権現岳(山梨県)
 編笠山(山梨県/長野県)


ごんげんだけ 標高2715m。
あみがさやま 標高2524m。

 八ガ岳南部にある権現岳と編笠山はその山容が対照的で面白い。 権現岳は岩山で荒々しく、一方の編笠山はその名のごとく丸く女性的である。 多分、山の生成過程が違っているためだろう。
 八ガ岳は私にとって個人的に縁の深い山である。 大学の探検部に入って初めて本格的な装備で高い山を歩いたのが北八ガ岳で、 社会人になってから始めた冬山登山の最初の山も八ガ岳だった。 その後も主に冬に、会社の山仲間と一緒に頻繁に通った山域である。 東京からさほど遠くなく、豪雪地帯でもないので土日の2日間で十分楽しめるからである。 阿弥陀岳の北稜、北西稜、南稜、赤岳の主稜、ショルダーリッジ、 横岳小同心クラックなどを行者小屋に幕営して登ったものである。 しかし赤岳の南側に足を延ばしたことがなく、権現岳と編笠山が気になる存在のままだった。
 2003年の10月初めの特に予定を入れていなかった週末に、 天気が良さそうだったので日帰りでこの2山に登った。 早朝、日の昇る前の5時に車で家を出た。 中央自動車道を小淵沢ICで下り、編笠山に向かって舗装道路を北上すると観音平である。 到着が7時過ぎ。 そう遅い時間とも思わなかったが、広い駐車場は30台あまりの車で満杯で、 路上駐車することになった。
 7時半にカメラと昼食を持って歩き始める。 カラマツが主体の緩やかな斜面が続く。 約30分で雲海展望台に着く。 高曇りだが富士山と茅ガ岳が見えている。 このあと少しずつ傾斜が増し、木々もミズナラなどが多くなる。 葉はまだ緑で、期待していた紅葉はもう少し先の様子だった。 押手川という風変わりな名前の枯れ川が編笠山と青年小屋への分岐で、 ここは編笠山への道をとる。 このあたりからコメツガなどの針葉樹が多くなり傾斜も一段ときつくなる。 木の丈が低くなると正面に南アルプスの峰々が見えてくる。 逆光のせいで黒々としている。 上空の雲も徐々に薄れてきて青空が広がり始める。 好天が期待できそうな感じがしてくる。 頂上が近くなると木がなくなり、 今まで見えなかった北方に連なる峰々の景色に期待が高まる。 岩石が累々と積み重なった広い山頂に着くと、 そこは絶好の展望台で登りの疲れを忘れさせてくれる。 権現岳、赤岳、阿弥陀岳の威容が目に入ってくる。 しかし薄雲が広がっていて、 真っ青な空を背景にした景色ではなかったのが玉に瑕である。 まわりでは少し前に到着した人々が思い思いに休んで記念写真を撮っている。 風も弱く穏やかな天気だが、 さすがに10月に2500mを越える山頂だけあってしばらくすると体が冷えてくる。
 30分近く休んだあと、青年小屋目指して下る。 正面に次第に大きくなる権現岳を見て、 巨石の上を飛びはねながら歩くと15分で小屋に着いた。 青年小屋は鞍部にありながら明るく開放的な雰囲気の場所にある。 ここからいったん樹林帯の中に入ったのちノロシバという展望台まで上がると、 ギボシ南面の岩場にさしかかる。 上部には鎖場もあったりしてけっこう高度感がある。 小さな建物の権現小屋まで来れば権現岳の頂上はすぐだった。 岩峰の上が頂上になっている。 岩にもたれてしばらく景色を眺めながら休憩する。 編笠山の登りでは青空が広がりそうに見えたのに、 実際には逆に雲が増えてきてすっきりとした晴天にならなかったのには落胆した。
 昼食を取りながら下りをどこにとるか迷った。 三ツ頭を通って下る予定だったのだが、 登りに頂上を踏まずに通り過ぎたギボシが格好よく見え、 その頂に立ってみたい気持ちが湧いてきたからだ。 結局その誘惑に勝てず、ギボシの頂上を踏んで帰ることにした。 ギボシの頂上は登山路からほんの少し離れているだけだった。 南を向いた3体の石像があり、眺めも予想通り素晴らしかった。 ただし雲が少しずつ厚みを増していたため、 景色の色彩感が失われて単調になっていた。 あとは青年小屋まで往路を下り、巻き道を通って押手川の分岐に戻った。 この分岐で腰を下ろして休んでいると、編笠山から下りてきた若い女性二人に出会った。 二人の会話を聞いていると、 富士見高原ゴルフ場の登山口に下りるつもりが、 間違って観音平への道を下りてきたらしい。 ここから編笠山を登り返すのも大変なので、 観音平に一緒に下りて私の車で富士見高原ゴルフ場まで送ることにした。 女性二人と話をしながら歩いたのであまり退屈もせず、 14時半には観音平に下ることができた。
 富士見高原ゴルフ場に寄って二人を降ろしたあと、中央自動車道を使って帰宅した。 渋滞もなく18時前には家に着くことが出来た。 編笠山のように登山口が高速道路のICから近い山は、 車を使うと家からの移動時間が短くてすむのがいい。

歩行記録 2003/10/04 登り3h30m(観音平ー編笠山−権現岳) 下り3h15m(権現岳−観音平)

 押手川。針葉樹林に囲まれた静かな空間。 ここで、編笠山に直接登るルートと青年小屋への巻き道が分かれる。
 写真はすべて、NIKON COOLPIX 5700で撮影した。

 岩が積み重なった編笠山の頂上。 絶好の展望台で、多くの人が休んでいた。 さすがに10月ともなると風が冷たく、休んでいると指先が冷たくなってくる。

 編笠山の頂上から見た阿弥陀岳、赤岳、権現岳の山々。 真っ青な空を背景にした景色を期待してきたのに雲が多く、少々がっかりした。

 編笠山から青年小屋に向かって下る途中の景色。 足元に青い屋根の青年小屋が見え、その背後に権現岳迫っている。 権現岳のピークは写真の右端にあるが、 その左隣にあるギボシのほうが端整なピラミッド型で目を引く。

 ギボシ付近から見た権現岳とその頂上直下にある権現小屋。

 ギボシ付近からの眺め。 阿弥陀岳と赤岳。 その間に硫黄岳と横岳が顔を出している。

 ギボシの頂の上にある3体の石像。 かって信仰登山が盛んだったころに運び上げられたものなのだろうか。 石像の表情は少々ユーモラスにも見える。

 ギボシの下りから眺めた編笠山。 その名の通り、編み笠を連想させる形をしている。

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