縞枯山(長野県)


しまがれやま 標高2403m。

 八ガ岳北部、いわゆる北八ガ岳と言われる山域に筆者はこれまであまり縁がなく、 縞枯れ現象で有名な縞枯山も興味は持っていてのだが登ったことがなかった。 2003年の3月になって、ハイキング仲間に誘われてこの山を歩く機会があった。 これはそのときの記録である。 といってもロッジ「満天星」の主催するスノーシューのハイキングに参加してのことで、 自分達で計画したわけではない。 最近スノーシューが話題になるので、どんなものなのか体験したいと思ったのが参加の動機である。
 初日は雪の舞う中、麦草峠近くで軽く足慣らしをし、翌日縞枯山を周遊するコースを歩いた。
 縞枯山に向かう日、ピラタス横岳ロープウェイを使って山頂駅まで上がったのが10時過ぎである。 一般の人を対象とした山歩きなので、無理をしない行程ということのようだ。 駅を降りると一面の銀世界である。 駅周辺には三脚を構えたアマチュアカメラマンの数が多いのに驚く。 手軽に冬山の景色を写真に撮れるところとして有名なのかもしれない。 ここでスノーシューをつけて歩き出す。 前日の雪と打って変わって快晴の天気で太陽がまぶしいが、 冷たい風が強く吹き付けるのでのんびりと歩くというわけにもいかない。 針葉樹林の中のなだらかな斜面を登っていくとあたり一面が広々として縞枯山荘に着く。 この前を通り過ぎると雨池峠である。 ここから樹林帯の中の急傾斜の道を縞枯山山頂に向かう。 山頂駅から約1時間ほどで縞枯山の頂上部にひょっこりと踊り出る。 尾根の反対側(南西側)斜面は縞枯れ現象で有名な立ち枯れた木々が並んでいて、 登ってきた斜面とは対照的で奇妙な光景である。 縞枯れの木々の間から南の方に南八ガ岳の峰々が見渡せる。 ここからは踏み跡のない我々だけの世界となった。 新雪が深く他のパーティは引き返したようであるが、 スノーシューを付けている我々は快調である。
 しばらく尾根の上をたどると縞枯山の南東端部に着き、 そこは展望台となっていた。 素晴らしい景色にしばし見とれる。 ここからは茶臼山との鞍部まで下り五辻へ出た。 ここは広々とした草地らしいが、すべては雪の下である。 景色を見たりして昼食の休憩を取った後、 踏み跡をたどってロープウェイ山頂駅に戻った。 ロープウェイを使って下るのが楽にきまっているが、 宿の主人の「天気のいい日には歩いて下ったほうが素晴らしい。」という言葉に参加者全員が歩いて下山した。 確かに右手に優美な形をした蓼科山を見ながらの下山もよいものだった。
 こうして楽しい山歩きが終わって、 宿の車で茅野駅に向かう途中に山の方を振り返ると、 西日を浴びた八ガ岳の峰々が最後の輝きを放って我々を見送ってくれていた。
 ところでスノーシューの履き心地はどうだったかというと、 同じような構造のワカンに比べても、少なくとも平地と緩斜面ではかなり歩きやすいというのが実感である。 人気があるのもうなづけるが、 あまりに歩きやすいので、湿原などが無神経に踏み荒らされて問題になっているという話も聞く。

歩行記録 2003/03/02 登り1h05m(ピラタスロープウェイ山頂駅−縞枯山) 下り4h05m(縞枯山−縞枯山展望台−五辻−ロープウェイ山頂駅−山麓駅)

 ロープウェイ山頂駅から縞枯山荘を目指して針葉樹林の中を歩く。

 縞枯山荘周辺は明るく開けている。これから向かう雨池峠は写真右奥に見えている。

 雨池峠から林の中の急な斜面を登りきると縞枯山の頂上で、 反対側の南西斜面は縞枯山の名前の由来となった立ち枯れた木々が墓標のように林立している。 立ち枯れた木々の間に点在する幼木は、次の世代を担う木なのだろうか。
 木々の向こうに見えるのは、八ガ岳南部の峰々。

 縞枯山の尾根をしばらく歩くと南東端の展望台に出る。 ここからは、南八ガ岳方面の山々を初め、秩父、南アルプス、中央アルプス、 北アルプスの山々が見渡せる。 この日は冷たい風が吹き、ゆっくり腰を下ろして休むというわけにはいかなかった。

 縞枯山の展望台から南を望む。 麦草峠が眼下になだらかにうねる森の中にあるはず。 見えている山々は左から天狗岳、赤岳、阿弥陀岳、権現岳、編笠山と思われる。

 五辻の雪原を昼食の休憩に最適な場所を求めてながら歩く。 雪の下には草原が広がっているという。

 五辻の雪原の上の方の端で昼食のための休憩。 思い思いに散らばって、宿で作ってくれたおにぎりを食べる。 このあたりまで下ると尾根の上と違って風もほとんどなかった。

 五辻から縞枯山の西側の道を通ってロープウェイ山頂駅に戻る途中の斜面から見た美ヶ原。 なだらかな高原状であることがわかる。 そのはるかかなたに連なって見えるのが北アルプスの山々。

 山頂部の優美な丸い曲線が特徴的な蓼科山。 ロープウェイ山ろく駅目指して下山中に、右手から我々を見下ろしていた。

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