茂林寺(群馬県館林市) 2017年 1月
 茂林寺(もりんじ)は群馬県館林市にある曹洞宗の寺院で、山号は青龍山である。
 室町時代の15世紀に大林正通禅師が開山した古刹で、昔話「分福茶釜(ぶんぶくちゃがま)」のルーツとなった伝説によって広く知られている。
 2017年1月2日に、初詣を兼ねて電車を乗り継いで出かけてみた。
 最寄り駅は、東武伊勢崎線の「茂林寺前」駅。
 「茂林寺前」駅に降り立つと、思ったより寒くない。 上州の冬といえば、空っ風が有名だが、この日は最低気温も氷点下にはならず、風も弱く、穏やかな日よりだった。 おかげで、外を歩いても苦にならない。
 駅はこじんまりとしていて、田舎であればどこにでもありそうな佇まいである。 変わったものといえば、分福茶釜にちなむタヌキの像が置かれているくらいである。 駅前を見回しても、商店街と言えるほどの数のお店は見当たらず、閑散としている。 茂林寺の方向を示す表示はあるが、駅に周辺案内図といった観光客向けの説明板の類はない。
 駅から茂林寺までの約600mの間には、「ぶんぶくちゃがま絵本案内板」が数か所に設置され、これを見ながら歩けば、お寺にたどり着けるようになっている。 お正月なので、初詣客でにぎわっているのではないかと予想していたが、意外にもそれらしい格好の人を見かけないうちに、 総門近くに数軒のお土産物屋の並ぶ参道まで来てしまった。 お土産物屋の中にはシャッターを下ろしているお店もあるくらいだから、初詣客はそれほど多くはないのかもしれない。 時折、車でやって来た家族連れの参拝客が歩いているだけで、いたってのんびりとした時間が流れていた。
 総門をくぐって境内に進むと、山門までの20mほどの両側には姿かたちの異なるタヌキの像がずらりと並んで、参拝客を出迎えてくれる。 17世紀末に建立されたという山門は茅葺屋根で、なかなかに風格がある。 山門の先にこれまた茅葺屋根の本堂がある。 こちらも素朴で年月を感じさせる建物だ。 本堂前にはシダレザクラの大木があり、春のお花見もよさそうだ。
 300円の拝観料を納めると、本堂内に上がることができる。 順路に従って、本堂の中を進むと、奥まった部屋に分福茶釜が展示されている。 一見すると特別な茶釜には見えない。 それもそのはずで、お寺に伝わる伝説では、タヌキが化けた守鶴という僧が、汲めども尽きない茶釜をお寺に持ち込んだ、という話になっている。 これがのちに、タヌキが茶釜に化けるという、よく知られたお伽話に発展したということらしい。
 ほかにも、分福茶釜に関連する種々雑多なものが所せましと並んでいる。 展示は洗練されているとは言い難く、学校の文化祭の展示のようだ。 それはいいとしても、有料なのだから、説明のパンフレットくらいは用意して欲しいものである。
 一通り茂林寺での拝観を終えてから、隣接する茂林寺公園を歩いてみた。 昔は、このあたり一帯に多くの低地湿原があったそうだが、大部分が開発で消え、今や茂林寺公園の湿地は貴重な存在らしい。
 そういえば、乗換駅の久喜からの東武電車に乗っていて気付いたのは、地面の起伏が少ないことだ。 渡良瀬川と利根川に挟まれた平坦な地形が、多くの低湿地と湖沼を作ったようである。 その一つが、茂林寺公園の湿地ということのようだ。
 帰りは、また茂林寺前駅まで歩いて戻り、東武電車に揺られて家路についた。

 ところで、なぜタヌキやキツネは化けるとされてきたのだろうか。 ネットで調べてみると、いろんな説が紹介されている。 どれもなるほどとうなずかされるが、決定版はないようである。

 写真は、CANON 5D Mark U・EF-24-105mm F4L IS USMで撮影。


 茅葺屋根の山門は17世紀末の建立。
 総門から山門(写真の中央)に続く参道の両側には、21体のタヌキの像がずらりと並んでいる。
 この山門の向こう側に本堂がある。
2017/1/2撮影

 室町時代の15世紀に建立され、江戸時代の18世紀に改築されたという本堂も、茅葺屋根で風格がある。
 右手前に見える木はシダレザクラ。
2017/1/2撮影

 茂林寺北側に隣接する茂林寺公園
 館林一帯には、このような低地湿原が多く見られたそうだが、開発が進み、今や希少な存在とのこと。
 遊歩道が整備され、散策することができる。
2017/1/2撮影

 公園内を流れる川に架かる橋のたもとにも、茶釜に化けたタヌキのオブジェがある。
 このあたりでは、いたるところでタヌキの像に出会える。

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