詰将棋おもちゃ箱記念作品星河作品展
海老原辰夫「星河」出版記念作品展 解答A
記念作品
記念作品

海老原辰夫「星河」出版記念作品展の星河Aの解答を発表します。
解説は作品集をまとめられた角建逸さんにお願いしました。


海老原辰夫「星河」出版記念作品展 解説 角建逸

海老原氏の作品集収録予定作の中に未発表の長編二作がありました。 これをどこにも発表しないのはもったいないと思い、昨年波崎黒生氏「一番星」のときと同様に、本サイトで記念出題することにしました。 ご了承いただきましたTETSUさん、解答者のみなさまに厚く御礼申し上げます。


星河A 海老原辰夫

棋譜ファイル(柿木将棋kif形式)

出題時のコメント:
合駒に注意 61手

星河作品展A 海老原辰夫   33香成、同銀、22金、同玉、21飛、同玉、
  31歩成、12玉、15飛 (途中1図)

おかもとさん:
序を少し考えてギブアップ。なるほど、22金から21飛でしたか。

43角に働いてもらうためには、まずは31歩成を実現しないといけない形。
そこで、持駒を惜しげもなく捨てて途中1図。

途中1図は9手目15飛まで 15飛に14歩中合は「大駒は近づけて受けよ」の受けの常套手段。
「15飛、14歩合という辺りからの素材」との作者の感想があります。
あくまで推測ですが、当初の配置は途中1図の5筋までの部分だったのではないでしょうか。

【途中1図以下の手順】
  14歩合、同飛、(イ)13金合、22金、同銀、
  34角成、23銀、24桂、22玉、32桂成、同銀、
  13飛成、(ロ)同香、32と、同玉、33銀、41玉、
  42歩、同馬、同銀成、同玉、24角 (途中2図)

(イ)13歩合は、22金、同玉、24飛がありますから、13はそれを防いで金か銀。 (イ)13銀合ならば、24桂、同銀右、22金、同玉、32角成、12玉、13飛成以下です。
途中1図から手をつなげていく手順は、非常に実戦的でありながら、読みながらワクワクする感じがあります。
変化で読ませ、紛れで悩ませるのは、海老原氏の真骨頂と言える部分です。

占魚亭さん:
前半は軽快ながらもしっかりと読みを入れないといけないので、少し苦労しました。

途中2図は31手目24角まで もう一つ言及しておきたいのが(ロ)13同玉の変化。 以下14歩、22玉、32と、同玉、33銀、41玉、42歩、同馬、同銀成、同玉と進んだとき、 33角!、32玉、42金、21玉、11角成、同玉、13香以下。
この変化は香が11にいるので33角で詰みますが(11角成と香が取れる)、途中2図では香が13に逃げているので、24角でないといけません。
手順に内包する微妙な違い、気持ちの良い駒捌き、駒繰りは、氏が短編で培った技術に他なりません。
途中2図の局面はすでに31手目になっています。

【途中2図以下の手順】
  53玉、35角、42玉、43金、41玉、
  23馬、51玉、33馬、61玉、62角成、同銀、
  52金打、72玉、62金、同玉、44馬、72玉、
  73歩、82玉、71馬、同玉、72銀、82玉、
  83銀上成、91玉、81銀成、同玉、72歩成、91玉、
  82と まで61手詰 (詰め上がり図)

ここからの収束をどうするか。作者もいろいろ悩まれたようです。
当初見せてもらった図は、序の4手がなく、85手詰というもので、そちらが作品集の最後を飾る予定でした。
その図は、途中2図から、まだひと山もふた山もある作品でしたが、短く収束する違うバージョンがあるということで、見せていただいたのが本作。

たくぼんさん:
3手目21飛の紛れに嵌りました。22金がやはり筋がいいですよね。
次に19手目32とに嵌りました。桂成りとは意表を突かれました。
程よい難易度で心地よい解図感でした。
山下誠さん:
34角成あたりまで、序の難解さは作者の真骨頂。
後半は2枚の角を巧みに捌き切って、爽やかな印象が残りました。
今川健一さん:
主戦場は右辺。14歩の中捨合を含む功名な手順を経て王は左辺へ。
主力だった馬が消えて小駒だけでの収束は、作者満足、解者も大満足。

ただ、作者ご自身は本図で満足というわけでもない様子でした。
収束があまりに定型パターン(北原義治氏が多用していました)なのが気に入ってはいない原因だと思われます。

池田健太郎さん:
短編作家らしい長編ですね。

詰め上がり図は61手目82とまで これが解者共通の感想ではないでしょうか。
手順をパーツとして見れば、個々の手順自体の感触は決して悪いものではないと思います。
ただ、解いた後、一局を振り返ってみたときに、手順全体の芯となるような狙いがないことに、一抹の寂しさを感じてしまうのは、 我々が既にいろいろな長編を見てきているからなのでしょう。
本作は、昭和40年前後からお持ちの素材。 その頃はまだ、短編をつなげたような中編、長編が発表されていた時代です。
そこを若干加味して、本作を眺めていただければと思います。
なお、本作原図の85手詰案は、作者の希望もあり、お見せしません。 もしかすると、そのパーツはまた別の作品のために取っておくつもりなのかもしれません。

S.Kimuraさん:
柿木将棋に頼りっきりで、変化も調べて、何とか最後までたどり着きました。 合駒が多くて難儀しましたが、最後は小駒だけになって、すっきりした感じがしました。
波多野賢太郎さん:
締切ということで、星河Aの1問だけ解答を送ります。
これは自力解答です。変化を読むのが大変で難解作でした。
2手目同玉や1五飛に対する合駒が特に難しかったです。
61手もよく手が続くものだと思いました。苦労した上、よく駒も捌けて詰上がり、とてもすっきりしました。
嵐田保夫さん:
久しぶりに骨のある問題に悪戦苦闘。中々早詰の罠から抜けることが出来ずに詰手数ヒントに助けられながら三日も掛かってしまった。
おかげで100番が解けなくなった。タイムアウトですが、悔しいので投稿します。
陽気なわらしべ長者さん:
作品集の名前通り流れる様な綺麗な作品でした。
当選したら是非冷たいドリンクを片手にじっくりと楽しみたいです。

海老原辰夫「星河」出版記念作品展 星河A解答:10名 全員正解

  嵐田保夫さん、池田健太郎さん、今川健一さん、S.Kimuraさん、おかもとさん、
  占魚亭さん、たくぼんさん、波多野賢太郎さん、山下誠さん、陽気なわらしべ長者さん


当選者は、星河Bの解答掲載時に発表します。