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金峰山から国師岳縦走
・10月13日(水)〜14日(木) ・天候 13日曇り 14日曇り
・日程 小淵沢駅(タクシー)金峰山荘〜中の沢出合い〜中間地点の展望台〜金峰山小屋(泊)〜金峰山〜鉄山下〜朝日岳〜朝日峠〜大弛峠〜国師岳〜北奥千丈岳〜夢の庭園〜大弛峠(タクシー)塩山駅
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金峰山長野側の渓谷 |
久しぶりの青空が奥秩父の山々にも戻る・・・・そんな期待と共に行った金峰山でしたが、去来するガスの合間が明るくなるたびに「オッ!」という感じて山小屋の窓にしがみついてみたりしましたが、ついに大きな展望は得られませんでした。それでも、二回ほど僅かな時間でしたが、金峰山小屋の窓から見下ろす角度で瑞牆山の岩場が雲の上に顔を出し、小川山も大きな山容をガスの合間にかいま見せました。金峰山に至る道の中で、最も金峰山らしいのは、増富温泉から瑞牆山荘を経て原生林の中を登り、大日岩の上から森林限界を越えて千代の吹き上げを通る道です。鬱蒼たる原生林を抜けて、山梨側が屹立した岩尾根を五丈岩を仰ぎ見ながら登る道は独特です。しかし、現在、最も多くの登山者がこの山頂に登るのは大弛峠からの往復だそうです。出発地点の標高が2400m近く、往復4時間に満たない時間で日本百名山に立てる最も安易なルートがもてはやされるのは当然かもしれません。僕自身が好きなのは唯一の長野側・金峰山荘の廻目平からの道です。小川山の岩場で知られる廻目平は、白樺の森し林立する岩峰、西股沢の清流が創り出す独特の世界です。「ここにいるだけでも素敵!」というクライミングにドップリと嵌まった連中が長期滞在する場所です。ここから沢を上流へと向かい、林道終点近くからいきなりの急坂を登り詰めて行く原生林の道。鬱蒼たる苔とシャクナゲの幼木、シラビソの森の独特のツーンと来る匂い、中間地点と呼ばれる小さな空間で僅かに瑞牆山と八ヶ岳が見える以外は一切の展望の無い暗い道。それが突然、放り出されるように森林限界に立つ金峰山小屋の前に到達する唐突さ・・・・。と同時に背後に広がる八ヶ岳から浅間山、谷川、日光の遮る物の無い大展望。小屋の裏からの南アルプスの姿。この解放感が最高です。奥秩父の山小屋の中でも最も優れたロケーションの中にあると言っても過言では無い・・・と確信しています。そしてコケモモの生える岩の中の登りの末に登り着く山頂は360度の展望の中です。ここから国師岳までの稜線は奥秩父でも最も標高の高い所。朝日岳、北奥千丈岳と奥秩父らしい原生林と岩の交互に現れる世界は独特です。今回、それら全てがガスの中ではあったけれど、それでも秋の奥秩父を満喫した二日間でした。
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八ヶ岳南半部縦走
・9月28日(火)〜10月1日(金) ・天候 28日曇り 29日・30日暴風雨 1日快晴
・日程 小淵沢駅(タクシー)観音平〜押手川〜編笠山〜青年小屋〜西岳〜青年小屋(泊)〜キボシ〜権現岳〜権現小屋(泊)〜停滞〜権現小屋(泊)〜旭岳〜ツルネ〜キレット〜赤岳〜地蔵尾根〜行者小屋〜美濃戸〜美濃戸口(タクシー)茅野駅
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目指せ赤岳。夕方の景色! |
台風、異常気象に悩まされ続けた今年の夏の山も、ここに極まれり!という感じの9月末の長期登山でした。そもそもの予定が仙人池と裏剣。しかし、春からの異常な高温続きの山々は、急速に雪渓を溶けさせ、かつてないほどの剣沢雪渓の後退をまねき、随所でシュルンドやクレバスを形成させ、そのために剣沢小屋や山岳警備隊が沢の高巻道を急遽新設しました。しかし、その道は草付きとガレの多い踏み跡程度の道であり、私達のパーティーでは到底安全に通過できる状況では無いと判断しました。事実、全く同じコースを辿ったAというインチキ登山ツアー会社は、この状況を知ってか知らずか、登山を強行し、トラバース道でゲストを転落させて大腿骨折の遭難事故を発生させています。・・・・で、転進先にかつてからの憧れの八ヶ岳の全山縦走を考えました。美しい原生林の上に連なる赤茶けた岩の続く露出感の強い八ヶ岳南部。
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赤岳頂上 |
それが夏沢峠を過ぎ北八ヶ岳に入ると一転して重厚な森林高地の創り出す独特な幽玄の世界へと変わります。この驚きの変化を一遍で体験できる八ヶ岳の全山縦走は魅力的であると考えました。しかし、出発の日の朝、当初は北に向かうはずの台風は突然、その鎌首を東に向け、まさしく私達の頭上へと向かいました。初日、予定外の西岳からグイグイと高度を上げて連なる八ヶ岳南部の山々を眺めたのを最後に八ヶ岳は、それから丸々二日間を強烈な風雨の中におきました。それでも、二日目に前進した権現小屋は山頂直下に建ち、そのために、小屋ごと吹っ飛ぶ事を真剣に心配する時間が続きました。下界に晴れの訪れた二日目、なんとか赤岳頂上までと前進を試みましたが、吹き上げる強風に立ち往生し、歩きだす事5分で撤退しました。その夕方、ようやく雲が切れ、南アルプス、中央アルプス、槍・穂高と一気に展望が広がりました。そして何よりも夕陽に輝く八ヶ岳の山々が赤々と光っていました。
めったに体験することのできない見事な光景が私達の前にはありました。
翌日、待ちに待った晴天。 カラカラと音を立てそうな快晴。キレット、赤岳への困難な道は終始、日本中の山々が見えるかのような展望の中にありました。
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平標山と仙の倉山
・9月14日(火)〜15日(日) ・天候 14日雨後晴れ 15日快晴
・日程 越後湯沢駅(マイカー)元橋〜平元新道〜平標山の家(泊)〜平標山〜仙の倉山〜平標山〜平標山の家〜平元新道〜元橋(マイカー)越後湯沢駅
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谷川連峰の山々は大きい |
谷川岳、上越の山々。とても素敵な山なのに、ちょっと遠いと感じすぎていたかな?と思います。距離もあります。新幹線を使わざるをえないアプローチは費用を嵩みます。でも、奥多摩、奥秩父、大菩薩、丹沢、南アルプス、北アルプス、中央アルプス、八ヶ岳、親しんできた山々とは全く違った何かがあります。仙の倉山も平標山も僕自身は何回も足を運んだ山です。ある時は残雪の縦走路の最後の山として、ある時はスラブの多い沢の遡行の果てとして草原をかきわけて登り着いた稜線の一角として、ある時は吹きすさぶ風雪の中で地図とコンパスを首っ引きで捜し出した山頂として・・・・。けれども、今回のように乾き、澄みきった風。淀みの全く無い空気の中で立った山頂としては初めてでした。いや、本当は初めてでは無かったかもしれない。けれども、すくなくとも、近くの山々、遠く霞む山々の名前を確認する余裕をもって山頂に立ったのは初めてでした。周囲の山々の中でハッキリと判るのは谷川連峰の山々のみ。それと噴火して噴煙を上げる浅間山と富士山。たおやかな、穏やかな、標高は必ずしも高くはない山々が何処までも広がっていました。中でも目を引くのは大きな苗場山と遠い平が岳、大きな山容の巻機山の姿でした。様々な楽しいプランが頭の中では浮かびます。その中でも、ぜひ、近いうちにやってみたいのは谷川岳本峰からの延々たる縦走。天候にさえ恵まれれば、けして無理なプランではありません。また、谷川岳本峰から蓬峠への縦走も楽しそうです。ちょっと敬遠していた谷川連峰と周辺の山々。時々は足を伸ばすつもりです。
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笛吹川東沢釜の沢西俣
・9月11日(土)〜12日(日) ・天候 11日曇り後晴れ 12日晴れ
・日程 塩山駅(マイカー)道の駅「みとみ」〜二俣〜山の神〜釜の沢出合い〜両門の滝〜西俣の泊まり場(泊)〜連瀑帯〜水源〜尾根〜水師〜甲武信岳〜道の駅「みとみ」
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まだまだ上に
滝が広がる東のナメ |
笛吹川釜の沢は奥秩父の中にあって、最も多くの遡行者を迎える谷です。というより、奥秩父の沢登りを行う者の大半が、この釜の沢からの遡行者であるとも言えます。それほど多くの人々を迎える谷です。沢登り人口の激減にも係わらず、この谷だけは週末ごとに複数の沢登りパーティーを迎えています。大水量の流れが岩を削って創り出す美しい造形の数々。頭上を覆う原生林。随所に広がる花崗岩のスラブ。これらの魅力は見事です。釜の沢に入ってからの魚留の滝、千畳のナメ、両門の滝。これらの景色はあまりに有名です。けれども、西俣に入って沢の雰囲気は一転します。遡行者の99パーセントいや、99.9パーセントの者が東俣に入る為、人跡未踏の独特の雰囲気が周囲を支配します。また、東俣が両門の滝からすこしで滝登りを中心とした遡行が実質的に終了し、延々たる川原歩きを強いられるのに対して、西俣は最初の滑りやすいゴルジュを乗り越えた後、1時間程は川原歩きがあるものの、その後は最後の最後まで徹底的にゴルジュと滝と苔むした台地見せる見事な谷です。そして主脈縦走路までフワフワの絨毯を思わせる苔の敷きつめられたコメツガの森を登る事等、極めて完成度の高い谷であると言えます。もちろん、東俣は日本百名山・甲武信岳に直接登れる歴史ある登路としての顔がありますが、それでも強く思います。なんで、みんな西俣を登らないのだろう?・・・・いや、登らなくてけっこう!「風の谷」だけが登る素敵な谷でも良いと思います。僅かに二箇所。他のパーティーのビバーク跡があり、ごくごく僅かに登る者のあることを教えています。その場所も実に見事で、この谷を愛する者だけが地形図のみを頼りに上へ上へと遡っている事が判ります。釜の沢西俣。私達だけの谷です。
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黒部源流・赤木沢
・8月28日(土)〜29日(日) ・天候 28日晴れ後曇り 29日曇り時々雨
・日程 東京(マイカー)折立〜太郎平〜薬師沢出合い〜黒部源流〜ゴルジュ手前(泊)〜赤木沢出合い〜ナメ滝〜大滝〜右俣〜縦走路〜北の俣岳〜折立(マイカー)東京
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赤木沢出合の滝 |
東京近郊に住む者にとっては、やはり黒部は遠い・・・そう感じさせられた赤木沢の二日間でした。三鷹を出発したのが金曜日の夜・九時半。岐阜県の上宝村の「道の駅」に着いたのが午前二時。四時間ほど眠って更に二時間近くをクルマに揺られてようやく折立。往復のクルマに要した時間は十四時間ほどでした。時ならぬ台風16号の情報。出現したときには910ヘクトパスカルのお化け台風に追われるような二日間でした。秋雨前線を台風が刺激しての大雨の為、取り敢えず前線の掛かっていない北陸は大丈夫?の予想の下の遡行でした。それでも、台風情報のせいか夏休み最後の週末にも係わらず、山に人は少なく、更に谷では全く二日間人影を見ない静けさでした。薬師沢出合いから、エメラルドグリーンの黒部源流に降り立ち、遡行。随所で走り回るイワナがいる。黒部源流の最初のゴルジュの手前、僕の好きな瀞の見事な青々としたプールのような所の脇、小高い砂地の上にタープを張り、焚き火を始める。瀞の為、沢独特の賑やかさが無い、静けさに満ちた泊まり場だ。夜中に月が眩しく周囲の山々を照らすのを見ながら熟睡した。
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ナメ床を歩く |
赤木沢は、やはり最高。出合いに至る沢筋でも、まるで釣り堀のようにイワナが群れるのを見た。そして、まるで堰堤のような赤木沢の出合い。その上の滝。これだけでも、ここに来る価値があると思う。そして庭園のような赤木沢のナメの連続に歓声が上がった。稜線が見えてきて、大滝を巻いて、二俣。滝の連続する右俣はやがて、這い松と草原の中に消え入るように無くなっていく。最後の草原の登りは、黒部源流の良さを集めたような素敵な所だった。
赤木沢、時々は様子を見にきたい所。できれば激烈な上の廊下の遡行をこなし、その激しさを静めるように稜線まで駆け上がりたい谷だと思う。
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ヌク沢左俣遡行、ナメラ沢下降
・8月21日(土)〜22日(日) ・天候 21日曇り 22日曇り
・日程 道の駅「みとみ」〜ヌク沢〜近丸新道〜堰堤〜大滝〜源流〜甲武信小屋(泊)〜甲武信岳〜破風山〜ナメラ沢〜雁坂トンネル〜道の駅「みとみ」
登山全般がそうだが、とりわけ沢登りは予定していたから全部が全部、登れるわけでは無い。その中でも僕たち「風の谷」にとって、甲斐駒が岳の尾白川黄蓮谷は、予定どおりなかなか登れない谷の一つだ。どうも縁が薄い。ガイドという立場上、仲間同志で行く「取り敢えず行ける所まで・・・・ダメだったら、何とか逃げて・・・」と言うのが通用しないのが理由の一つ。甲斐駒の谷のように上部に木々が無く、降った雨が一気に増水という形で、しかも凄まじい勢いで襲いかかって来る谷の場合、登山実施前に相当程度雨が降って、その後も雷雨等が考えられる状態の時は、なかなか入れない。実は、南アルプス北部は8月16日頃から19日にかけて大量の雨が降り続いた。言わば、大量に水を含んだ山の上に、これ以上、ちょっとでも雨が降ったら必ず増水、鉄砲水・・・という形でやられる可能性があった。そこで、転進。黄蓮谷の奥千丈の滝に匹敵する?大滝を持ち、しかも直登でき、源流の雰囲気が最高のヌク沢は僕の大好きな谷の一つだ。ただ欠点がある。中流部に15年ほど前から次々と不気味な巨大堰堤が作られ、がっかりさせられる事だ。現在6基。また、途中に赤ペンキがあり、更に作るつもりらしい。大滝はズブ濡れになりながらもかなり忠実に直登ラインを行った。大滝が激しい分、その上流の原生林のナメ滝の連続が楽しかった。
下降はナメラ沢。ナメを滑り台のように下りていく気分は楽しい。しかも下流部分で山ブドウとサルナシの群落を発見。サルナシはもう食べられた。
去年は思わぬスノーブリッジの登場で撤退。今年は増水が怖くて転進。でも、きっと、来年は黄蓮谷に行くぞ!
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ヌク沢 |
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大滝 |
ヌク沢遡行 |
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大滝を登る |
甲武信小屋 |
秋の気配 |
ナメラ沢下降 |
北岳
・8月17日(火)〜19日(木) ・天候 17日雨 18日ガス時々雨、強風 19日ガス後快晴
・日程 甲府(タクシー)広河原〜白根御池(泊)〜草スベリ〜小太郎尾根〜肩の小屋(泊。空身で頂上往復)〜小太郎尾根〜大樺沢右俣〜二俣〜広河原(タクシー)甲府
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三日目の朝・・・
突然ガスが切れて鳳凰三山が・・・ |
「風の谷」の「やまあるき講座」に参加していただく方の中でOさん・・・という方がいらっしゃいます。山梨の出身の方で、そのためかどうか、山梨の山には強い関心を持っていて、山梨の山のプランの場合はかなり無理をしても参加してくださる方です。最初は全然歩けない・・・と言うか普通の体力の方でしたが、すこしづつ登山を続けるうちに、すこしづつ強くなられた方です。慎重な方でけして無理はされずに丁寧に歩かれる登り方を僕は立派だと思っています。その方にとっては北岳は憧れの山でした。今年の夏は北岳に「風の谷」で行く!と聞いて、春頃から山歩きのペースをアップさせて、かつては参加しなかったような標高差の大きな登山にも積極的に参加していました。「きっと今年は北岳を目標としているに違いない。」と回りの皆も思っていて、僕もOさんの登頂はかなり無理をしても実現させたいと思っていました。しかし、7月頃から足を傷めて今年の北岳は断念されました。来年も北岳は必ずやります。来年はぜひ登っていただきたいと思います。・・・実は、今回、余裕ある日程の北岳登山でしたが、一名の方が下山中に完全に歩けなくなってしまいました。立ち上がる事もできない・・、足に力の入らない状態です。僕はその方を背負って下りました。その際、ちょっと気になる事がありました。実は、この方は仲間3人で申込をされました。そのうちの一人は以前から「風の谷」に参加されている方で、「風の谷」の登山がツアー登山とは違い、一期一会の関係ではあっても集合した時から解散するまでは、あくまでも一つのパーティーとして登山として登る事を知っていた方でした。ご一緒の2人も当然、「自分でなんとか登る意志を持つ」方だからお誘いいただいたものと思っていました。しかし、登山実施の前夜遅くに一名はキャンセルしました(「風の谷」では、実施前にガイド自身から参加者全員に必ず、準備の状況、体調等について電話で確認しています。その方は、その際には一切体調不良については言わず、夜になって「風邪が悪化した」と言ってきたのです。)。そして、もう一名は完全に歩けなくなりました。そもそも、日本第二位の高峰・・・標高差1600mの登山にいきなり来る力の無い方が申込をしたと考えて良いと思います。「風の谷」では申込全てを受け付ける事はありません。「アナタには無理です」「もうすこし歩行時間の短いコチラのプランにしてはどうですか?」等、言う事も多々あります。また、当然、人数も一杯になりしだい締め切りとします。今回も二名の方に「満員」を理由にお断りをしています。前日のキャンセルでは、お断りした方に急遽参加いただく事もできない現実があります。「風の谷」のそのような状況をお判りの上で参加者は参加いただいていると思います。・・・・「気になる事」とは・・・、二俣で、その方が疲労困憊し歩行が覚束なくなった際に「もう一人は、もうすこしお強い方なんですか?」と尋ねたところ「いやぁ、Yさんが来たら引き返していたと思いますよ。」と答えられた事です。「風の谷」では一人でも「引き返す」事態となったら、残りの方が全員元気一杯でも、全員で引き返します。つまり、登頂はできなくなるのです。
「風の谷」に来ていただく方は、暇を持て余し、有り余るお金の中から交通費や参加費を作ってきているわけではありません。例えばOさんのように、春から一歩一歩トレーニングをして、また、高齢の家族を抱えている方は登山の間、留守を守る方を見つけてきて参加されている方もいらっしゃいます。僕は、こういった方に不用意な参加の方のせいで、登頂をフイにすることはできません。もちろん、責任はガイドにあります。何故、もっと初参加の方のチェックをちゃんとしなかったのか?「あの人が誘ったのだから大丈夫だろう・・・」は安易では無いか!等の事はあります。それを強く感じさせられた今回の北岳であり、前回の白馬三山でした。これからは、もっと慎重に、参加者との事前の打ち合わせをしたいと思います。
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槍ヶ岳北鎌尾根
・8月7日(土)〜9日(月) ・天候 7日晴れ後雷雨 8日晴れ後曇り一時雷雨 9日晴れ
・行程 信濃大町駅(タクシー)高瀬ダム〜湯俣〜千天出合い〜北鎌沢出合い(泊)〜北鎌のコル〜天狗の腰掛け〜独標〜北鎌平〜槍が岳〜槍沢〜ババ平(泊)〜横尾〜徳沢〜上高地(タクシー)松本駅
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独標をこえると槍が大きい |
やはり迫力満点の北鎌尾根でした。このところ、毎年のように行っている北鎌ですが、その度に「流石に日本の名ルート」との感動がありましたが、今回もそのスケールの大きさには圧倒されるものがありました。昨年は水俣川の大増水に涙を飲んで裏銀座に転進しただけに、本来の正統派のルートである湯俣からの道を辿れた事は嬉しいことです。かつての道の跡は、殆ど無くなり、川の遡行と全く同じ感覚での徒渉の連続でした。今年の特徴は激しい雷雨と天候の変化の激しさでした。千天出合い付近で降りだした雨は雷雨となって雷と共に大雨となりました。貧乏沢出合いの上の岩小屋で雨宿りの後、「もう止む」と思ってもしつこく降り続く雨、2時過ぎには到着したのに焚き火が燃え上がったのは5時近くでした。それでも満天の星空が私達のビバークを見つめていました。
「今日は雷雨前に穂先を抜ける!」との固い決意の下、ヘッドランプで出発。北鎌沢は98年の地震の頃に比べると格段に安定し、お花畑を楽しむ余裕もありました。北鎌のコルからはコンテで快晴の北鎌尾根を辿りました。天狗の腰掛けで不気味な気配あり。なんとサルの大群に囲まれました。独標が眼前に迫る天狗の腰掛けからは木々も無くなり稜線は険しさを増します。独標を巻き、ボロボロの稜線を一歩ごとに槍が大きく成長していきます。所々で稜線を巻き、それ以外は極力稜線を辿り、ついに北鎌平にやって来ました。折しも槍はガスの中に隠れ、メンバーの疲労もかなり強くなっていました。最後の岩を回り込み、穂先の登山者の拍手の中、山頂に飛び出す劇的な瞬間は北鎌のハイライトです。雷が聞こえる中、降りだした雷雨の中の登頂でした。
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山頂 |
北鎌は、たしかに岩登り的な要素もありますが、基本的には沢を遡行し、ビバークし、尾根を辿り、ボロボロの岩をかわし・・・という体力勝負の登山です。体力が無ければ、一歩一歩も不安定となり、不用意な小さな動きから落石を誘発したりがあります。身体を鍛え、経験を積み、それでこそ楽しめるルートであるとの思いを新たにした三日間でした。
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白馬三山
・8月3日(火)〜5日(木) ・天候 3日晴れ時々曇 4日曇り後快晴 5日風強く晴れ後曇り
・日程 3日 白馬駅(タクシー)猿倉〜小日向のコル〜鑓温泉(泊) 4日
〜大出原〜稜線〜白馬鑓が岳〜杓子岳〜白馬岳〜白馬山荘(泊) 5日 〜葱原〜大雪渓〜白馬尻〜猿倉(タクシー)白馬駅
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満面の笑み
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恐らくは夏山としては最も人気のある山である白馬岳。普通の山には無い、日本の多くの山々、その大部分を占める雑木林や人工林、しっとりした木々の山と全く違う、夏でも豊富な残雪を持ち、数多くのお花畑を持つこの山は北アルプスの象徴とも言うべき山です。今まで「風の谷」では、大雪渓から山頂を経由して白馬大池、栂池へのルートは何回か行っているものの、三山を縦走、鑓温泉と、足跡を記したのは初めてでした。それは、山腹のトラバースを多く持つルートへの不安、二泊でも混み合う山頂の山小屋への宿泊を避けたかった為です。今回、鑓温泉からのルートを辿ってみて、今年はとりわけルートの状況が未整備との印象もあり、小日向のコルから鑓温泉、鑓温泉上部等では緊張を強いられました。それでも、豊富な源泉から湧きだした強烈な硫黄泉の楽しさ、大出現の広大なお花畑、稜線に飛び出した時の日本海の出会いは強烈で、やはり一度は通りたいルートとの思いを新たにしました。と同時にやはり花と言えば白馬から伸びる雪倉岳、朝日岳への尾根・・・・。今回のコースよりも更に一ランク、二ランク体力の要るコースと認識した上で、一度は行くべき山々との思いを持ちました。
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山頂は目前
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色々な事情、今年の夏山直前の落雷を筆頭とした不安定な天候を割り引いても、日本で一番の人気コースとしては、ルートの未整備を強く感じました。鑓温泉へのトラバース、鑓温泉上部のみならず、表玄関とも言うべき大雪渓についても、かつてよりはるかに歩きにくいとの印象を持ちました。やはり登山者の減少が原因なのでしょうか?
二日目、夏山とは思えない展望を見られました。富士山、八ヶ岳、南アルプス、そして北アルプスの全ての山々と日本海。驚きの感動の展望がありました。
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爺が岳から鹿島槍が岳
・7月27日(火)〜29日(木) ・天候 27日晴れ 28日晴れ 29日曇り強風
・日程 信濃大町駅(タクシー等)扇沢橋〜柏原新道〜種池山荘(泊)〜爺が岳南峰〜爺が岳中峰〜冷池山荘〜鹿島槍が岳〜冷池山荘(泊)〜種池山荘〜柏原新道〜扇沢橋(タクシー等)信濃大町駅
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爺が岳の登り。
背後に立山。 |
いち早く夏の訪れた東京近郊と違って、北アルプスはなかなかの天気だったよ
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夏雲わく鹿島槍山頂 |
うです。僕達が訪れた前日までは、毎日強い雨が降り、登山道はアチコチで崩壊したりで大変だったと聞きました。蒸し風呂のような柏原新道ですっかり汗を搾り取られ、行動時間、標高差の何倍も辛い思いをして到着した種池山荘。そこで、僕の古くからの顔見知りの小屋番であるタケさん事・竹村さんが「ちょっと見てほしい物がある。」と言って小屋の裏に連れていって見せた物は、二日前の北アルプス全域で起きた落雷の一つ、爺が岳肩での7人パーティーの事故の際の靴やカッパ、衣服の残骸でした。それがタケさんが見せたのでなければ「雷の仕業」と言っても信じなかったような光景がありました。靴は引きちぎられたように二つに裂け、カッパなんかは形も無くなりただの布切れ、靴下は溶けるように半分になっている・・・・驚きのものでした。その日は、不帰では死亡事故があり、ニュースにならなかった物も含めて相当数の落雷に伴う遭難があったようです。良く言われる「金物はダメ」とか、「尖った先端に落ちる」とかは、たしかにそういう事例もあるのかもしれませんが、直接は関係無いようです。ただし、このパーティーは朝からゴロゴロと不気味な音を立てる空の状態にも係わらず、冷池山荘でユックリ休み、爺が岳中峰でも20分近く居て、その上で南峰の肩で落雷に逢っています。時間は3時を過ぎていたとのことで、結果論ですが、ちょっと警戒心がたりなかったようです。しかし、全員がぶっ飛ばされるような雷にも係わらず、重態の者が居ても、取り敢えず死者が出なかったのは奇跡的な幸い事です。夏山の最初の一歩での、衝撃的な事故は僕自身も戒めとしたいと思います。さて、肝心の鹿島槍と爺が岳ですが、初夏の花も、盛夏の花も、晩夏の花も高山植物が一斉に咲く不思議な光景の中にありました。これも暑いせいとの事でした。そして、黒部川を挟んで見事な剣岳との対面がありました。鹿島槍が岳の山頂では、眼前にモクモクと沸き上がる雲と、去来する雲の中に見え隠れする五竜岳等の眺めもありました。夏山らしい三日間を楽しめた後立山でした。
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