解説・全短評
大道棋よもやま話、第27回のテーマは「受けの裏筋、攻めの裏筋」。
受けの裏筋とは、定番の受けを誘い手として、違う受けで逃れるもの。
そして攻めの裏筋とは、代表的な詰筋を外したところに正解を作るものです。
本作には、この両方の裏筋が含まれています。
香歩問題の一番の誘い手は72歩から85香。
ここで84桂から83金の連続中合で逃れ、というのが定跡の妙防ですが、香歩問題は一番多く出題された類型なだけに、研究して知っている人も少なくありません。
そういう人をひっかけようというのが受けの裏筋。
84桂、83金の中合を取って、香成、桂成、金打ちで、87桂まで詰みだ、と手を出すと、85香にすました顔で83金合。 あれ、84桂合をしないのか、それなら、ええと、71歩成、91玉、83桂で詰むはず、と思ったら、71歩成に同飛! そのあと83香以下追いかけても、桂がないので「お客さん、惜しかったね」。
双玉のための配置かと思った61飛は、実はこの裏筋を成立させるための配置でもあったわけですね。
ちなみに、83桂の筋は94香に93角合が逆王手で逃れですが、93香合ぐらいでも91桂成に同飛で詰みません。
63桂は初級者向けの誘い手。
同飛の逆王手に気づいても、同金の逆逆王手で詰み、との読みは、75金や77銀の逆逆逆王手で失敗。
同飛、同角となれば、こっちの玉が詰められてしまいそうです。
72歩、83桂、63桂の普通の詰筋は全部誘い手、正解は攻めの裏筋、全く違うところにありました。
72金!、同玉、63桂成と行く筋。 本作は客寄せ問題なので、短手数で詰みますが、こういう攻めの裏筋を一見詰まないようにみせることができれば、より効果的です。
それでは解答者のみなさんの感想を。 解答到着順です。
- 永島勝利さん:
- 標記については以下のとおりで、ミスプリだと思います。これだと、持駒不要ですから。
- 市原誠さん:
- 香と歩を持っている意味が分かりません・・・
大道棋では、誘い手のためだけの駒はよくある配置。 持駒も例外ではありません。
- 加賀孝志さん:
- 初手72歩を考え苦労しました。
- 原田雄二さん:
- 超短手数でしかも、駒余り。正解なのでしょうか。
大丈夫、正解ですよ。
- 長谷繁蔵さん:
- 56香を置き忘れたので、初手83桂、初手72歩81玉85香83金合で1本取られました。
- 山下誠さん:
- 持駒は不要と思うが、着手を迷わせるために必要?
持駒なしでは誘い手が63桂だけになってしまうので、72金捨てもすぐに見破られそう。
- 岡崎行晃さん:
- 「あっ!」と言う間の九手詰ですね!
何で、この作品を懸賞問題に・・・?
裏筋の説明用でした。
小山邦明さん:
- 66玉が、61飛の直射や83桂不成以下の手順の香打に93角合の逆王手で逃れという仕組みとなる大変上手な配置だと思いました。
66玉配置に対して84角や96飛の逆王手があっても良いのではと考えた作品を送付します。
「駒余りなし」のほぼ完全作にはなりましたが、今回の作品の詰筋がとても良く、他の手順は余詰が出て思うようにいきませんでした。
96飛の合駒を発生させるために61香配置にするなど改作のためにいろいろの配置や手順を考えるのは楽しいのですが、鑑賞に堪える改作をするのはやはり難しいです。
大道棋では、手を出したくなる初形と誘い手が大事。下の方の駒を見て、こんなところまで追わなくちゃいけないのか、と思われそうです。
- 佐藤司さん:
- ホントにこれでよろしいのですか?正に「一目」でしたが・・・・。
気付けば一目、気付かないと大変。
- 谷口翔太さん:
- いろいろと試みて、最後に72金。
こんな手もあるなんて、大道棋は奥深い。
- 福村努さん:
- 持駒の香と歩は不要.
持駒なし,とすべき.
- 竹中健一さん:
- 持駒不要だけど大道棋っぽく紛れを作るため??
- 鈴木彊さん:
- 攻め方78飛の配置誤植でしょうか。(持駒不要の図でした)
4手目63同玉は73金(53金でなく)64玉74金まで
- 前田知弘さん:
- 飛車を使うには?
一般作として出題された方が簡単に詰みそうです。
- 詰山解道さん:
- 持駒があると使わなければいけないと思い込むとなかなか解けないように感じます。
大道棋向き問題?
- 前文人さん:
- 駒があまるので不安
香歩を使わず詰むので、持駒不要、ミスプリ? と思われた方も多かったのですが、大道棋では作意順よりも誘い手の方が重要。 そのためだけの駒も良く使われます。
大道棋は作品鑑賞より詰むか詰まぬか、お客さんとの勝負なので、収束の余詰や駒余りはあまり気にされません。
- 占魚亭さん:
- 意表の初手。83桂不成だと6手目に93角の逆王手で1本献上。
- 千葉等さん:
- 初手、7二金以外を考え一苦労。一寸ビックリ。
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