大覚寺(だいかくじ)は京都市右京区嵯峨にあり、山号を嵯峨山と称する真言宗大覚寺派の大本山である。
加えて、華道嵯峨御流(さがごりゅう)の総司所(家元)でもある。
大覚寺の正式名称は「旧嵯峨御所大覚寺門跡」で、嵯峨天皇(平安時代)の離宮が前身という歴史のある皇室ゆかりの寺院である。
筆者が訪れたのは、明るい日差しが降り注ぐ4月である。
大門から中に入り、宸殿、御影堂(みえどう)などの建物内部を拝観する。
映画の時代劇などの撮影に使われることが多いそうだが、なるほど見栄えのする建造物や眺めである。
境内の東に広がる大沢池は、大覚寺を語る上で外せない構成要素である。
洞庭湖を模して造られたというだけあって、広々としていて開放感があり、池のそばには、名古曽の滝跡がある。
百人一首にある大納言公任(きんとう)の「滝の音は 絶えて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞こえけれ」に読まれている滝跡である。
鎌倉時代には、亀山法皇や後宇多法皇がここで院政を行うなど政治の舞台になった経緯のせいか、境内を歩いての感想は、寺院らしさより御所の名残が色濃いという印象だ。
写真は、CANON 5D Mark U・EF-24-105mm F4L IS USMで撮影。
2025年には、東京国立博物館で、開創1150年記念の特別展「大覚寺展」が催され、多数の寺宝が展示されていた。
中でも目を引いたのは、狩野山楽の襖絵「牡丹図」。
全18面が展示されている様子は圧巻。
22mもの幅にわたって金地に牡丹の花が描かれていて豪華絢爛そのもの。
同じく狩野山楽の襖絵「紅白梅図」も、生命力溢れる太い幹と華やかな紅白の梅の花が明るい春の雰囲気を演出している。
仏像では、円派の仏師・明円の現存する唯一の遺作とされ、かつ平安時代後期の仏像を代表するといわれる五大明王像が注目すべき展示品だ。
5体とも像高が70cmに満たない比較的小ぶりの像ながら、近寄って見ると保存状態が良いせいか精緻に彫像されているのがわかる。
力強さには若干欠けるかもしれないが、全体に優美で調和のとれた像に仕上がっている。
門跡寺院らしい展示品としては、後宇多法皇など歴代天皇による書が挙げられる。
(この項、2025/1に追記)