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ル・ノルマンディーのもてなし | |
この夜は,オリエンタルホテルのノルマンディーでの9回目のディナーだった。ペニンシュラホテルから予約を入れてもらう際に,ピアノから遠い席をと注文をつけた。かつて一度だけピアノのそばの席に通されたことがあり,その時はピアノの音が大きすぎて不満だった記憶があるからだ。 いつものように,メートルドテルのB氏が「ウェル・カムバック」とにこやかに迎えてくれて,最も奥まったところのとてもいい席へ案内してくれた。「どうです,この席ならいいでしょう」と彼は自慢げだった。 この週のノルマンディーは,パリから三つ星レストランのシェフを招いてのスペシャル・ウィークということだった。出てきたメニューは「トゥール・ダルジャン」。アラカルトもあったが,デギュスタシオンにした。ワインはフルボディの赤がふさわしいだろうとシャトー・ヌフ・デュ・パプを選んだ。しかし,ソムリエが最初の料理のフォアグラのパテにはソーテルヌの白がおすすめだと言うので,それもグラスでいただいた。甘く重いこの白ワインは確かにフォアグラとよく合った。 トゥール・ダルジャンと言えば鴨料理の代名詞とも言われるとおり,魚料理の後,最後に鴨の料理が二皿続いた。鴨の血を使ったソースは独特の味だった。しかし,私にはイタリア料理などに比べてフランス料理はどうしてもソースが重い感じがした。 食事の途中で支配人が挨拶に現れ,シェフもやってきた。いつもMと軽口をたたき合う白服の若いウェイターは黒服に替わっていた。おそらくアシスタント・マネージャーに昇格したのだろう。相変わらずMとは軽口を交わしていたが,どこか態度に落ち着きと重みが加わったような感じだった。帰り際,彼はわざわざ挨拶にやってきた。「どうぞオリエンタルのボートでお帰りください」と言って,カードに「ペニンシュラへお送りするように」とボートのスタッフへのメッセージを書いてくれた。ロングドレスの女性スタッフがわざわざボートまで案内してくれ,この夜のもてなしには返す言葉がなかった。 |
![]() ![]() 鴨の番号は330と331だった。 |