここは完璧にリズムをあわせるレベルまでは到達できなかったようだが、其処まで求めるのは酷かな?

  フランス的な優美さにおいては、Schoonbroodt(org), Defossez/Orchestre Symphonique de Liege のKoch Schwann盤がずば抜けている。ただ録音が古く、板起こし(LPからのダビング)と思われるところもあり欠点も多い。びっくりするのは、ピッチが異様に高いことで半音近く高いのではないだろうか。また、オーケストラの楽器の音が独特で、妙な色気さえ感じる。このリージェのオケの特徴なのか録音の具合なのか判別しがたいが、一種独特の味がある演奏で見過ごせない。

  Fox と Pretre のEMI盤は攻撃的な演奏で、Foxもガンガンオルガンを鳴らす。Guillou 盤がなければこの盤をイチオシにしていたかも知れない。録音は悪いけど演奏は良い。Fox の オルガンの音はとても賑やかで、他の録音や演奏で違うオルガンを弾いても似たような音を出しているので、かなり自分好みのストップの使い方をしていると思う。

  Murray と Waart の盤は悪くはないけど、上記3枚の演奏と比べると聴き劣りしてしまう。といっても曲の魅力は十分味わえると思うし録音も優秀。一番入手が容易な盤だと思う。CD出始めの頃はLP以外この盤が唯一の演奏であり、私が初めてこの曲に触れた演奏でもあるので少し思い入れもある。

  変わり種として、philadelphia youth orchestra盤を。学生オーケストラの演奏であり、安全運転のゆったりした演奏。これはこれでなかなか良い。音はオフマイクで鮮烈さより穏やかさが勝っており聴きやすく、フワっとした雰囲気もある。

  番外として、Fox が オルガンソロでトッカータ(4楽章)のみを入れたディスクを。元々、アメリカのCrystal Clear という会社が、ダイレクト・カッティング・ディスク(念のため:マイクから拾った音を直接ラッカー盤に刻むことで、High Fidelity を実現する録音方法)で出していたものをCD化したもの。セッション時にディジタルテープを回していたか、ラッカー盤からディジタルマスターを制作したかは定かではないが、録音は優秀。オルガンの録音にありがちなフラッター・エコーや低音域の共鳴が無く非常にクリアなオルガンの音が聴ける。ただ、ヨーロッパの教会のオルガンのような音では無い。
  実は、この曲に初めて触れたのがこの演奏であり、この時は全4楽章の曲とは知らなかった。トッカータのオルガンパートのみを聴くことが出来る、考えようによっては珍しい録音かもしれない。(2001.10.14記、2001.10.28及び2005.8.6追記修正)


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