法輪寺(生駒郡斑鳩町) 2014年 6月
 法輪寺(ほうりんじ)は、山号を妙見山と称し、聖徳宗(法隆寺が総本山)の寺院である。
 土地の名前から三井寺(みいでら)とも呼ばれているそうだ。
 創建のいきさつについては2つの説があるという。 一つは、聖徳太子の病気平癒を祈願して、子の山背大兄王と孫の由義王が建立した、という説。 もう一つは、百済の開法師・円明法師・下氷新物の3人が建立したという説である。 どちらにしても7世紀のことだから、長い歴史を持っていることになる。
 筆者が訪れたのは6月の初めで、近くの法起寺を拝観したあと、両側に畑の広がる道を歩いて法輪寺に向かった。 10分程度の道のりだから、季節がよければ、散策に適度な距離だが、 この日は梅雨の合間に太陽が顔を出すという暑い日で、周りにあまり注意を向ける余裕がなかった。 目印になる三重塔は、遠くからも見えるだろうと思っていたら、東側から近づく場合、 木々にさえぎられて、表門の近くに来るまで見えないのだった。
 境内に入って、左手にそびえたっているのが三重塔。 1944年に落雷で焼失し、1975年に再建された塔だ。 もちろん木造である。 再建からすでに40年ほどが経っているので、落ち着いた風情を醸し出している。 やはり昔の姿で堂宇を再現するなら、木造がいい。
 三重塔を横に見ながら、奥に進むと講堂がある。 講堂とはいっても、実際はコンクリート造りの収蔵庫である。 中に入ると、仏像がずらりと並んでいる。 その多くが重要文化財に指定されているのだが、まず目につくのが、 ひときわ大きくて中央に安置されている十一面観音菩薩立像だ。 平安時代の作で、像高が約4mある。
 その十一面観音立像の両隣りに、飛鳥時代に作られた薬師如来坐像と虚空蔵菩薩立像の2体がある。 薬師如来坐像は、薬壺を持たない古い形式の像である。 面長の顔や台座にかかる衣の形などから、法隆寺金堂釈迦三尊像の釈迦如来座像を連想させる。
 一方の虚空蔵菩薩立像は、顔がやはり面長で細身、流れるような衣文などから、 一見して法隆寺の百済観音像に似ていると感じる。 違うのは、こちらの像の顔が体に対してずいぶんと大きいことだ。 だが、優美であることに変わりはなく、しばらく見とれてしまった。
 法輪寺の諸仏像は、背後も通路になっているので、光背の裏側などの様子もわかる。 拝観者に親切な仕組みになっている。
 法輪寺は、法隆寺のように国宝級の像が並んでいるわけではないが、 仏像に興味のある者には外せない寺院である。
 写真は、PENTAX K-5・DA★16-50mmF2.8ED AL[IF]SDMで撮影。


 南側から見た法輪寺の三重塔
 右側に見えるのは表門
2014/06/08撮影

 三重塔は、1944年に落雷による焼失後、1975年に宮大工・西岡常一氏によって再建されたもの。
 右奥は講堂だが、現在は鉄筋コンクリートの収蔵庫となっていて、本尊はじめ諸仏が安置されている。
2014/06/08撮影

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