御正体山(山梨県)

  みしょうたいさん 標高1682m。

 御正体山は日本二百名山に選ばれている山だ。  山中湖からは北東の方角にあり、 距離にして10kmもない。 もちろん富士山にも近く、 東京から短時間の距離にありながら、登る人は少ないようだ。 理由は展望には恵まれていないせいに違いない。
 この二百名山の中でも指折りの地味な存在の御正体山に、 2008年3月に登ってきた。 最初の登山が1991年だったので、 17年ぶりの再訪である。 前回は三輪神社から上り、 山伏峠に下りたが、 今回は道坂隧道から上り、 三輪神社に下るルートにした。
 出かけたのは3月2日の日曜日。 日帰りで登山に出かけるとき、 土日のどちらかを選ぶとなれば土曜日にしたい気持ちが強い。 疲れが残っても翌日が休みであれば休養できる。 今回、日曜日になったのは、 土曜日より天候が安定し雲が少ないと思われたからだ。
 自宅を5時半ころ出て、 地下鉄、中央線、富士急行と乗り継いで都留市駅に向う。 最近はSUICA一枚で首都圏の公共交通機関のほとんどに乗れるようになったが、 富士急行はまだSUICAを導入していないのは意外だった。
 都留市駅に降り立ったのはなんと筆者一人だけ。 休日の朝とはいえ、これでは鉄道経営も楽ではない。 改札口を出るとすぐに登山姿の男性から声をかけられた。 御正体山に登るのなら、タクシーに相乗りしませんかという。 当てにしていたバスがなく、 タクシーの同乗者を探して待っていたらしい。 私はバスの便がないことをあらかじめ調べて知っていたので、 最初からタクシーを利用するつもりでいた。 それが相乗りできれば費用の点で大助かりなので、 二人してタクシーに乗り込んだ。 目指すのが同じ道坂隧道の登山口で好都合だった。 山間に入ると日陰に雪が出てくるが、 道路には雪は残っていない。 トンネルの出口でタクシーを下りる。 ここが今回の登山口だ。
 準備をして雪の上を歩き始める。 最初は林道だがすぐに終わってしまう。 ヒノキの植林地の中に付けらた登山道を尾根を目指して登る。 日の入らない急斜面は、雪が凍っているので神経を使う。 20分ほどで尾根の上に出る。 この尾根は御正体山と今倉山を結んでいて、 御正体山は南西の方角だ。 いったん尾根に上がれば大して急な場所はないが、 登り降りの繰り返しである。 概ね左側にヒノキの植林地、右側がカラマツの林である。 展望はほとんどない。
 今回は登山用のストックを初めて持ってきて、 その使い初めである。 昨年60歳のお祝いとして、職場の仲間がプレゼントしてくれたものである。 ストックがあれば歩行中にバランスをとるのが楽で、 体力消費の点からもよいことは、 ピッケルの使用感覚から想像できていたことだが、 使うのをためらってきた。 道具を使っていったん楽をすると、 それに頼ってしまいそうなのがいやだったのだ。 だが、昨秋に三百名山の全山登頂を達成して一区切りつき、 そろそろストックをつかってもいいだろうという心境になったわけである。
 やがて白井平への分岐点につく。 このあたりから雪も深くなり、 傾斜も増してくる。 頂上へあと一息のところで、 アイゼンを着けることした。 登りは頂上までアイゼンなしで問題なさそうだったが、 下りは必要になりそうな感じである。 今回持ってきているアイゼンは、 いわゆる4本爪の軽アイゼンで、 何年も前に購入したものだがまだ使ったことがない。 それをいきなり下りで使うのは不安があるので、 まず登り斜面で感じをつかんでおいたほうがよいとの判断したため。
 頂上には、タクシーに同乗した男性が一足先に着いていた。 りっぱなベンチがあり利用させてもらう。 しばらくして、少し年配の単独の登山者が、 同じルートから到着し、頂上は3人になった。 山の話などをしながら、めいめい昼食を食べる。 私はビールを飲みながら、コンビニのおにぎりを頬張る。
 天気予報では終日快晴と思われたが、 薄雲が広がり出していた。 そのせいか、しばらく休んでいると体が冷えてくるほどだ。
 45分休んたのち、 三輪神社に向かって出発。 ブナの巨木の間を縫って下り始める。 ところどころに急斜面があり、 アイゼンを効かせながら足を進める。 初めて使う軽アイゼンがどれほど信用できるか今一つ不安で、 思いっきり足を踏み出せない。 アイゼンを使うことが予想される山では、 4本爪の軽アイゼンでは少し役不足のようだ。
 総じてこちらの三輪神社に続く尾根のほうが、 朝登った道坂隧道からの尾根より雪が深い。 下りながら、登山道沿いの木々で蝶の卵を探すが、 尾根の上はあまり条件がいいとは言えず、 成果はなかった。 登山道の最後のほうは尾根からはずれて、 舗装道路に出て終わる。
 三輪神社の鳥居に着くと、 車で湧水を汲みに来ていた地元の年配の男性に出会った。 水を飲みながら話をしていると、 帰り道だからと谷村町駅まで彼の車に乗せてもらえることになった。 おかげで、帰りも交通費を節約することができた。

 歩行記録  2008/03/02 登り 3h15m 下り 2h15m


 道坂隧道から尾根に上がり、 しばらく歩くと伐採地になり、 富士山が御正体山の肩から少しだけ顔をのぞかせている場所がある。
 2008年の写真3枚は、 すべてPENTAX K10D・DA★16-50mmF2.8ED AL[IF]SDMで撮影。

 白井平への分岐で、 御正体山に続く尾根を見上げる。 ここまで来ると、頂上はそう遠くない。 雪も深くなってくる。

 頂上。 雪の深さは30cm程度だろうか。
 偶然一緒になった単独行の男性登山者二人と、 世間話をしながらベンチで食事。
 このころには薄雲が広がっていた。

 1991年1月14日の山行時に撮った三輪神社。 この時はこの三輪神社から歩き始めた。 2008年の3月2日は、頂上からここに下ってきたが、 三輪神社の鳥居は17年前と変わっていなかった。

 展望に恵まれない山だが、 峰宮跡付近で木の枝越しに富士山が見える。 1991/1/14撮影。

 御正体山頂上から奥岳に向かって少し下った伐採地で撮影した、 富士山と南アルプス(右手奥)。 1991/1/14撮影。

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