苦 笑 問 題
『何も愛さない男,オダギリジョー』
不本意なイメージを付けられたのは深夜番組。聞かれた質問に正直に答えただけなのに,そう言われてしまった。
この番組は大好きな番組の一つだ。芸人さんは頭が良くないとなれない(勉強が出来るとか,そういう問題ではなくて)。それは以前から思っていた事だが,この番組のメイン司会者2人はつくづく頭の良い人達だと思う。
他のバラエティ番組に出る事はなくなったが,この番組だけは続けたいと思う。
なのに,そういうイメージを付けられてしまった。でもそれが面白かったらしく,番組的には良かったのだと聞かされた。
「ジョーくんさ,ホントに何も興味ないの?」
小柄な田中さんが,収録後声をかけて来た。
「ああ,興味ないですね」
「だってさ,ペットもデザートも花火大会も夏も嫌いなんだろ?」
「そうですねえ」
「ペットってさ,可愛いよお」
ネコを飼っていると言っていたこの人は,野良猫にまで相手をするという。
「ペットは昔から飼ったことないんですよ。だからどう,接して良いか分からないんですよね」
「ああ,そうか。そう言うのもあるかもなあ」
「だから子供も苦手なんですよ,実は」
「仮面ライダーがそんな事言って良いの?」
苦笑する田中さんに,俺も苦笑した。いつまで『仮面ライダー』と言われ続けなきゃいけないんだろう?
「じゃあさ,何に興味あるの?」
「……映画かなあ?」
「ああ,映画ね」
納得したような田中さんの顔。その時相方の太田さんも,俺達に近づいてきた。
「何の話してんだよ?」
「今さ,ジョーくんは何に興味を持ってるのか聞いてたんだよ」
「映画じゃねえの?」
毒舌で売っているこの人は本当に頭の良い人で,彼の発言には本当に良い意味で驚かされる。
「そうですよ,さすがですね」
俺はにっこり笑って答えた。
「映画以外は?」
至極当然に尋ねる太田さん。
「え?」
「映画以外に興味のあるものって何?」
「……映画以外ですか?」
「でもほら,ジョー君多趣味だから」
確かに絵を描いたり,文章を書いたり,最近はやらないがアクセサリーを作ったり。いわゆる物を生み出すのが大好きなんだ,俺は。
「例えばさ,興味のある人物とかっていないの?」
「お2人の事は好きですよ」
当たり前の様に言うと,何故か太田さんが少し赤くなる。この人は結構照れ屋なんだ。
「ジョー君が言うと,なんか照れるね」
「嘘つけない人だからね」
田中さんも少し照れた様に笑う。
「好きな人とかいないの? 例えば好きな女優さんとかさ」
「あ〜,興味ないですね」
最近の女優さんで,俺の興味をそそる人はいない。
「恋愛対象でも?」
「恋愛対象?」
「付き合っている人とかさ」
俺の脳裏に1人の人が浮かんだ。大きな瞳が印象的で,仕事も遊びも一生懸命で真面目で,俺よりも長くこの芸能界にいるのに,それなのに全然擦れていなくて,いつまでも純真で子供の様で,とても可愛い人……
「……いるんだ」
太田さんの意味ありげな声に,一瞬我に帰る。驚いて彼を見ると,ニヤニヤと笑っている。横で田中さんが驚いた表情を浮かべていた。
「え!? ジョー君,付き合っている人,いるの?」
「そりゃいるだろう。これだけ男前なんだからさ,そりゃもう掃いて捨てるほど寄ってくるよ,お前と違って」
「別に俺と比較しなくても良いじゃねえか!」
田中さんは目をキラキラさせて俺を見た。
「彼女は普通の人? 芸能人?」
「う〜ん……。まあ,良いじゃないですか,そんな事は」
はぐらかすと,田中さんは興味津々の顔をしている。
「って言う事は,芸能人だ!」
「だからあ,良いじゃないですか」
俺が困った表情をすると,太田さんがフォローのつもりなのか
「そうやって,ごまかす所を見ると,『彼女』じゃなくて『彼氏』だったりしてな」
と言って来た。
「……え?」
俺はきっと引きつった表情を浮かべていたんだろう。思わず何も言えなくなる。
「え?」
太田さんも田中さんも驚愕した表情を浮かべて俺を見ていた。
「……マジなの?」
太田さんが呟く。
「……や,そんなわけないじゃないですか!」
とっさにごまかしたつもりだけど,頭の良い彼の事だ。きっと分かっただろう。
太田さんは俺の肩を軽く叩くと,
「ま,頑張って」
それだけ言ってスタジオを後にした。まだ固まっている田中さんを残して。
その後,田中さんに必至に弁明する俺だった(自分の発言した責任くらい,とってよ〜〜〜!!!)。
― END ―
既に終わっちゃったいましたが,『爆笑大問題』の中で,あまりにも正直に発言するもんで,ジョーは『何も愛さない男』と評されていました。
そんな事ないよね〜? 愛するもの(者)もあるよね〜? と突っ込んだのは私だけではありますまい(力説)。
爆笑問題のお二人は好きです。特に太田さん。彼は本当に頭の良い人だと思います。
結構毒舌だったりするけど,照れの裏返しなんだよね,きっと。
あの番組が終わって残念。
……あれ? なぜ,爆笑問題さんの話に?
NOVEL