He is Always right and correct man.
George Szell

  

  Cleveland Orchestra を世界一流のアンサンブルに作り上げた厳格な指揮者、Geroge Szell(1897-1970) の演奏を取り上げます。(Geroge Szell Links)


Disc Review

希代のメロディーメーカーの傑作を完璧なアンサンブルで
  米Sony Classical Essential Classics SBK48161(C)1963
  Dvok: Slavonic Dances Op.46 & Op72 (recorded 1963-1965)
  
  Geroge Szell/Cleveland Orchestra

  Geroge Szell というと、高潔な音楽家であり音楽の専門家(同業者)や評論家の評価が高いというイメージがあり、かくいう私も少々彼の演奏を敬遠していたふしがあります。評論家の評価が低い(特に日本での)ormandy/philadelphia とは対照的といえば対照的かもしれません。
  それはともかくとして、このドヴォルザークのスラヴ舞曲のCDは名曲・名演奏だと思います。ブラームスのハンガリー舞曲はちょっと堅苦しいところがありますが、ドヴォルザークのスラヴ舞曲はそういうところが無く実にのびのびと美しいメロディーを聞かせてくれます。8番交響曲の3楽章といい、こういうメロディーを書かせたら右に出る人はいないんじゃないだろうかと思わせます。この曲はこれまで、Jrvi/Scottish National Orchestra(英Chandos 8406)で満足して聞いていましたが、Szell/Cleveland を聞いてどちらの盤も気に入ってしまいました。元気の良さでJrvi盤、アンサンブルの精度と語り口のうまさで Szell盤というところでしょうか。Jrvi盤に対して、金管に対する手綱が厳しくなった一方で弦の音が前面に出てくるといった印象であり、Jrvi盤で聞こえなかった細部までが明瞭に聞こえてきます。かといって精密分析型の演奏というわけでもなく、これが暖かみのある演奏だから不思議なものです。Szell は堅苦しそうでちょっと・・・という方はこのCDから聞き始めてみては如何でしょうか?
  ところで、米Sony Classical の Essential Classics Series ですが、ジャケットレイアウトを一新して番号を変えてこれ迄 Essential Classics にて発売された音源を再(再々?)発売しているようです。このスラブ舞曲集もそのようです。詳細は Sony Classical の Discography をどうぞ。(2002.2.11)


恐らく「君が代」の録音史上最高演奏、Rehearsal in OSAKA 1970
  日Sony Classical XBDR91021 (P)(C)2000(8cm CD,非売品)
  1970年5月15日 大阪フェスティバルホールにおけるリハーサル
  セルのコメント、君が代、アメリカ国歌、セルのコメント
  
  Geroge Szell/The Cleveland Orchestra

  一昨年の2000年に発売された George Szell 没後30周年記念盤の特典CD。こんな録音が残っていたとは、しかも良質なステレオで。私事で恐縮ですが、私は1969年12月の生まれでこの時は1歳にも満たない赤ん坊な訳で、生まれるのが遅かったのを悔やむのみです・・・。
  それはさておき、この時はちょっとしたハプニングがあったらしく、当初は国歌(アメリカと日本)の演奏は必要ないということだったが、やはり必要ということで、急遽演奏することになった。「君が代」の楽譜はあるがアメリカ国歌の楽譜は無い。しかしMaestro 曰く「・・・しかし、皆さんのことですから、『変ロ』で、と言われれば、たちどころに演奏できると信じています。それも旋律だけではなくハーモニーもつけて。・・・」
  それからしばらくやり取りがあった後「君が代」が演奏されるわけですが・・・私は初めて「君が代」を聞いて感動してしまいました。なんという美しさ。ホンマにこれが初見演奏かと耳を疑ってしまった。「君が代」が難しい曲ではないにしろ、いきなりこんな音が出てくるのか・・・均一で見事にブレンドされたサウンド・・・。なるほど、Szell が、

  I personally like complete homogeneity of sound, phrasing and articulation within each section,
and then - when the ensemble is perfect - the proper balance between sections plus complete flexibility
- so that in each movement one or more principle voice can be accompained by others. To put it simply:
The most sensitive ensemble playing.

と語ったのはこういうことかと一発で納得してしまった。お次のアメリカ国歌も全く破錠することなくさらっと通してしまった。何度も演奏している曲といっても、いきなり「変ロで」だけの指示で演奏してしまうとは・・・。やっぱり生まれるのが遅すぎたかな・・・。

  余談になりますが、この時オーケストラの団員として来日ツアーに同行されたヴァイオリニストの方とひょんなことからメールのやりとりをしました。ちょうど記念盤(Live in Tokyo 1970、他)とこの特典盤を入手したばかりの時であり、「今日本でこんなCDが発売されていますけど、どうですか?」と尋ねたら、「是非、送って欲しい」とのことで、早速購入して航空便で送ってあげました。大層喜んで頂けたようで、送った甲斐があったというものです。こちらも、入手困難なLPをCD-Rに焼いて頂いたばかりかご自身の演奏(商業CDとして発売されているものや放送録音からCD-R に焼いた物等)まで一緒に送っていただきました。(しかし、この時ほど自身の英語力の無さを残念に思ったことはありませんでした)その後、この方とメールのやり取りはありませんが、全く接点のない筈のアメリカのヴァイオリニストと日本の単なる音楽好きがこういうやり取りをするというのは、インターネットならではのことかもしれません。(2002.2.11)

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