あるところに”ミナミ"という分会の青年部があったトサ。
太陽は高く、海は青く、川も澄んでいたトサ。
そこでのお話です。
夏になると恒例行事となっている青年部キャンプの季節です。ずいぶん長く続いている行事で、今年が海なら来年は山(渓流)へと、場所をかえ品をかえてやっています。キャンプというと用意があれこれ大変そうですが、そこは手慣れたもので、場所さえ決まれば○○班はなべ、包丁、まないた、皿、はし。クーラー、氷は、○○班。それに炭はあそこにあるなといった具合に、毎年用意する人が決まっているため、当日それを持っていけばOKということで、相談らしきことはほとんど必要ない。+αだけ考えればいいのには、途中参加のキャンプ初心者の私としては、手際の良さに感心させられます。
さて、きょうは真夏の海へ砂浜でキャンプです。午後の太陽はまだ高く、じりじりと暑い昼に海で集合。昼の海は開放感でいっぱいです。
海は、いつもよりゆったりと見え、時間さえもゆっくり進んでいるように思える日でした。それでも、この地方としてはめずらしく人出もけっこうあって、アイスリン売りのおばちゃんも店を出していました。思わず一つ頂だいと買ってしまうような日です。テントをはり、岩を運んで焼き肉の場所づくり、流木を集めてのイスづくりと怪しげな集団が水着の人の前をうろうろ、それでも作業は順調に進みました。
浜辺の人影も消えて、波の音が少し大きく聞こえだしたころ、ポンポンポン、ジュージュージューと乾杯と同時に焼き肉の始まり始まり。ここまでは順調でした。しばらくすると一人が波が近づいて来るんじゃないかと言い出しました。そういえば、少しせまってきたな一と思いつつ。それほど気にも止めずにいると、そのうちアットいう間に波がやってきました。アットいう間ではなかったかも知れません。すぐ足元まで波がくるようになり、大騒ぎとなりました。今さら移動も面倒なので、木と砂で防波堤を作って防御するこことしました。焼肉の火を囲んで、海の中の焼肉パーティーとしゃれこみました。こんなことはなかなかできないとか、夏の風流だとか言っているのも束の間、ジュ−。ジュージューと言う大きな音とともに波がなだれ込み。突然のお開き。鉄パンをもって避難するばつの悪さ。突然の水ぜめ攻撃に、こんなことがあっていいのかという感じで、しゃれにもなりません。改めて見渡してみると、とても焼き肉をやれる状況ではありませんでした。
こうなると、近くに建てたテントが気になります。どうも着いたときは干潮で、潮が満ちてきている様です。昼に干潮だと大潮かもしれません。寝ていたら海の中、それこそ寝耳に水になってしまっては、しゃれにもなりません。オオゴトなので、急いで情報を仕入れることにしますが、近くに聞くような人もなく、公衆電話で天気予報を聞くことにしましたが、知りたいことは言ってくれません。そうこうしている間に、だんだん薄暗くなってきます。やっと船を見に来た地元の漁師さんを見つけ、聞いてみると、あと数時間はコミが続くそうです。 そうこうしている間に、一番岸よりのテントの近くまで波が来て、急いで移動することにしました。しかし、浜以外テントを張るようなところは見当たらず、やむなく、車を止めてある駐車場にテントを張ることにします。ヘグも折れ曲がるような堅さでやっと建てますが、砂浜の柔らかい砂の上と比べると、堅くて今晩寝られる心配です。残りの2つのテントも急いで移動することにしました。
波は予想以上に早く、最後には片づけるのと競争になっていまいました。流されそうになるのを回収しながら、やっと浜からぬけ出すことができました。テントを張り終わるころには、発電機だけが妙にけたたましくうなり声をあげ、暗闇を震わしていました。海を見るとさっきの浜はすっかり姿を消し、薄明かりの中で焼き肉の時の燃えかすらしい木片やら、見覚えある流木、それにどこからともなく流れ集まってきたゴミとが暗闇の波打ち際で時折あやしく光っています。さっきまであそこでやっていたとは、とても思えない不気味さです。もう少し遅れたら、もっと悲惨な結果になっていたことでしょう。部員の顔には、少しの疲労の色とあんどの色が広がっていました。
ヒュー。ヒュー。ヒューという音とともに、空に真っすぐ打ちあがり,空で大きくはじけます。ほうぼうでヒューヒュー。,パンパンパーンと音をたてて、辺りが急に明るくなりました。青年部恒例のキャンプ花火大会の始まりです。花火がいつもより明るく感じられる夜も更けていきました。
−”ミナミ"のキャンプより−
*数年前に機関誌の文集に載せた物です。
追伸
この翌年、遊泳禁止となったことを聞いた。どうも台風が来て、砂を根こそぎ持っていってしまったらしい。実際行ってみると、風景は一変していた。大きなテトラがたくさん入っていて、砂浜は見えなかった。あれはなんだったんだろう。確かにここでやったはずだが。
ここをたしか、竜地区、竜の浜と呼んでいたと思う。恐ろしいところだ。 |