円盤干支せとら - 1

レコーディングやディスクに関するエッセイ(?)です。

《項目》

・Technics SL-1700 復活顛末記(2005.8.28)
・VICTOR電蓄 復活顛末記(2005.8.28)
・Copy Controlled CDについて(2003.11.22)
・アナログ・プレーヤー顛末記(2003.11.12, 2005.8.28追記修正)
・アナログディスクプレーヤー選手交代(2003.10.13, 2005.8.28追記修正)
・オーディオ遍歴(2003.10.13, 2005.8.28追記修正)
・録音の魔術(2003.7.6)
・CDにピッチコントローラー(スピードコントローラー)が欲しい。(2001.10.20)
・CDへのRemasteringについて(2001.9.15, 2005.8.28追記修正)
・SACDとDVDオーディオについて(2001.9.15, 2005.8.28追記修正)


《内容》


Technics SL-1700 復活顛末記(2005.8.28)

 VICTOR電蓄復活の余勢(?)をかって、数年前に選手交代して休眠させていたTechnics SL-1700 も復活させることにした。まず、このプレーヤー用に気軽に使えるカートリッジを1台用意することにした。Audio Technica AT-10G がシェル付きで\5000前後なので、まずこれを候補にした。赤色シェルと赤色ボディの交換針付きの Audio Technica AT-10G RD を持っているので、今回は RD でないほうを購入する。こちらは黒色シェルと緑ボディの交換針付という以外は同じスペックのはず。

  ←Audio Technica AT-10G

 フリーマーケットでプレーヤーを購入したときに付いていたカートリッジも針交換すれば十分使えそうなので調べてみた。Googleで調べると、パナソニックのホームページの簡単な紹介が引っかかった。(Panasonic単品コンポページ内にSL-1700の簡単な紹介がある)どうやら、標準の付属カートリッジは Technics EPC-270C というモデルらしい。プレーヤーにもそれ用の交換針型番(丸と楕円の2種)が表示されている。しかし、実際付いているカートリッジの交換針のモールドには「207C」と示されている。どうもおかしい。

  ←購入時に付いていた正体不明(だった)のカートリッジ

 カートリッジをシェルから外して標示を確認すると、全く別物の「Technics EPC-207C」というカートリッジであることが分かった。これは楕円針が標準だ。Googleで色々調べてみると、BORONさんという人がこのカートリッジについてかなり詳しい情報を記載されていた。(Technics EPC-270Cの情報もありました)どうやら、前の持ち主が別のカートリッジに取り替えていたようだ。とにかく不明カートリッジの正体(?)が判明したので、ナガオカトレーディングとA'pis Japanの両方で互換針を調べると、両方ともカタログにあるようだ。A'pis Japanの方が若干安かったのでこちらで注文するすることにした。営業日で2日で届いた。相変わらず早い対応だ。しかし、届いた品物を見て面食らった。針はケース台座に両面テープのみで固定されていたのだった。

  ←交換針の固定はケース台座の両面テープのみ。まあ、余程のことがなければ問題ないだろうが・・・

 テープから取れたら針は運送途中で恐らく破損してしまうだろう。少なくとも、メーカー純正品やナガオカの交換針ならなんらかの形で物理的な固定をするものだが・・・。ま、幸運(?)にも交換針ははがれず破損も無かったので一安心。交換針は軽いから余程のことがなければこれでも大丈夫なのだろう。交換針は問題なく使えたが、交換針のモールド前面の「Technics EPC-207C」という文字が無くなり黒一色の無愛想な面構えになってしまった。仕方がないががちょっと寂しい。
  ←交換針装着

 このカートリッジはどちらかというとロー・コンプライアンス(サスペンションが硬いという意味)タイプで、振幅の大きい溝のトレースは苦手のようだ。しかし、レコードの反りには強いだろうから、状態の悪いレコードでも気楽にかけられそうだ。

 もうひとつ、最近モノラルLPをかけることが多くなったので、この際モノラル専用のカートリッジを物色することにした。大須のオーディオ店で色々探したがしたが、どうやらOrtofon OM D25M というカートリッジがMMタイプで一番安いようだ。というより、MM型では他に選択肢は無く、あとはMC型になってしまうようだ。まあ、これが一番安いということで購入することにした。ヘッドシェルは予備があるのでカートリッジ本体のみを購入。

  ←Ortofon OM D25M

 OMシリーズはモノラルLP用とSP用の二種があり、不思議なことに、適正針圧はLP用が4gでSP用が2gになっている。逆じゃないかと思ってOrtofonのサイトで技術資料を確認しても同様な記載であった。4gとなるとバランスウェイトのメモリも3gだし、インサイド・フォース・キャンセラーも同じく3gまでしか対応していない。まあ、3g〜5gで推奨4gだから3gで使えば良いのだが、どうも納得しがたい・・・。カンチレバーはかなり太めで、モノラルLP用ということでロー・コンプライアンスタイプだ。とりあえず4gで演奏してみたが、カンチレバーは殆ど押し込まれなかった。

 あとは、フォノ・イコライザー・アンプを購入するのみ。これも選択肢はあまりない。Audio Technica の AT-PEQ3 を選ぶ。MMのみ(または高出力MC)の利用だから昇圧用ヘッドアンプは必要ないし。でも、これでもう少しお金を足せば安いプレーヤーが買えてしまう。しかもフォノ・イコライザー付きのが・・・

  ←AT-PEQ3

 おっと、あとは Technics SL-1700 の取扱説明書を入手したい。オーバー・ハングの調整とかは取扱を見ないと分からないから・・・ということでネット上で探したが、Panasonicでは昔の機械のダウンロード・サービスはやっていないようだ・・・が、捨てる神あれば拾う神有り、なんと、The Vinyl Engine というサイトに、英語版ではあるけど Technics SL-1700 の取り扱い説明書のPDFファイルがダウンロード可能になっていた。いやはや、海外のファンには凄い人がいるものである。結局、オーバーハングはプレーヤーに付属している専用の道具がなければ正確なセッティングが出来ないことが分かった。仕方がないので、同じテクニクスのプレーヤーSL-1200MK4に付属しているオーバーハング調整治具で調整を行うことにした。まあ、内周で大きな歪みも無いようだし、とりあえず問題なさそうではある。

  ←Technics SL-1200MK4 のオーバー・ハング調整治具

  ←Technics SL-1700

 ということで、オーディオラックのSL-1200MK4と机上のSL-1700、そして Victor STE-7300M という電蓄の3つのプレーヤーが揃った。ますますアナログLPにのめり込みそうである。



VICTOR電蓄 復活顛末記(2005.8.28)

 何年か前にフリーマーケットで購入した日本VICTOR製の電蓄、実家に持ち込んで数年間、時折帰省した折に聴く程度だったが、折角だから針交換してしっかり使おう・・・という気になった。ということで、お盆休みを利用してレストア(?)することにした。

    
  左:電蓄を上から見たところ,右:全面中央

 電蓄はスピーカー一体型の COMPACT STEREO Model STE-7300M という機種。「2スピードICステレオ」とか「MATRIX 4 CHANNEL SYSTEM」とか時代を感じさせる文字がてんこ盛りである。恐らく1960年代後半から1970年代前半の製品と思われる。4ch は当然マトリックス・スピーカー方式で、一応リアスピーカー用の出力端子もある。

 先ずは針交換である。カートリッジはセラミック型(圧電型)で、恐らくサファイア針がついていると思われる。サファイア針の寿命は20〜40時間と短い。その為、ダイアモンドの交換針(寿命は200〜300時間)もあったようだ。針はフリーマーケット購入時から変えてないので交換することにした。ネットで交換針を扱っているところを探すと色々出てきた。ナガオカトレーディングやらA'pis Japanやら、色々取り扱っているところがあるもんだなと妙に感心した。

   
  左:ピックアップ部分,右:交換針(交換用ドライバとセットなのだ)

 正直、こんな古いセラミック型の交換針があるかな?と思ったが、A'pis Japan で ダイヤモンドの交換針(VICTOR DT-7,サファイア針はST-7)を扱っていた。もちろんメーカー純正品であるわけはなく(作っていないから当たり前)互換針ではあるが、とにかく在庫もあるので、早速ネット経由で注文したら翌日には郵送されてきた。早いもんだ。代金は同封の郵便振替で支払えば良いので便利なもんだ。代金は\1500円+悪税であった。

 しかし、針交換は結構苦労した。あんな小さいのをネジ止めするのだから、MMカートリッジの何倍も難しいぞ、これは。器用でない私はさんざん苦労して交換を済ませた・・・が、何回針を落としたことか・・・。まあ、ダイヤモンド針だからこれで当分は交換することは無いであろう。

 ターンテーブルはEPサイズだが、LPもなんとかかかる。しかし、反りがあると擦れるかもしれない。まあ、「かかれば良い」という程度と心得るのが良いだろう。
   
  左:EP演奏時(VictorのプレーヤーにはVictorのEPが相応しい),右:LP演奏時(ちょっと無理?)

 まあ、音もそれなり出ているが、気になるのはピッチの高さ。規定回転数よりかなり速い。スピード調整が出来ない物かと試行錯誤してみる。ターンテーブルを外すとプーリーとアイドラーが現れる。一応、50Hz,60Hz両方で演奏できるよう、プーリーの軸径が4段階調整出来るようになっている。2極の誘導モーターだから、回転数は電源周波数と負荷の大きさで決まる。となると、微調整は出来そうにないかも・・・・

  ←蓋を開けたところ(ターンテーブルはEPサイズ)

    
  左:ターンテーブルを外したところ,右:スピード切り換えスイッチとターンテーブルを駆動するプーリーとアイドラー

 裏蓋を外して中をのぞいてみる。どうやら、電源のAC100Vがそのまま誘導モーターの砺磁コイルに入っているし、モーターの規格もしっかりとAC100Vと表示されている。これでは調整の余地はない。さらに面白いことに、このモーターの砺磁コイルは増幅器(アンプ)電源のダウントランスの一次コイルも兼ねているようなのだ。アンプ電源用のダウントランスと誘導モーターを一体モノとしてしまうとは!なんというブラヴォーな合理設計&コストダウンの努力であろうか!もちろん、モーターのノイズはしっかりスピーカーから出てくるという余禄(?)もあるのだが・・・

    
  左:内部,右:ダウントランス兼ターンテーブル用モーター

 恐らく、これくらいのピッチの狂いがあってもクレームは無いだろうという見切り(?)なのだろう。それにしても大胆な設計である。

 IC(東芝TA−7118P)のお蔭でアンプ部(写真右上)は実に小さい。圧電カートリッジだからフォノイコライザーが必要ないこともあるが・・・

 さて、この電蓄、いつまで使えるだろうか・・・。



Copy Controlled CDについて(2003.11.22)

  以前コンサートで聴いた、イギリスの若きクラリネット奏者の Julian Bliss のデビューCD(EMI Classics debut 7243 5 85561 2 4があったので購入しようと手に取ると、タワーレコードからの注意書きのステッカーが貼られていた。「コピーコントロールCDにつき・・・・」という内容だ。これが噂のコピーコントロールCDか!実物を見るのは初めてだ。しかし、

「一部のCDプレーヤー、DVDプレーヤーでは再生できない場合もあります」

というのは酷い。確かに、"Compact Disc DIGITAL AUDIO"のあのお馴染みのロゴが無く、CDの規格(確かレッドブックという企画本があったと思うが)から外れたディスクだから、再生の保証は無いということらしいが・・・。

「製造上の不具合以外、交換、返品・換金には応じられません」

という冷たい文句も。(http:/www.emimusic.info)を見れば詳細が分かるのだろうか?こういうのは困るなあ。ノイズを混入して音質をわざと劣化させているという話もあるし。今度の ormandy/philadelphia の第3弾がこのコピーコントロールCDだったら嫌だなあ。

  ということで、ディスクを買ってから最近購入したDVDプレーヤーSUEDE DVD−AE1の取扱説明書の「■再生できるディスク」を読むと・・・小さい字で

※CDの標準規格に準拠していない「コピーコントロールCD」などのディスクについては、再生の状態を保証できません。特殊ディスク再生時にのみ支障をきたす場合は、ディスクの発売元にお問い合わせください。

だって。でも、ディスクの発売元(販売店、注:これはタワーレコードの例)は、

ただし、一部のCDプレーヤー、DVDプレーヤー等では再生できない場合もあります。
・・・
製造工程上の不具合以外、交換、返品・返金には応じられません。

だね・・・・

おい、このたわけども!漫才聞いてるんじゃないぞ!
もし再生できなかったら購入者は泣き寝入りじゃん。ふざけるのもたいがいにしとけ。まったく、お互い不具合時にちゃ〜んと逃げを打っており、購入者に対して

「あなた、承知の上で購入したんでしょ・・・」

お〜い、公正取引委員会はなにをしとるの?JAROも出番でござるよ。「暮らしの手帳」もね。それにしても、Copy Controlled CD Ready Player ってあるのかね。(どなたかご存じですか?)私が購入したディスクがかかったのも、「たまたまうまくかかった」だけの話かね?これからこのたわけディスクが増えてくるのかと思うと頭が痛くなるよ。

  まあ、コピーがCDの売り上げ減少の原因と考えたいのも分からなくは無いけど、ハッキリ言って、

  ・魅力的な商品が無い(お金を出して買いたいほどのものではない)
  ・今、若者はお小遣いを携帯電話につぎ込んでいてCDに廻せない
  ・他に娯楽が山程ある
  ・不況(日本の経済政策は目を覆わんばかりの惨状を呈していますが・・)

という原因の方が大きいと思うんですけどね。1回聴いたらもういいと思う物に数千円は出せないでしょう。聴いて当たりなら嬉しいけど外れもあるし。クラシックならNaxosがあれだけ市場を席捲したのも、あれだけの種類の曲がどれでも千円足らずで購入できるからでしょう。これなら、新しい曲との「未知との遭遇」にお金を出せるというものです。ベートーヴェンの交響曲全集だけで一体何種類CDがあるのか・・・新しい録音によほど売りとなる「何か特別なもの」が無けりゃ売れませんがね。買う方も舌が肥えてきているしね。本当、売る方にとっては厳しい状況なので同情したいところだけど、このコピーコントロールCDだけは・・・ね。



アナログ・プレーヤー顛末記(2003.11.12, 2005.8.28追記修正)

  最近購入したアナログディスクプレーヤーの Technics SL-1200MK4 、色々苦労させられました。これからアナログディスクを聴こうとする人の参考になるかもしれないので・・・ということでその体験記(?)を。

(1)トラブルその1:トーンアームのヘッドシェル取付けコネクタが垂直でなく傾いている

  ※ちょっとわかりにくいでしょうが・・・
かなり左側に傾いているのがお分かり頂けると思います。まあ、このまま再生しても明確に音がバリバリ歪むという訳ではありませんが、目に見えて傾いていていいわけはありません。ステレオレコードは45−45方式でL,Rの音は水平・垂直面に対して45°の角度でカッティングされているのだから、角度は大切なはずなんですがねえ・・・。

  で、購入店に不良品では?と問い合わせたところ、なんと「それは製作精度の範囲内」とのこと。「うっそー」と思いつつ、お店に行って同じ機種や他のプレーヤーをみると、なんとヘッドシェル取付けコネクタ部分が同じように傾いている。横にあった50万円以上の高額プレーヤーもそうだ。交換しても同じように傾いている可能性大ということで、それじゃ返品して交換しても意味が無いということで(面倒なので)交換はしないことにした。「こういうクレームは他にありますか?」と聴くと殆ど無いとのこと。不思議だ・・・。数万円〜数10万、いや数百万にもなるの高額商品を購入してこんな大事なところで文句を言わないなんてどうかしている。それにしても、違うメーカーのプレーヤーまで結構盛大に傾いていたのには驚いた。

  一応、トーンアームのシェル取りつけ部分の下側に調整ねじがあり、それで傾きは調整できるとのことだが、ドライバーをアームの下に入れて回すことが出来るほどトーンアームを上げることは出来ないので実質不可能である。そんなもん「出荷時にきっちり調整しておけよ」と言いたくなった。まったく。

  オーバーハング(ユニバーサル・アーム、S字アームに必要な調整。この機種はオーバーハングを簡単に確認できる治具があり便利)をきっちり合わせても肝心のピックアップ部分が傾いていたら意味無い。回転精度0.00・・・も吹っ飛ぶお粗末さである。(※)

(※)もっとも、レコードの再生にはさらに大問題のスピンドル穴の「公差」「偏芯」(Off-Center)や「反り」があり、いくらプレーヤー側で Quartz Lock で回転精度をコンマ・・・にしてもひどいケースだと船酔いするくらいのピッチ変動が生じてしまう。これは数%の回転変動に相当する。確か、ナカミチが偏芯を自動修正するレコードプレーヤーを販売していたことがあったが、結構なお値段であったと記憶している。これは音楽の再生上非常に大きな問題と思うが、不思議にも私はこの問題を議論したオーディオ記事を見たことが無い。唯一、ピッチの問題を的確に論じていたのは故高城氏くらいではなかったかと思うが。海外プレスのレコードや昔のモノラル盤など大らかなのか盛大に偏芯しており、最内周などは船酔い(?)しそうだ。ピアノやオルガンの再生には致命的な欠陥と言っても良い。

しょうがないので、ヘッドシェル側で対策をする。

Audio Technica ATLH13/OCC というシェル(写真上のタイプ)は首を廻すことが出来るので、この傾きを補正出来る。但し、結構重い(13g)ので、トーンアームに補助ウェイトを付けてバランスを取る必要がある。重いシェルに対応するためバランスウェイトを付加するとトーンアーム全体の重量が増え、レコードの反りに対するアームの追従性は悪くなるが、レコードの溝の動きに対して相対的にカートリッジがしっかり固定されたようになるので、一長一短というところか・・・どっちのメリットが大きいかはなんとも言えない。反りの無い状態の良いレコードならメリットが、反りが多いレコードではデメリットが多くなるだろう。
 このシェルはOCCの太いやつをリード線に使っているので接続が大変。硬いのだ。写真のようにぐいぐいひん曲げないと入らない。もっと柔らかくて細いリード線にして欲しい。音に良い(本当にそうかどうかは個人的には大いに疑問。電気的には?である)のも程度問題である。

  ということで、目出度く傾きは矯正出来た。(左:処置前−>右:処置後)
 −>
このシェルを2個購入して1万の出費。高い・・・・

しかし、トラブルはこれだけではすまなかった・・・・

(2)ハム襲来

  ヘッドホンで聴くと、今まで聞こえなかったハム(電源に起因する基本波60Hz及びその高調波によるノイズ。「ビー」という音でお馴染み。東京以北は50Hzですな)が・・・おかしい。プレーヤーとアンプ間はちゃんとアース線を繋いである。
  
色々調べて見ると、プレーヤー付属のRCAピンケーブル(写真左)のピンのコネクト部分に指を近づけるとハムの音がブーンと大きく聞こえる。何のことはない、ケーブルのコネクタ部分のシールド不良である。まったく、数mVオーダーの信号(MCだとさらにコンマmVオーダー)を扱うレコードプレーヤーにこういうケーブルを付けてもらっては困る。おまけ程度の考えかもしれないが、フォノアンプにカートリッジの発電電圧を電送する大切なパーツじゃないか。ちなみにこれ迄使用していたプレーヤーはケーブル直出しで、コネクタ部分は私が大須のパーツ屋で購入した金めっきの金属コネクタ(せいぜい100円程度のパーツだったと思う、写真右)に付け替えたもので、フルボリュームでもハムなんぞ出なかった。MMカートリッジだったらそれくらいのノイズマージンが取れなければ困る。CDプレーヤーとかチューナーの出力を繋ぐのであれば、出力電圧は2Vと桁違いだしアンプの入力インピーダンスも低いのでこのケーブルで全く問題は無いが、微小電力を扱うカートリッジでこれは困る。

  で、レコードプレーヤーを購入したお店に相談に行く。すると、「フォノ用の専用ケーブルでなければ駄目ですね。でも、高いですよ」という。「参考にそれらのケーブルのカタログが欲しい」というと横にいた店員に指示してカタログを集めてくれた。しかし、そのカタログを持ってきてくれた店員曰く「フォノ専用のケーブルというのは有りません。−正確には、トーンアーム側の出力がRCAピンでは無く特殊形状のコネクタ用の専用ケーブルはある−。RCAピン−ピン接続のケーブルでは通常のオーディオ・ケーブルから選んで頂くことになります」

  「このくそだわけ共が〜〜!言ってることが正反対じゃないか〜〜!!!」

「馬鹿こけ!! nVオーダーの信号を扱う訳じゃないぞ!きっちりシールドが施されて、浮遊容量(Stray Capacitance)が小さいケーブルであればいいのだろうが。たかがmVオーダーの信号を扱うのに、しかも1m程度の短距離伝送でどうしてそういう話になるのだ。ええ加減にしとけよ!!」と心の中で毒づきながら阿呆らしくなり、もらったカタログ(むちゃくちゃ値段の高い製品ばかり)を返して自分で製品を探し始めた。それにしても、たかがオーディオケーブルで2万円〜3万円というとんでもない値段が平気で付いている。どういう世界だ、これは。いくら高級(いや、高額)品で生産量が少ないと言っても物には限度があるだろう。製造原価から考えてもどうしたらこれだけの値段がつくのか実に不思議だ。オーディオケーブル1本分でオペラのS席が取れるよ。尋常じゃないよ、まったく。商売とはいえ酷すぎる。電気の基礎知識がなかったらボラレ放題の恐っそろしい世界である。こんなケーブルでシステム組んだらケーブルだけで10万から20万なんぞすぐ吹っ飛んでしまうではないか!

  これなら、自分でケーブル買ってコネクタ買って自作した方がよっぽどマシと思いつつも、面倒だから適当な商品がないかどうか探した。もう、とにかく早くハムの無い音でレコードを聴きたかったのだ!

  一応、ケーブルの根元まで金属部できっちり覆われている、米国Belden社のSTR192B/1.2m×2本(何と1本1本別々)という表示価格\5,600のケーブルがあった。(国内産ではこういうの無いのだろうか?)
  
左:レコードプレーヤー接続部、右:アンプ接続部
これがその店内では一番安く、こちらの要望に合致するケーブルのようだ。それにしても高い・・・が他のもっと高いケーブルと見比べると安く思えるから実に不思議である。「米国MIL規格をクリアした・・・」って、「アンタ、あたしゃ戦争するわけじゃないし、米国陸軍規格までクリアしなくてもいいよ・・・JISかISOで充分だがね。」と思わず苦笑してしまった。たかがオーディオケーブルにMIL規格はないでしょうよ。ともかく、このケーブルに繋ぎ替えて(接続でまた一苦労、むちゃくちゃきつい。接触不良防止とは云え、物には限度があるだろうよ、まったく!)ようやくハムは終息した。フルボリュームでヘッドホンで聴いてもハムは聞こえない。コネクタに指を近づけてもハムは拾わない。こうでなければ!(テクニクスさん!初めからちゃんとしたケーブルを付けてちょ!ついでにアームのシェル取り付けもちゃんと調整して出荷してよ!安い買い物じゃないんだからね!)

  結局、プレーヤー本体以外で、ヘッドシェルで1万円、ケーブルで5千円という出費。予想外の出血である。(CD20枚は買える)これで不具合修正出来たから良かったけど、結果的にオーディオ屋を不要に潤わせてしまったと思うと実に不愉快だ。(こういうのを往復ビンタ商法と呼ぶのだろうか)でも、私ぐらいの出費ではおいしい客では無いのだろう、あの陳列されている製品価格から考えると。これでは、趣味があっと言う間に道楽になってしまう。まあ、それも人それぞれですがね・・・

  まあ良かろう。これで故障でもしない限り、もうアナログプレーヤーに投資することはない。後は音楽をこころゆくまで楽しむだけだ。まったく、しなくてもいい苦労するのは割りに合わぬ・・・・がこれで、部屋を暗くして Jo Stafford の "Autumn in New York"をかけて、Raki でも一杯引っかけながら聴くと・・・う〜〜たまらん。これはCDでは味わえない世界ですよ。アナログは悪くない。(悪いのは人間)理屈じゃないですよ、これは。皆さんもボラれないよう気をつけて音楽をお楽しみください。私の愚かな経験が参考になれば幸いです。



アナログディスクプレーヤー選手交代(2003.10.13, 2005.8.28追記修正)

  3〜4年ほど前にフリーマーケットで(確か)5千円で購入したテクニクスのセミオートのアナログディスクプレーヤー(SL-1700)の回転が不安定になってきた。

  ←Technics SL-1700

ストロボがなかなか静止しないのだ。クオーツ・ロック以前の製品だから、温度変化で多少の速度変化はあり仕方がないが、丁度正確な回転数付近で回転がふらつく。スピードコントロールもガリオームになっているようで合わせて安定するのに時間がかかる。セミオート(針を落とすのは手動、演奏終了は自動)で、再生途中に寝ても安心できるので結構重宝していたのだが、これでは船酔いになりそう。

  ということで、そんなある日たまたま寄った商店街のオーディオ店でアナログディスクプレーヤーを売っていたので物色する。店員曰く「最近はダイレクト・ドライブのプレーヤーよりベルトドライブの方が多い」とのこと。GTシリーズで名を馳せたYAMAHAは既に撤退。昔実家ではYAMAHA YP−511というダイレクトドライブプレーヤーを使っていました。おまけのカートリッジとしてSHURE M−75/2が付いていました。積層合板をベースとしたセンスの良い製品でした。流石楽器メーカーというところか。
  ←YAMAHA YP-511(う〜ん、懐かしい。)
 そういえば、TRIO(KENWOOD)も最近店頭で見かけない。アナログ・プレーヤーを作っているのは国内の数社と海外の高級オーディオメーカーだけということか。ウン十万〜数百万もするような高級機は昔からベルト駆動だが、(実勢価格ベースで)5万円以下のものはコストの関係からベルト駆動が多いとのこと。もっとも、生産台数が微々たるものだから仕方がないというところか。原理的にはダイレクトドライブが一番合理的だと思うが、かなり高度な技術がなければ作れないし数売れる商品でもないから仕方がないか。

  3万円弱でベルト駆動のものとダイレクトドライブの2種類があった。最近はSPも聴きたいとの要望があり78回転も可能になっているようだ。ダイレクトドライブの方は Phono Equalizer Amp(MMのみ)内蔵で、カートリッジの直接出力と Phono Equalizer Amp 出力の切り替えがスイッチで出来るとのこと。う〜ん、ベルト駆動は経年劣化の心配があるので敬遠したい。ダイレクトドライブの方はフォノ・イコライザーの切り替えスイッチがネックだ。微小出力の部分に余分な接点を入れたくないし、こういうスイッチは接触不良によるノイズの原因となる可能性がある。最近はphono入力が無いアンプの方が多いからこういうのが悪いとは一概には言えないが、湿気の多い日本では、接点はノイズの原因になる接触不良を引き起こすことが多い。アンプのセレクタースイッチやボリュームの経年劣化による接触不良ノイズで昔から悩まされたので余計に神経質になるのだ。

  5万円台でTechnicsのDJ用プレーヤーSL-1200MK5があったが、DJ用ということでダストカバーをプレーヤーに固定するヒンジが付いていない。ダストカバーはあるけど上からかぶせるだけのもの。(つまり、使っていないときの埃よけ)DJ利用ならともかく、一般家庭では演奏中にダストカバーは当然必要なので、DJ用途でない Technincs SL-1200MK4(税抜きで6万円台)を購入することにした。このプレーヤーは信号出力がケーブル直出しではなくRCAピン出力になっている。アンプまでの接点が増えるデメリットがあるが、ケーブルに問題があっても取り替えがきくメリットもあり、単純に優劣は付けられない。トーンアームは高さを簡単に調節出来るようになっており、これは助かる。

  ← Technics SL-1200MK4を収納

  結構高い買い物になったが、オーディオの世界ではこんなのは安物の部類になるというから恐ろしい。お隣のごっついベルト駆動のプレーヤーは50万以上の値が付いていた。それだけお金があったらソフトにお金をかけますがね。それか演奏会に行きますよ、あたしゃ。趣味もお金をかけすぎると道楽になるので要注意(既にそうなっている?失礼!)



オーディオ遍歴(2003.10.13, 2005.8.28追記修正)

  会社の独身寮にお世話になっていた時(1994-2001)の最初の頃は、部屋が狭いのでとにかく省スペースのものを探してアンプとCDプレーヤーとチューナーがコンパクトに纏まっている「TEAC CDマイクロシステム CR-H80」を HARD OFF で購入した。箱が無くラッピングのみの新古品で小形の2Wayバスレフスピーカーが付いて税抜き3万円弱。本体は幅175という省スペース型。この時はレコードを聴かなかったのでこれでも良かった。しかし、小さな箱に無理に詰め込んでいるせいか、CDプレーヤーは1年も経たずに壊れるし、ヘッドホンで聴くとハムノイズが聴こえる。「だめだこりゃ」とチューナー機能(TapeのREC OUTを出力として使用)とスピーカーのみ使うことにしてCDプレーヤーとアンプは別のものを買うことにした。

  アンプはフォノ入力(MM,MC切替え付き、MCの方は簡易的な対応だろう)のあるSONY TA-FA3ESという機種で、CDプレーヤーも同じSONY CDP-XE900を。たまたまオーディオ店に出向いて手ごろな機種を選んだら両方ともソニーになってしまった。CDプレーヤーは光学ピックアップ固定でディスクを廻すスピンドルモーターを移動させるという変わり種。トレイはディスク駆動部がごっそり出てくる。今考えると、これは合理的な設計ではなく、購入当初から状態の悪いディスクは周期的なノイズに悩まされた。時たまそういう症状が起きる程度だったので、購入後1年以内に無料修理に出さずじまいで、今になって後悔している。で、とうとう1万円のDVD・CDコンパチプレーヤー 船井電機のSUEDE DVD-AE1を購入。これが中身がスカスカ(あまりの回路の集積度故、トレイにディスクを置こうとすると本体の尻が上がってしまう程の軽さである)で軽く動きもぎこちない(やはりSONYは動作が機敏)が、とりあえず今のところは問題なく使用している。ただ、曲間で「プツ」というノイズがあるのは困りもの。ヘッドホンで聴いてわかるレベルだが、ソニーのプレーヤーでこんなことはなかった。やはりこういうところの配慮は専業のオーディオ・メーカーに利があるようだ。

  Ormandy/Philadelphia に興味を持ち始めてLPも聴きたくなってきた(特にRCAの音源はLPでしか聴けないものが多かった)ので、12mmの合板でレコードラックを兼ねたオーディオラックを作り機器設置スペースをコンパクトに纏めた。

    ←現在は Technics SL-1200MK4を収納

この時期にたまたま通りがかったフリーマーケットでセミオート(演奏終了時に自動的にトーンアームが戻り電源が切れる)のアナログディスクプレーヤー(Technics SL-1700)を入手。しかし、アンプのフォノ入力の右チャネルに接触不良が発生しており、騙し騙し使用することに。この時点で購入後1年以上経過していたので無料修理は不可と諦める。最近修理してようやくまともに聴けるようになった。

  ←Technics SL-1700

カートリッジは以前使っていたAudio Technica AT-ML140(マイクロリッジ針) と 新たに SHURE M97xE(楕円針) とAudio Technica AT-10G RD(丸針、これはヘッドシェル付きで五千円足らずと安い)を購入。これはディスクにより使い分けている。状態の良いディスクはML140で、ちょっと悪いのはM97xEで、かなり悪いディスクはAT-10Gでかけている。モノラル盤にはモノラル専用カートリッジの方が原理的に良いことは分かっているが、品数が少なく安くない(1万円前後のMM型もあるけど・・・)のと今のステレオカートリッジで不満が無い(基本的に上位互換で再生に問題は無い)のでモノラル専用カートリッジには手を出していない。

    
  左:Audio Technica AT-ML140,中央:SHURE M97xE,右:Audio Technica AT-10G RD
  ※この時は傾き補正の為カートリッジをAudio Technica の重量級シェル(ATLH13/OCC)にマウントしていました・・・(2008.1.1記)

   LDプレーヤーは会社の先輩からSONY MDP-A7というマルチディスクプレーヤーを安く譲ってくれるということで1万円程度で譲り受ける。ディスクをひっくり返す必要が無いタイプ。一度ディスクが出なくなって修理に出した以外は特にトラブル無し。CDプレーヤーの調子が悪いときは急遽こちらでかけることが多かった。最近はCDをかけるとトレイから出すとき上のクランプの柔らかい樹脂にひっついて出てこないことがあるので、LDしかかけない。今は、DVD・CDコンパチプレーヤーもあるし・・・

  音源の交換用にMDプレーヤーが欲しくなり、コンパクトなやつを探していると、幅152のSONY MDS-PC3という機種があったので購入。パソコンと接続して編集やら出来るというのが売りだったが、こちらの求めるのはコンパクトさだけなのでそれらの機能は今に至るまで使用していない。これもまあ役に立っている。

  当然、狭い部屋で音量は出せないのでヘッドホンは欠かせない。最初はSONY MDR-CD1000(密閉型)を購入した。これは色々な機種を装着して試した結果一番耳あたりが良く音も密閉型だけあって低音が伸びており、現在に至るまで愛用している。MDRシリーズで一番安いやつだが音には満足している。オルガンの低音も良く伸びており不満を感じさせない。能率が高く細かい音まで良く再生してくれる。購入してから既に10年近い使用期間となり、経年劣化で布が綻びてきて音もビリ付いてきたときはもう寿命かと思い買い換えを考えたが、同価格で同じ性能の物が無く(すでに廃番)、結局修理することにした。ボロボロになっていた布(バイオ素材・・・らしい)も取り替えてリフレッシュして新品同様になった。これは修理して正解だった。

  しかし、密閉型の閉塞間は原理上どうしようもなく長時間の使用は辛いので、数年前にイージーリスニング用にウィーンの AKG K501(オープン・エアー)を購入。実に軽い。こちらは閉塞感は無いが低音が伸びない。一長一短というところか。オープンエアー型は他にドイツのZenheizerもありこちらも装着して試してみたが、AKGの方が耳あたりが良かった。(左:Sony MDR-CD1000, 右:AKG K501)
  
  VHSビデオはBSチュナー付きのSLV-BX9を量販店で1万5千円程度で。本当にビデオデッキは安くなった。ディスプレイは25型のSANYO C-25F30を。当時ワイドテレビは高いし無駄が多いので通常の4:3のテレビにした。機能的に全然問題ない。

こうして振り返ると色々あったもんです。途中DirecTV→SkyPerfecTVのCSの視聴もしましたが、結局見る時間がそう取れるわけでもなく、見たいものもあまり無いので、今は契約していません。最近は演奏会に行くことが多くなり、我ながら良いことだと思ってますが・・・



録音の魔術(2003.7.6)

  Decca/Ansermet/Suisse Romande の録音(オルガン交響曲・三角帽子)を聴くと、鮮鋭と言えるほどマイクを近接させていると思えます。また、管楽器の音になんとも言えない艶というか色気みたいな物を感じさせます。上手いソロが出てくるがアンサンブルの精度は今一つという、巧い奏者はいるが全体としてのレベルは余り高くない・・・とそういう印象があります。レコードで聴く限りは。

  あの艶のある音はマイクによる色づけでは?と思えます。機械振動を電気振動に変換するマイクロフォンによる色づけは避けられませんから。録音で使用されるマイクロフォンはメーカー(Neumann,Schoeps,AKG,Shure,Decca,Telefunken,Sony,B&K)も様々ですし、方式(コンデンサー型、ダイナミック型)も指向性(単一指向、双指向、無指向)も色々です。マイクにより、実際より美しい音で録音出来るというのはあり得ることでしょう。

  評論家(と言っていいのかどうかはさておき)の高城重躬氏は「レコード音楽論」(共同通信社 1981年)の「自家録音のレコード製作記」のなかで、「・・・ウィーンのAKGなどとてもきれいにとれるけども、あまりに美し過ぎる傾向なきにしもあらずで、いつかこのマイクを使ったら、台所の水道の水が出る音などまさに天国的に聴こえたのに驚かされ感心もした。・・・・・ソニーの47のほかにプロにも定評がある西ドイツのショップスCMC5ーUも使って録音してみることにした。・・・・47の方はHi−Fi的というか発音などもはっきり分かる一方、ショップスは声がホンモノ以上にふくよかでやわらかく聴こえる。ピアノも底光りする音が美しい。・・・・」と、マイクの選定が音に与える影響の大きさを分かりやすく記しています。

  Columbia の Walter/Columbia SO の晩年のステレオ録音はソニーのコンデンサーマイクロフォンC−47が使用されていますし、Mercury Living Presense は Telefunken U-47、RCA Living Presense は Neumann U-47,M-49/50、Telarc は Schoeps等々、レコード会社やエンジニアにより様々なマイクが選定されているのが興味深いですね。日本Columbia(DENON)による、Inbal/Frankfurt RSO の Mahler は B&K の測定用マイクを使用するということで話題にもなりました。(B&Kの測定機器は音響屋にとっては「標準器」とも言えるものです)

  これにマルチマイク・マルチトラックによるバランス操作が加われば、実際には存在しない美しい音を作ることも不可能ではないでしょう。でも、これは別に Decca/Ansermet/Suisse Romande に限ったことではありませんし、商品として売るものであれば、より綺麗な音で録音するというのは当然のことでしょう。

  ormandy/philadelphia の場合は逆に「あの音は録音には入りきらない」と感嘆されるほどのサウンドだったわけですが、RCA,Columbiaでどのような録音手法が使われていたか、興味深いところです。



CDにピッチコントローラー(スピードコントローラー)が欲しい。(2001.10.20)

  アナログ録音のCDはピッチが狂っているものが少なくない。LPならスピード調整でピッチをある程度調整できるが、CDではピッチコントローラー(スピードコントローラー)が無いのでお手上げである。アナログテープからのリマスタリング時にピッチが狂ってしまうのことがあってはならないが、現実に製品化されているCDはちょくちょくこういうことがあるので、最終手段としてユーザー側でなんとか出来るようにしてほしいものだ。
  第1世代のCD Player にはピッチコントロール出来るものがあったので、技術的には難しいことは無い筈だ。使いもしない下らぬ機能よりも、音楽を聴く上で実際に役に立つ機能を持ったCD Playerが欲しい。そのように思うのは私だけだろうか?



CDへのRemasteringについて(2001.9.15, 2005.8.28追記修正)

 私はCDの音質にそう不満は無いのですが、やはり購入するCDのリマスタリングの程度は気になります。演奏がレコード・CDになるまでには多くの課程を経る必要があります。

簡単に言うと、下記のようになると思います。

1. 録音(少なくとも3ch以上のMulti Track Recorder等で録音)
   ※この時のテープが、Original Take, Original Session Tape となるわけです

2. 2chのテープに編集(Track Down,Mix down,Dubbingとも言うようですが)

3. カッティングマスターの製作
  LPはRIAAの特性で高音を持ち上げて低音を押さえたカッティング用のテープを作ってラッカー盤(レコードをプレスするスタンパーの凹型)にカッティングしますし、CDは編集済みの2chのテープからCD用のマスターを作ります。(最近はテープを使わず光ディスクやハードディスクでデジタル録音・編集までやってしまうみたいですが)

4.量産工程(カッティング・プレス等)
 EMI,CBS(Columbia),RCA(Victor),DGG,Decca等の多国籍企業となると、各国の支店(日本だと、東芝EMI,日本Columbia,CBS SONY・・・・)に編集済みの2chテープのコピーテープを送って、支店はそのテープよりレコードを製造していたと思います。録音時のオリジナルのテープは会社の貴重な財産ですから、2chの編集テープを作った後は大元のテープは厳重に保管して外に出さず(門外不出)、通常はこの2chテープから必要に応じてコピーを作製し各国に送っていたと思われます。音質を売りにしていたDecca/Londonは、テープではなくプレス用のメタル原盤を送ってレコードをプレスさせていました。(Londonのレコードには、「輸入メタルマスター(マザーだったかな?)使用」と帯にわざわざ謳って宣伝してましたから。)

 となると当然気になるのは、購入する(した)CDはどの段階の音源からリマスタリングされ制作されたか?ということです。

(1)録音時のテープ(Original Session Tape)よりRemastering

  録音時のテープ(Original Session Tape)を倉庫から引っぱり出して、再度トラックダウンしてCD用のマスターを作る。(これが音質上最良だと思いますが再度編集したものを演奏者は確認・承認出来ませんね。細心の注意を払ってやらないと全然別物になる危険性があります)
 ・Sony Masterworks HeritageやSBM,DSD リマスタリングしたもの
  Mastersoundと銘うってあるものは、はこの可能性が高い
 ・Vangurad,Everest,Mercury Living Presece
  (CDブックレットにfrom original Master Tapeと明記)
  ・DGG Originals,Decca Legends
   (レコ芸記事にてオリジナルマスターから制作していることを確認)
 ・日本ColumbiaのMastersonicシリーズ(ブックレットに明記)
 ・日本Victorが出した、Munch-BSO、Reiner-CSOの一連のシリーズ(CDブックレットに明記)
  ・他、"Only ORIGINAL MASTERS used .."とか"from original session tape"
    などと明記してあるもの。

(2)当時制作した2chの編集テープからCD用のマスターを作る。
 ・RCA Victor Living Stereo?
    私はこのシリーズは(1)と思っていたのですが、上記の日本Victor盤とLiving Stereoの
    Munch-BSO・organ Symphonyを比較視聴して、日本Victor盤の方が音の鮮度が高いことを
    確認しました。ちょっとがっかり。

(3)当時制作した2chの編集テープのコピー、あるいはそのまたコピーからCD用のマスターを作る。
 ・各国支店より発売のCD?(全てではありません)

  私はレコード会社の関係者ではありませんので、以上の記述は推測・憶測が入っておりますが、(1)であればレコード会社は大々的に宣伝しますし、そうでなければ、どのマスターからCD化されたかということが雑誌記事・CDのブックレット・宣伝等にて記述されているのをほとんど見たことがないことで、大体こんなところだろうと考えています。

 では、ormandy-philadelphiaのCDで(1)と考えられるものは?となると、
 ・Handel Messiah CBS M2K607
    "This historic recording has been digitally transferred onto CD to obtain the best
     possible reproduction from newly remixed original session tapes"と明記。
 ・1985年にCBSSONYより発売された2枚組で全10巻発売された一連のシリーズ
  「・・・今回特に米CBSに依頼して、当時の3〜4チャネル・オリジナル・テープから
   ディジタル2チャンネルに新たにトラックダウン(ニュー・リミックス)し直したもの
   である。・・」と解説に明記。
 ・Mozart/Legendary Interpretations
      Casadesus(pf) Concerto for 2 Pianos K.365   SM3K 46519
      Wind Concertos                              SM3K 47215
      "This recording was enhanced using 20-bit technology for "high definition sound".
      (SBMのことです)
 ・トッカータとフーガ〜オーケストラ名曲集 SRSC2084(Mastersound Series)
 ・Issac Stern-A Life in Music- の一連のシリーズ(SBM)
 ・MasterWorks Heritageの一連のシリーズ(SBM)
 ・RCAのHigh Performance Series ,Fantastic Philadelphians,etc
 ・バイエルン放送交響楽団とのライブ (Orfeo D'or)−当然バイエルン放送保有のテープからですね 
 ・SACDの一連のシリーズ

  結局一番重要なのは、どれだけ上流のマスターに遡ってCD化したかということです。高度な技術を駆使しても、もとの音源が良くなければどうしようもありませんから。Essential Classicsは恐らく(2)と思いますが、個人的には良い音質でリマスタリングされていると思います。ブラームスの1番など、CBSSonyの「音の饗宴1300」のLPに比べると雲泥の差があると思います。日本コロムビアのLPで入手したベートーベンの1・4番は残響過多で音もつぶれ気味なので、Essential Classicsで出してほしいものです。つい最近入手したダフニスとクロエのLPとCD(米MS盤LPとodesseyのCD)を聴き比べても、CDの方が音が少し丸まっているかなというぐらいの差しか感じられませんでした。



SACDとDVDオーディオについて(2001.9.15, 2005.8.28追記修正)

  SACDが話題になっているので、私も一言。一音楽ファンとしては、SACD・DVDオーディオ・CDの3者とも共存できる体制(全部演奏可能な互換機?)が出てこないものか・・・と思っています。もう、3つとも完成した規格として世に出てしまっているので、アナログディスク時代のLP,EPみたいな共存が出来ると良いのですが。SACDは2chの高級オーディオ、DVDは多チャンネル可能な高級オーディオ・AVメディア、CDは安価な2chオーディオということで。このままだと、βビデオ・4チャンネル・Lカセットのような結末を迎えてしまいそうで心配です。

ちなみに、CDがこれだけ普及しLPに取って代わった要因は、

1.使い勝手が良い
  小さい、LPと違ってラフに扱える、何回再生しても劣化しない、針音・スクラッチノイズが無い、裏返す必要がない、内周での歪みが無い、オフセンターによるピッチの狂い皆無・・・等LPでは不可能な機能

2.ハードメーカーとソフトメーカーの協力体制が整えられていた
  開発元のSony,Philipsが、他方式のディスクを開発しようとしていた他のハードメーカーを説得してDADの規格をCDに一本化したこと。ソフトも同じく、ほぼ全てのメーカーを説得してCDを生産してもらったこと

3.CDプレーヤーの低価格化
  Sony1号機のCDP-101が16万円でしたが、2年くらいで10万円を切り、さらにもうしばらくして5万円を切ったこと

4.1.〜3.に加え、過去の演奏がCD化され、LPからの買い換え需要に火がついた
  CBSSonyのWalter-ColumbiaSOの演奏は、わざわざOriginal Session Tapeを引っぱり出して、当時のProducerのJhon McClureも引っぱり出して、再度ミックスダウンを行わせたという気合いの入ったリマスタリングをしました。

5.そして、CD自体も安く−980円のCDも珍しくなくなった

  というところでしょうか。LP−>CDの変化はユーザーに大きなメリットをもたらしましたが、CD->SACDの変化は音質の向上のみですから、今のCDの音質で満足しているユーザーが移り変わるメリットが正直ありません。CD->DVDは音だけから+画像なのでSACDとは同列に比較できませんが、音楽だけ聴くことを考えると、輸入盤(日本盤以外)が聞けないことが致命的なデメリットでしょう。オーマンディの録音も輸入盤が駄目だったら現状ほととんど手に入りませんから。日本コロムビアが発売している、SP・LP・CD・ラジオ・テープ全てのメディアが聞けるプレーヤー(商品名:音聴箱)みたいなものが出てくれれば・・・まあ、望み薄ですね・・


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