ざるがたけ 標高2629m。
笊ガ岳は南アルプス南部、赤石沢を挟んで聖岳のほぼ真東約11kmに位置する。
どこから登るにしろ長時間の歩行を余儀なくされる。
登るにあたってどのルートにするのか考えた末、
2001年9月下旬の3連休を利用して椹島から往復することにした。
初日の早朝、新幹線で東京を発った。
静岡から、この季節には一日一便しかない直行バスで畑薙ロッジに向かう。
ここで東海フォレストのマイクロバスに乗り換え、椹島には昼過ぎに着いた。
南アルプス南部の登山基地だけあって、宿舎は規模が大きく、A.B.Cと名のついた3棟がある。
しかし9月下旬ともなると、
快晴の3連休にもかかわらず20名くらいの宿泊者しかいなかった。
翌日は3時少し過ぎにロッジを出発。
快晴だが、月が出ていないので、あたりは真っ暗だ。
こんなに早く出発したのは、下山後椹島13:20発のマイクロバスに乗りたかったからだ。
これを逃すとロッジにもう一泊した上、東京に帰りつくのが3日目の夜になってしまう。
なにしろ畑薙ロッジからのバスは一日一便しかないのである。
笊ガ岳登山口のある滝見橋まで15分くらいだ。
誰もいないと思って歩いていたら、
漆黒の闇の中、道路脇で焚き火をして夜明けを待っている渓流釣りの男性二人と出会いびっくりした。
登山口からは森林帯の中の広い尾根に付けられた登山道をたどる。
真っ暗闇の中、ルートがはっきりしない所では、五感を働かせて赤ペンキや赤テープを探しながら登る。
生木割分岐と思われる平坦な場所あたりでようやく明るくなり始めた。
ここからは斜面のトラバース道になる。
ルートは比較的よく整備されていて、足場の悪い所ではロープやはしごがかけられている。
踏み跡が不明瞭な部分もあるが、注意すれば迷うようなことはない。
合計6本の沢を横切った後、広い涸れ沢(上倉沢)に出る。
ここで対岸に渡り、細い涸れ沢をしばらくたどる。
その後は美しいシラビソの林の中の登行となる。
斜面を登りきると縦走路に出会う。
木々に囲まれた尾根の上の道をしばらくたどるとハイマツの茂る狭い頂上に着く。
南アルプスの展望台と言われるだけあって、赤石岳、聖岳、富士山、八ヶ岳などが見える。
頂上まで誰にも会わなかったが、テント山行の人たちが次々とやってくる。
大人数のパーティがやってきて騒々しくなったので20分ほどで頂上を辞した。
帰路、上倉沢を横切ってしばらく下ると、ツアーに参加して笊ガ岳を目指す7,8人とすれ違った。
中高年の人たちばかりで、5時にロッジを出たと話していた。
多分、椹島ロッジにもう一泊する予定なのだろう。
その後は人に会うこともなく、ロッジには昼過ぎに帰り着いた。
バスの出発時間には相当間があったので、ロッジの売店でジョッキ1杯600円の生ビールを注文した。
秋の乾いた空気の下、登山の後に飲むビールは格別だ。
椹島ロッジ13:20発のマイクロバスに乗り、入山の時と同じルートで帰路についた。
新幹線を利用して、家にたどり着いたのは20:30だった。
この山行を振り返ってみると、
笊ガ岳は南アルプス南部の奥深くの展望台として確かに素晴らしい山だが、
もう一つ特徴に欠けるように思うのである。
ほかのルートから登れば違った印象が得られるのかもしれないが。
歩行記録 2001/09/23 登り5H10m(椹島ロッジ−頂上) 下り3h40m(頂上−椹島ロッジ)
右の写真は北側の縦走路から見た頂上。 土が露出しているところには霜が降り、木々は色づき始めていた。
山梨県と静岡県の二つの標柱が建つ頂上。あまり広くない。
小笊と富士山。 小笊は、その名のように笊をひっくり返したような形だ。
左に塩見岳、中央に仙丈岳、右側に間ノ岳、北岳。
赤石岳(左)と荒川三山。
上河内岳(中央)と聖岳(左)。
広い涸れ沢(上倉沢)から見上げた笊ガ岳。
このあたりは山奥でありながら広々としていて、しかも人の気配がなく、
南アルプスの懐深くに入ったことが実感できる。