三瓶山(島根県)

さんべさん 標高1126m。

 8世紀に書かれた「出雲国風土記」に現れるという中国山地の名峰である。
 その頂上に、2004年と2008年の2回立つことができた。 それぞれの記録を紹介する。

 【2008年】
 2008年の10月に2度目の登山が実現した。 2004年に登ったときは、体調も万全でなく、 男三瓶山の頂上を踏んだというだけで、 多少物足りなさが残った。 しかし、東京から遠く離れた山においそれと出かけるわけにもいかず、 まさか2度目の登山が実現するとは思っていなかった。 それが、現実となったのは、K555(山仲間の集まり)で、 2008年の定例山行の目的地となったから。
 10月18日朝に現地で集合して登山となるため、 前日に出雲市入りした。 早朝に東京を新幹線でたって、 岡山で乗り継いで出雲市に着いたのが13時。 列車での移動だとその遠さを実感できる。 出雲市駅で、同じK555仲間のMさんと合流。 午後の時間を日御碕(ひのみさき)と出雲大社めぐりに費やすことにし、 さっそくバスで日御碕へ。 平日なので、日御碕まで足を延ばす観光客は少ない。 海岸線を走るバスの車窓から三瓶山が見えていることを運転手さんが教えてくれる。 なるほど、神話の世界に登場してもおかしくないほど目立つ存在だ。 周りに高い山がないせいだろう。
 日御碕の灯台に上がって絶景を楽しんだあと、 数軒あるお土産物屋さんの一つに入り休憩。 お店の前で干していたマイカを焼いてもらって食べる。 これがやわらかくておいしい。 ビールを飲みたいところだが、 これから出雲大社に参拝するので我慢。
 出雲大社へはバスに乗って移動する。 前回訪れたのは大山に初めて登った時だから、 26年ぶり参拝だ。 帰りは電車に乗ろうということになり、 松並木を通り抜け、出雲大社前駅に出たら発車したばかりで、次の電車を40分も待つはめになった。 時刻表を見ると1時間に1本か2本なのだ。 別に予定が決まっているわけではないし、 のんびりと時間をつぶしながらの旅行も悪くない。 ようやく来た一畑電鉄の電車に揺られ、真っ赤な夕日を見ながら出雲市駅へ戻る。 予約しておいたビジネスホテルにチェックインしたときには、 あたりはすっかり暗くなっていた。
 翌18日は大田市駅で他のメンバーと合流し、 バスで三瓶山東の原へ。 東の原の駐車場には、広島から参加のKさんと同行のTさんがすでに待っていた。 Kさんと会うのは1999年の小豆島以来だ。 登山の準備をして、早速ロープウェイで女三瓶山に取りつく。 参加者全員の9人で女三瓶山頂上まで登る。 快晴の上、気温も上がって暑いくらいだ。 北西から南西の方角にかけて、 男三瓶山、子三瓶山、孫三瓶山と3つ並んで、 名前の通り、順に小さくなる。 前日歩いた日御碕はかすんでいる。 さらに遠い大山は、残念ながら霞の中で見えない。 連日の晴天続きで、風もほろんどないので、 空気が少し淀んでいるせいかもしれない。
 しばし休憩後、男三瓶山を目指す自称若者組と、 早々と宿に下りる組に分かれて出発。 筆者は、男三瓶山への一団にくっついて写真を撮りながら歩く。 約1時間で男三瓶山の頂上だ。 4年ぶりの再訪。 広々とした頂上の光景は変わっていないが、 人の数は今回のほうが多い。 昼食を食べながら1時間休んだ後、子三瓶山に向け出発。 最初はススキの原に続く道だったが、 いざ下りの斜面が急になると、 小石混じりの滑りやすく疲れる登山道になる。 滑って腕に怪我をしていた登山者も見かけた。 登山では、一般に登りより下りでバランスを崩しやすいので、 気をつけて足を置くようにする。
 汗をかきながら登り返した子三瓶山の頂上も、 ススキに覆われて空が広い。
 孫三瓶山の頂上につくころには日もだいぶ傾いてきたが、 天気が崩れる心配がないので、のんびりムードだ。 孫三瓶山からは女夫松めがけて下山。 こちらは歩きやすい道だ。 16時に、宿の「ひめさ野」に到着。 さっそく温泉につかって汗を流し、 そのあとは恒例の宴会で定例山行の締めくくりとなった。

 日御碕灯台とマイカ。 灯台に登ったあと、お土産屋さんを兼ねた食堂で休憩し、 この天日干しのマイカを焼いてもらった。 やわらかくて、塩味が適度に効いていておいしかった。
 ビールを飲んでくつろぎたいところだ。 しかし、このあと出雲大社に回る予定で、 あまりゆっくりもしていられないので、 ビールは断念。
 ところでこのマイカの正体はなんなのか? 帰宅後調べてみると、 その土地土地で違う種類のイカを指しているらしく、 島根県の中でも違いがあるというからややこしい。
 以下、写真はすべてリコーGX200で撮影。

 日御碕から出雲大社に向かうバスが、 稲佐の浜近くの漁港の脇を走っているとき、 窓越しに見えた三瓶山。 写真では海の向こうにポツンと見えるだけだが、 実際にはもっと目立つ存在だ。 国引き神話で、三瓶山が大山とともに杭として使われたというのが、 もっともと感じるくらい存在感がある。

 女三瓶山からの眺め。 右から、男三瓶山、子三瓶山、孫三瓶山の順で、 大きさも名前の順番だ。 (当り前か)
 今回使ったカメラ(リコーのGX200)の広角側の24mm(35mm判換算) でもこの三山はいっぺんには入りきらず、 2枚の写真を合成している。

 ススキの海に浮かぶように建つ、頂上の避難小屋。 こんなによく晴れていても、大山は見えなかったのは残念。
 前日、伯備線経由で出雲市入りをした際には、 特急「やくも」の車窓から大山がきれいに見えていたのだが。

 男三瓶山から子三瓶山に向かって下る我がパーティの面々。

 孫三瓶山で。15時ころ。

 男三瓶山で見かけたイヨフウロの花。 ところどころで咲いていた。 最近のコンパクトデジカメはマクロ機能が強力で、 花のアップもわりあい簡単に撮れる。

 子三瓶山で出会ったツマグロヒョウモンのオス。 元気に飛び回っていた。

 こちらは、だいぶくたびれているキアゲハ。 全体に色あせ、後翅が大きく破損している。 孫三瓶山で。


 【2004年】
 筆者は2004年の11月初旬に、吾妻山道後山と合わせて登る機会を得た。 中国地方など東京から離れた場所の山を登るとなると、 明日の天気が良さそうだからといって、 なかなかすぐに登りに行くというわけにもいかない。 このときも約2ヶ月前に、 誕生日割引を利用して往復の航空券を確保しておいたのである。 ところが10月中旬に引いた風邪がまさかと思うほど長引き、 決行すべきかどうか迷うという事態になってしまった。 中止するにしろ、今回は単独行なので気が楽である。 幸い、出発前日の晩には症状も良くなったように思えたのと、 天気も良さそうだったので、 ともかく羽田からの早朝の便に乗って出雲市へと向かった。 機上からは中央アルプス、御岳山、北アルプス、白山がよく見えた。 このうち、北アルプスと白山だけが上部に雪を頂いていた。 暖かい日が続いているので、山の降雪も遅れているようだった。 若狭湾上空では天橋立も見える。 天気も穏やかそうなので、 登山もなんとかできそうだという気分になってくる。
 出雲空港に着いてから、予約しておいたレンタカーを受け取り、 三瓶山を目指した。 時間にあまり余裕がない上、 風邪が完全に治りきっていないので、 女三瓶山のスキー場のリフトを利用することも考えたが、 それではあまりに安直過ぎる。 とりあえず北ノ原まで行ってから後のことを考えることにした。
 その北ノ原の駐車場に着いた時間が、飛行機が遅れたこともあって昼を回っていた。 日没が早い季節なので、ぐずぐずしていられない。 北ノ原からまっすぐ頂上へと続いている姫逃池コースをたどって、 男三瓶山の頂上を踏むことにする。 道はよく整備されている。 最初の斜面を登りきるといったん平坦な場所に出、やがて男三瓶山北面の急斜面になる。 しかし道は歩きやすいようにジグザグに切られているので、 楽に歩ける。 下部の紅葉はなかなかきれいだが、高度を上げるに従い木々の葉が落ちてなくなる。 50mおきに高度の標識があるので現在位置が確認できるしくみになっているのが面白い。 頂上も近くなると樹相が変わり、ブナが主体となる。 そのブナ林を抜けると広々とした頂上で、 数人の登山者が休んでいた。 晴れてはいるのだが、少し雲があり霞んでいる。 11月にしては気温が高く、長袖シャツ1枚で休んでいてもそれほど寒いとは感じない。 一息入れると、これからどちらに向かって歩くべきか悩んだ。 三瓶山は男三瓶山を中心に、女三瓶山、孫三瓶山、子三瓶山などのピークが合わさって一家を成しているので、 男三瓶山の頂上だけ踏んだだけではいかにも片手落ちである。 一周するのは無理としてもせめて女三瓶山くらいは歩いておきたいと思い、 避難小屋の前を通って、 南東の方角を捜したら、はるか下方にいくつもの電波塔を乗せた女三瓶山のピークが見えた。 男三瓶山に比べ200m近くも低く巨大な人工物のある頂上に、 わざわざ足を運ぶ気力が萎えてしまった。 蝶好きとして、 女三瓶山のウスイロヒョウモンモドキの生息地を見たいという誘惑もあったのだが、 ここは無理をしないで、名号コースを下って北ノ原に戻ることにした。
 名号コースの上部は男三瓶山から東側に延びる狭い尾根の上にルートが取られているが、 ブナ林を少し下ると広い斜面の歩きやすい道になる。 こちらのルートも下部に向かうに従い、 紅葉が鮮やかさを増して目を楽しませてくれる。 山すそまで下ると、女三瓶山からの道と合わさる。 豊かな自然の残る人気のない道を北ノ原に向かい、 駐車場へと戻った。 あとは、宿を予約してある出雲市へと車を走らせるだけだった。
 以上が、2004年のときの三瓶山登山のいきさつだが、 男三瓶山のピークを踏んだだけというのでは、 あまり自慢できる話ではない。

 歩行記録  2004/11/06 登り 1h00m(姫逃池の駐車場−姫逃池コース−頂上)  下り 1h05m(頂上−名号コース−駐車場)

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