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Hotel Fons Salutis (Agliano, Italy)
トリノから南に向かっていた。道路脇にベッドのマークの標識があったので,そこに泊まることにしようと車を走らせていた。その田舎道はときどき枝分かれした。そこには標識がないので,ホテルにはなかなかたどり着けなかった。通りがかった少年が身振り手振りで教えてくれて,やっとたどり着いた。田園が続く丘陵の少しくぼんだところの道路脇にぽつんとそのホテルが建っていた。日本流に言えば旅籠といったたたずまいだった。

受け付けてくれたのは年配のマンマそのものという感じの女性だった。パスポートなどを探して私が少しぐずぐずしたら,彼女は私を全く無視して,Mを相手に受付の事務的な処理をした。結局私はパスポートを求められることもなかった。マンマは「男はだめね」と内心で思っているように見えた。

高校生ぐらいの女の子が私たちの旅行カバンを3階の部屋まで2つ一緒に運び上げてくれて,はあはあと息を切らしている姿はかわいらしかった。彼女にチップを渡すと,目を丸くして驚いている姿もまたかわいらしかった。

食事はイタリアの家庭料理といった感じだった。メニューはなくお姉さんがイタリア語でべらべら説明したが,なんとなく分かった。食事に来ていた近所の人たちはみんなで私たちのことを心配している様子で,「大丈夫だろうか」というまなざし

3つ星のホテルでも特に不満はなかった。


が私たちに降り注いでいた。カップレーゼ,タリアッテレ,ビーフブルギニアン。そして,地元のGAVIのワインがおいしかった。ときどきマンマがやって来て,相変わらず私を無視したまま,Mに「どう? おいしい?」とたずね,Mが「ヴォーノ」とほほに指を当てて応えるたびに,にこにこするのだった。

イタリア社会では,マンマから見れば男はみな子どもと思われているのかもしれない。

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