三本杭(愛媛県)

さんぼんぐい 標高1226m。

三本杭は、宇和島駅の南東方向約7.5km、 愛媛県と高知県の県境から少し愛媛県側に入った場所に位置する。 三本杭というずいぶんと変わった名前は、 藩政時代に領土の境界を示す標柱が立てられていたことによるという。 景勝地である滑床渓谷が三本杭の北の裾を流れており、 一般にはこの渓谷を目当てに訪れる人が多いようだ。
 筆者は2005年の5月連休を利用して四国に渡り、 宇和島を拠点にして篠山とともに頂上を踏んだ。 2005年の5月連休は、休みを連続して取りやすい暦の配置だったためか 2週間前に計画を立てたときには東京-松山の朝の飛行機が満席で、 新幹線と特急を乗り継いで宇和島入りした。 夜行バスという手もあったが、 どうせ時間をかけて行くなら、 車窓から景色を見て、旅行気分を味わいながら行くほうがいいと思い、 列車にしたわけである。 始発の新幹線に乗って岡山で乗り継ぎ宇和島に昼過ぎに着くつもりだったが、 出発の日の朝、寝過ごしてしまい、乗った新幹線は7時過ぎになった。 東京駅始発だから自由席でも座れたが、 発車のときには自由席も全部埋まって品川では立っている人もちらほら。 名古屋、京都、大阪と混雑が増し通路が一杯になったのには驚いた。 岡山では運良く45分の待ち合わせで宇和島行きの特急があり、その自由席に座った。 この特急も発車時には満席になった。 連休のため、家族連れや結婚式に招かれた人などいろいろな目的の人が乗っていたが、 実家に帰る途中と思われる人が多く、観光客は少ない様子だった。 瀬戸大橋や四国の海岸沿いの景色を見ながらだったので、 岡山から4時間以上もかかる旅も苦にならなかった。
 翌日早朝、まだ暗いうちにレンタカーで宇和島を出発し、 滑床渓谷の万年橋を目指した。 同行してくれるのは、前年も瓶ガ森に付き合ってくれた高松のYさん。 一時間ほどで万年橋手前の広い無料駐車場に着いた。 登山者のものと思われる先客の車が3台ほどあった。 コンビニで買った朝食を食べた後、登山開始。 ルートは、御祝山経由で頂上に達し、 熊のコルから滑床を通って戻ってくる周回コース。 万年橋そばの登山口から樹林帯の中に入る。 最初のうちはヒノキの植林地で、あまり面白い道ではない。 急登というほどでもない坂が続いて高度を徐々に上げていく。 1時間半ほど登ると展望のない御祝山の頂上で、 このあたりまで来るとシャクナゲが目に付くようになる。 ピンクの花が疲れを癒してくれる。 ここからは傾斜もゆるくなり、広い尾根の上の坦々とした道となる。 しばらくすると常緑樹の中にブナやヒメシャラの木も混じるようになると、 シャクナゲの木も数を増し、 シャクナゲの枝を掻き分けて歩くと言っても大げさでないほどになる。 花の最盛期までにはもう少しありそうだったが、 それでも驚くほどの花の多さである。 このシャクナゲの群落が終わると右手に三本杭の丸い頂が見え隠れするようになる。 やがて木々がまばらになりアセビの木が目立つようになると三本杭も近い。 八面山への縦走路の鞍部にある三叉路から右手に少し登ると、 地面の露出した丸い三本杭の頂上だった。 先客の登山者二人が休んでいた。 上空に薄い雲がかかっているので、 暑くもなく休むには都合がよい。 だが空気の透明度は今ひとつで、 近くに見えるはずの海もなんとなくそれとわかる程度だった。 小休止の後、熊のコルへと下った。 縦走路の鞍部から熊のコルに向かってはかなりの急降下である。 ブナの木が目に付くがシャクナゲはなく、 御祝山からの登りとはずいぶんと雰囲気が違う。 コルには15分ほどで着き、あとは新緑の美しい原生林の中を滑床を目指す。 奥千畳からは滑床の渓谷沿いの道となり、 なめらかな曲線を描く河原を見ながら下ることになる。 ときどき沢の中の水流を覗きこむと、 アマゴだろうか渓流魚の稚魚が泳いでいるのが見える。 千畳敷の広い花崗岩の河原の上にはたくさんの人が腰を下ろして休んでいた。 どうやら万年橋からここらあたりまで、 ハイキングでやってくる人が多いようである。 あとは散り始めたヤマザクラや雪輪ノ滝という風雅な名前の滝を見たりしながら、 万年橋の駐車場へと戻った。
 これがちょうどお昼のことで、 小休止の後、次の目的地である篠山へと車を向けた。

 歩行記録  2005/04/30 登り2h35m(万年橋-御祝山-頂上) 下り2h05m(頂上-奥千畳-万年橋)


 万年橋近くの広い駐車場。
 朝は車もまばらだったが、昼近くに戻ってきたときにはかなり増えていた。 サルの群れも人になれているようで、我が物顔で歩き回っていた。

 御祝山の頂上。
 木々に囲まれていて景色は見えない。

 シャクナゲの花は、 株によって花の咲く時期が異なっているようで、 ほぼ満開の株もあればこれから咲くものまでまちまちだった。

 シャクナゲの花越しに三本杭の頂が見えてくる。

 ツツジやアセビの木が多くなると三本杭も近い。 丸いのが頂上。

 地肌がむき出しの三本杭の頂上と南側の眺め。 山並みの奥、遠くに見えているのが篠山だろうか。

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