う な り





 うなりを聴くことができます。
 うなりの音源データは,Mathematicaという数学ソフトで作成してあります。




 うなりを聴く 

  (ボタンを押すと,音が出ます。音量にご注意!



 グラフはぞれぞれの合成音の1秒間 の時間変化です。この間に振幅が「0」になる部分が何回あるかで,1秒間のうなりの回数が決まります。


    音量調節:   
 :☆振動数440Hzと振動数441Hzの合成音(440Hzはドレミの『ラ』の音,ラジオの時報音です)。
  1秒間のうなりの回数は,441 - 440=1(回) です。 


    音量調節:   
 :☆振動数440Hzと振動数442Hzの合成音。
  1秒間のうなりの回数は,442 - 440=2(回) です。 


    音量調節:   
 :☆振動数440Hzと振動数435Hzの合成音。
  1秒間のうなりの回数は,440 - 435=5(回) です。 


    音量調節:   
 ☆振動数440Hzと振動数349.23Hzの合成音(『ラ』と『ファ』の合成音)。
  うなりにはなりません。 



概 要

 振動数がわずかに異なる波が重なると,振幅が時間的にも空間的にも大きくなったり小さくなったりを繰り返します。この現象を「うなり」といいます。音波であれば,音の大きさが周期的に変化する現象です。楽器の調律などは,うなりが利用されています。
 うなりは音波だけに限りません。振動数がわずかに異なる2つの振動が重なるときの現象ですので,自然界ではいろいろな形のうなりが見られます。本稿では,音波を例に話を進めます。

 まずはじめに,勘違いのないよう,注意が必要です。
 我々が音を聴くとき,音波の『山』と『谷』を識別しているわけではありません。1秒間に何百回,何千回と振動している空気振動の山・谷を耳が識別しているのではなく,山・谷によって耳の鼓膜が何回振動したか,振動の回数を感じ取っているのです。この振動の回数によって,音の高低を識別しているのです。
 では,音の強さは何で決まるか。それは,振動の強さです。鼓膜が大きく揺さぶられたか小さく揺さぶられたか・・です。すなわち音波の『山・谷の大きさ』,つまり『振幅』の大小によって,音の強弱を感じているのです。
 再確認します。音は山・谷を識別しているのではありません。波の強弱は,『山・谷の大きさ』です。間違えないように。

 本論に入ります。
 振動数が異なる2つの音波が重なったとき,たとえば2つの音波の山と山が重なれば,合成音波の振幅は瞬間的に最大になります。しかし徐々に2つの音波の山どうしはずれてきて,合成音波の振幅は小さくなってきます。ずれの度合いが大きくなって,2つの音波の山と谷が重なると,合成音波の振幅は瞬間的に『0』になります。さらにずれの増大が進んで,再び2つの音波の山と山(場合によっては,谷と谷)が重なると,合成音波の振幅は再び最大になります。
 したがって,合成音波の振幅が最大になる瞬間からつぎに最大になる瞬間までの時間の間に,振動数の大きい音波の振動回数がちょうど山1個分多くなったとき,2つの音波の山どうし,あるいは谷どうしが重なることになります。したがって,次のことが言えます。
 ☆時間的には, 2つの波の
   振動回数の差=1
になるごとにそれぞれ振幅が最大となり(あるいは逆に,振幅が「0」となる,と言ってもよい),うなりが起こることになります。これが,うなりの起こる物理的理由です。
 走るのが速い人と遅い人がトラック競走をしたとします。2人は始めスタートラインで並んで走り出しますが徐々に距離が開き,つぎに2人が並ぶのは,速い人が遅い人をトラック1周分を追い越したとき,つまり速い人が遅い人より1周分多く走った瞬間です。うなりも,これと似ていますね。
 うなりの公式の導出を含めた詳細は,「解説」を参照して下さい。

 しかしここで注意しなければならないのは,『うなり』現象は,2つの波の振動数の差があまり大きくない範囲でのみ観測されるものであって,振動数に大きな開きがある場合は「うなり」らしきことは起きなくなってしまいます。上の『和音』で確認してください。そのグラフを見てもわかるように,もはや周期性を持って振幅「0」となる部分が現れなくなっています。