南方貨物線  消え行く未成線の記憶

【はじめに】


旧国鉄・南方貨物線は、1950年代に戦後復興にともなう経済成長で中部地方においても鉄道貨物の輸送量が大幅に増加し逼迫を極めたことから、大府駅から名古屋貨物ターミナルや笹島貨物駅を経て稲沢貨物駅に至る貨物用の別線を新設して、貨客分離をめざし計画された路線です。

計画では東海道線を通る貨物列車を旧笹島貨物駅や稲沢貨物駅で列車を折り返すことなく、コンテナ扱いに特化した近代的な名古屋貨物ターミナル駅に直接入線することが可能だったほか、現在のあおなみ線の小本駅付近から関西線の四日市方面へつながる短絡線も構想されました。

しかし建設が進み、ほぼ完成のところで国鉄改革のあおりで工事が凍結されてしまいましたが、このように経済状況や財政難のほか地形などの要因で建設が凍結されてしまった路線は未成線と呼ばれ、じつは国内各地に存在します。

そして2000年代に入り、工事凍結状態のまま30年経過した南方貨物線は解体されることが決定、新設される中部国際空港への連絡鉄道への転用も一時検討されたものの、これも結局断念されて一度も活用されることなく終焉を迎えました。 

その工事費用は、350億円の建設費用に対し解体費用300億円程度とも報じられています。

本年は南方貨物線が本格的に解体・撤去され始めてから10年目を迎え、本ページ執筆時すでに高架橋の大部分が撤去されてしまいましたが、解体開始された2005年前後から管理人が撮りためていた解体工事を中心とした画像を大府駅側から辿ったり、あるいは時系列を追いながら収めてあります。

また、南方貨物線ネットワークに関連したJR武豊線、名古屋臨海高速鉄道や旧国鉄瀬戸線にも可能な限り触れてあります。



【参考文献】

JTBキャンブックス 鉄道廃線跡を歩く 宮脇俊三著  

講談社 東海道ライン 全線・全駅・全配線 豊橋-名古屋エリア 川島令三著

公益社団法人 鉄道貨物協会 2012 JR貨物列車時刻表 

【ご協力】 貨物鉄道博物館(2012.7取材)