深大寺(東京都調布市) 2011年 3月
 深大寺(じんだいじ)は調布市にある天台宗別格本山で、山号は浮岳山である。
 東京都の寺院としては、浅草寺に次ぐ長い歴史を持っている。
 深大寺は都心部から少ししか離れていないのに、武蔵野の面影が色濃く残る場所として、 つまり手軽に田舎の雰囲気が味わえる場所として、昔から人気の行楽地だった。
 筆者が最初に訪れたのは、小学生のころの1950年代で、父に連れられてである。
 その後しばらく間を置いて、2010年になってから深大寺を訪れる機会があった。 勤めていた会社の、かっての仲間からウォーキングの誘いがあったからで、武蔵小金井駅から野川沿いに深大寺にいたるルートを歩いた。 昔の記憶では深大寺周辺には田畑が広がっていたはずだが、さすがにそういう景色はもうほとんど残っていない様子だった。 しかし、野川も含めてこのあたりはまだまだ自然が多く残っているので、 手っ取り早く緑の環境に浸るにはよい場所であることに変わりはない。
 以来、しばしば同じ上記のウォーキング仲間とあるいは一人で季節を変えて歩いている。 野川に沿って遊歩道を歩けば適度な運動量になるし、隣接する神代植物公園も見どころが多い。
 名物の深大寺蕎麦も深大寺散策の楽しみの一つだ。 深大寺周辺は稲作に適さない土地のため古くからソバが栽培されていたようだが、 現在のように蕎麦店が軒を並べるようになったのは1961年に神代植物公園ができてからのことで、 逆にソバを栽培する農家はそのころにはなくなったらしい。
 また、仏像に興味のある者には、重要文化財に指定されている銅造釈迦如来倚像は必見だ。 関東地方に現存する数少ない白鳳時代の仏像で、明治時代に元三大師(がんざんだいし)堂の壇下から見つかったのだそうだ。 どのような経緯で深大寺に伝わったのかはわかっていないという。 なにしろ、この仏像は深大寺の創建以前に作られているのである。 今は、コンクリート造りの釈迦堂内に安置されていて、ガラス越しに拝観できる。
 その後の2017年9月に、同像は国宝に指定されている。
 写真は、PENTAX K-5・DA★16-50mmF2.8ED AL[IF]SDMおよびDA 50-200mmF4-5.6ED WR、Rollei35sで撮影。

 2025年の春には、元三大師堂に祀られている秘仏の元三大師像の特別開帳が行われ、筆者も拝観する機会があったので、そのときの印象を記しておく。
 元三大師とは、平安時代中期に天台座主となった高僧・慈恵大師良源(じえだいしりょうげん)のことで、命日が正月3日だったことから元三大師と称されるようになった人物で、おみくじの考案者としても知られる。
 後に、その徳にあやかって厄除けにご利益があるとして、天台宗の寺院では多くの元三大師像が作られたようだ。 深大寺の元三大師像は鎌倉時代に造られたとされるが、秘仏となっていてご開帳は50年に一度となっていた。 2020年には東京都指定有形文化財となっている。 今回は虫害などで損傷が進んだ像の、3年にわたる大規模な修理が完了したことを記念しての特別ご開帳である。
 筆者が出かけたのは、ご開帳期間終盤の平日。 拝観開始時間の30分ほど前にお寺に着いたが、元三大師堂の裏手にはすでに長蛇の行列ができ、堂内に入るまでに1時間ほどかかった。 薄暗い堂内に、黒光りする精悍なお顔が見上げるような位置にあった。 なにしろ、坐像なのに像高が2m近くもあり、肖像彫刻としては日本最大とされるのだから、その迫力に圧倒される。 制作の動機として、元寇の脅威への対応とする説があるようで、そうであれば力強く迫力のある表情もなるほどと納得できるような気がしてくる。
 今回の特別ご開帳に際して頂ける小冊子にも触れておきたい。 表紙も含めるとA4判16ページもあり、元三大師像の大修理にまつわる事柄が詳しくしかも平易に説明されている力作と言える。
(この項、2025年6月追記)


 正面は1695年に建てられた山門。 屋根が茅葺で、落ち着いた雰囲気だ。
 快晴のこの日は、午前中にウォーキング仲間と武蔵小金井から野川沿いに歩き、お花見を楽しんだ。
 適度な運動をした後の深大寺のお蕎麦は、また格別だった。
2018/3/30撮影

 山門から見た枝垂桜と本堂
2014/4/13 MINOLTA CLE・フジカラー400で撮影

 手水舎
 深大寺界隈は清水が豊富。 深大寺創建以前から水神信仰があったようだ。

 境内には、そば守観音の像がある。 観音菩薩はいろいろな姿に変身して世の中を救済するとされるが、 さすがは蕎麦と縁の深い深大寺だ。
上の写真は2011/2/11の撮影だが、2013年になってこのそば守観音像は境内からバス停近くに移設された。

 深沙大王堂
 深沙大王とは、仏教の守護神の一人で、玄奘三蔵のインド大旅行の際、 彼を守ったと伝えられている。
 深大寺の名前はこの深沙大王にちなんでいる。
2011/2/11撮影

 門前には蕎麦屋さんが並ぶ。
 周囲には約20のお店があるという。
 この日は、雪が降っていて人通りがほとんどなく、古風な雰囲気がいっそう色濃かった。
2011/2/11撮影

 鐘楼の前に並んだだるま
 深大寺のだるま市は、日本三大だるま市の一つに数えられている。
 Rollei35s・フジカラー100で撮影した一枚。
2013/3/03撮影

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