行ってきました!(2004年3月〜4月)

Homeへ | 最近の「行ってきました!」へ 

2004年  4月 25日 日和田山岩登り入門講習
20日 御正体山
17日 秋川支流・矢沢軍刀利沢
10日〜11日 聖岳
7日 浅間尾根
3日〜4日 撤退の仙の倉山北尾根
3月  31日 高水三山
23日〜24日 北八ヶ岳核心部
20日〜21日 唐松岳
16日〜17日 雪の上高地
9日〜10日 雲取山登頂と石尾根縦走
6日〜7日 杣添尾根から横岳
2日〜3日 北八ヶ岳周遊

日和田山岩登り入門講習

・4月25日(日)   ・天候  快晴

 日和田山の岩場は初めての岩登りの講習には最適の場所。理由は支点が沢山あって、しかも安定していて、岩場も小石等はすっかり落とされていて落石等の心配も少なく、安心 して楽しめる事、そして初心者が多いので上手すぎるベテランの冷やかな目?を気にしなくても良い事、そして何と言っても駅から近くアプローチが楽な事です。今回は参加者5名の内、4人が岩は初めて。今回の講習にはピッタリでした。サブガイドに、つい四日前 に日本アルパインガイド協会の認定式でガイドになったピカピカの緒方陽介さんに来てもらいましたが、これが教え方は丁寧、基本を確実に教えてくれる見事なガイド振りで、「風の谷」にもこれからも、ぜひ手伝って欲しい人材です。ちなみに27歳、独身、なかな かカッコいい男です。ふふふ。 9時から5時近くまで殆ど休み無しのキチキチの講習でしたが、みんな手はパンパン。 岩登りの厳しさ、楽しさが判ったのではないでしょうか?でも、ちょっと気になる事がいくつか。初心者向きの大好きなゲレンデの日和田山ですが、幾つか目につく問題もありま した。もともと使う人数が多すぎるのですが、他の人への配慮の無い人が多すぎるようで す。最も良くないのはルートの独占。人気のあるルートにトップロープを張りっばなし。 男岩の南面の一本、女岩の南面全部は一つのグループがまるまる一日独占していました。 基本的にはリーダーがトップで登って、初心者を登らせて・・・・と言うオーソドックスな方法で練習すべきなのでは?と思いました。また、トップロープを使用する際には、全員がチャレンジしたら回収して次の人に譲らないと登る所が無くなってしまいます。女岩の南面は全体を占拠して、とうとう他の人は誰も使えない状態でした。これは酷いよね! ここの岩場の良い所は、初心者同志の交流があり、お互いにヘタなりに教え合ったりも楽 しい事なのですが、こういったグループは、他のパーティーとの挨拶等もあまり交わさないように思えます。煩い事はあまり言わないタイプの僕ですが、ちょっと一言言いたいよね!
 なお、緒方陽介ガイド・・・・ご紹介いたします。「風の谷」にご連絡ください。緒方君から連絡させます。ぜひ!

このページのトップに戻る

御正体山

・4月20日(火)   ・天候  晴れ
・コース 河口湖駅(タクシー)山伏峠〜奥の岳〜中の岳〜前の岳〜御正体山〜峰宮跡〜仏が沢〜細野(タクシー)大月駅

前の岳からの富士山
前の岳からの富士山

 石割山から続く尾根に出て、前に大きく大きく不機嫌そうに聳える黒木の山。それが御正体山でした。僕の記憶の中には無かった送電線が中の岳の先で稜線を横断しているのがちょっと残念でしたが、周囲の山々が開発の波の中にあっても、この、やたらに大きな図体の山は重厚な印象を見せていました。日本二百名山の一つとやらになって、山梨百名山の一つにもなって、急に有名な山になっても、晴れ渡った天気の下でも、訪れる者は少なく静寂の中にありました。この山の良さの一つは、原生林の美しさでした。ブナ、ハリモミ、ミズナラの木々。その一つ一つが大きく、古い木々が独特の奥深さをかもし出していました。どこが山頂か判らない、広々とした山頂。今度こそ!と思いながら、小さな高まりを越えると、その先にも高い所があり、そこに行くとまだ先にあり、やっと登り着いた頂上は展望もなく、そこだけ明るい空間は独特の重みのある雰囲気でした。
 里山の雰囲気の強い道志山塊の中にあって、御正体山は抜きんでた標高と、黒々とした山容によって圧倒的な迫力を持っている山です。高さだけではなく、木々の大きさ、静けさ、それら全部によって道志山塊のイメージを一新する魅力ある山々でした。

このページのトップに戻る

秋川支流・矢沢軍刀利沢

・4月17日(土)   ・天候  快晴
・コース 武蔵五日市駅(マイカー)出合い上の林道〜軍刀利沢出合い〜二段10m滝〜10mナメ滝〜三国峠〜生藤山〜山道〜矢沢林道(マイカー)数馬の湯経由武蔵五日市駅

水源近く・・・10mナメ滝の上
水源近く・・・10mナメ滝の上

 奥多摩の多摩川最大支流・秋川流域の沢は、一つ一つの沢は小さく、本格的なシーズンに登る雰囲気の沢ではありません。けれども、シーズンの初め、または晩秋の頃、足元を本格的に水に浸すのは嫌だ・・・・でも、沢には入りたい!という時に適した沢が沢山あります。何れも、「取り敢えず登りたい」というだけなら遡行1時間半から2時間半。頑張ればもう一本も登れる!そんな沢です。その中にあって矢沢軍刀利沢は短い中にも小滝も含めて20本近い綺麗な滝を持ち、しかも生藤山山頂直下に出られる素敵な沢です。今回、ドンピシャリと言う感じでツメではカタクリの一大群落ど出会えました。登山道の50m下。見えそうで見えない斜面一面にピンクの花が揺れていました。気温も東京は夏日だったとか・・・・。沢初めにはピッタリすぎる最高の気温の中での沢でした。
 軍刀利沢は楽しい沢でした。秋川の沢のほとんどがそうであるように、小粒な沢の良さも物足りなさもある沢です。この沢で沢登りをお終いにするのではなく、ここを出発点にひとつづつ大きな沢、谷に挑む最初の一歩となれば嬉しく思います。今回は、できればもう一本と思い、遡行図まで用意していたのですが、出合いに帰ったら既に3時を回っていました。一つ一つの滝の通過を楽しみすぎたようです。そんな楽しみ方もある、秋川支流の沢初め!でした。

このページのトップに戻る

聖岳

・4月10日(土)〜11日(日)   ・天候  10日快晴 11日 晴れ時々曇

小聖岳を越えるとヤセ尾根になる
小聖岳を越えると
ヤセ尾根になる
背後は上河内岳

・コース 飯田インター(クルマ)便が島〜西沢渡〜苔平〜薊畑(泊)〜森林限界〜ヤセ尾根〜小聖岳〜聖岳〜薊畑(テント撤収)〜西沢渡〜便が島(マイカー)飯田インター

 それにしても遠い頂でした。雪のある季節に標高差2000mを越えるピークに一泊で登るプランは、計画からしてちょっと厳しいものがありました。しかも、他の登山者の居る可能性は殆どなく、自分達だけで全てを解決することが求められる厳しい山です。昨年は2月に小聖岳下までラッセルの末に到達しましたが、深雪と不安定な雪に撤退。12月は中央道のパーキングでも既に降雪を見て、アプローチの林道と僕のボロクルマとを考えて転進(この時はマイナス23度を経験。やっぱり行かなくて正解でした。)。今回は三度目でした。毎回、驚かされる深山の林道のアプローチ。実に22kmあるのですが、「日本にもこんな場所があるんだ!」と思わず声の出る遠さ。今回、林道の入り口付近でパンクした時の心細さは深刻でした。北又渡、易老渡、西沢渡・・・・、これらの地はかつては森林軌道の通る林業の拠点でした。僕が初めて通ったのは17歳(つまりは32年前)の3月でした。季節のせいか、既に使われていなかったのか、通るトロッコ等は無く現在の本谷口から延々と歩幅に合わない枕木をイライラしながら重荷を背負って歩きました。西沢渡の現在は廃屋となった建物が、当時は林業の拠点だったのですが、煌々と灯が点き賄いの小母さんも居て、驚いた事が忘れられません。
 今回、積雪が出たのは1900mから、直ぐにワカンの必要なグサグサの雪となり、薊畑までの登りは苦しいものでした。けれども、大変な暖かさの中、外で食事も宴会もできる穏やかさ。春の山を満喫しました。翌日は5時前、ヘッドランプで出発。約2時間半で頂上に立てました。山々の大きさ、誰もいない静寂の山頂、やっと勝ち取った山頂は、心を打つ達成感と共にありました。南アルプス南部。そのアプローチの悪さと、遠さ、登りの厳しさ故に週末登山者が容易には行けない山々です。けれども、その充実感は大きく、また、今度こそ!の思いがこみ上げました。遠かった、大きかった、静かだった聖岳。日本最南端の3000m峰は豊富な雪の中にありました。

このページのトップに戻る

浅間尾根

・4月7日(水)   ・天候  快晴!
・コース 武蔵五日市駅(バス)浅間尾根登山口〜数馬分岐〜一本松〜人里峠〜浅間嶺〜瀬戸沢の一軒屋〜時坂峠〜沸沢の滝〜北秋川橋(バス)武蔵五日市駅

馬頭観音さん
馬頭観音さん

 この日、一日で随分と沢山の花ど出会いました。タチツボスミレ、レイザンスミレ、ナガバナスミレサイシン、エンレイソウ、アブラチャン、キブシ、そしてカタクリの群落。鳥が鳴いていました。コガラ、ヤマガラ、ミソサザイ、まだ鳴くのがヘタのウグイス。奥多摩の山には一気に春が訪れました。毎日、毎日、すこしづつ緑がこれから斜面を登っていくはず!目で見てそれが判る毎回の奥多摩の1000m前後の山です。カタクリの大群落は2年前に偶然に見つけました。今までも時坂峠の下、瀬戸沢の一軒家から浅間嶺に向かって登り最初に大岳山が大きく眺められる榧の木の下(この群落の下には「カタクリ獲るな!」の看板まであります)のカタクリの花は知っていましたが、最も大規模な群落は何気なく北秋川側の斜面を見ていて見つけたものです。尾根道から少し下った場所・・・一本松と人里峠の間・・・とだけ書いておきます。登山道からは直接見えないのがミソ!かなり下まで点々と美しく咲いていました。
 この浅間尾根の魅力は、まだ、木々が芽吹きを迎えない、雑木林が丸裸で大岳山や御前山が美しく眺められる時期にこそあります。アブラチャン、キブシと言った地味な花は、鮮やかな花が現れる前だからこそ、楽しく感じられるものだと思います。浅間尾根は僕が奥多摩の中でも最も大好きな場所です。「やまあるき」本来の楽しみが満ちた明るい雑木の展望の尾根は毎年必ず訪れたい場所です。

このページのトップに戻る

撤退の仙の倉山北尾根

・4月3日(土)〜4日(日)   ・天候  3日曇り後ガス 4日雪
・コース 毛渡沢橋〜バッキガ平〜小屋場の頭(泊)〜K1〜K2〜シッケイの頭〜K1〜小屋場の頭(テント撤収)〜バッキガ平〜毛渡沢橋

 仙の倉山北尾根は、必ずしも難しい尾根ではありません。もちろん、複雑に張り出す雪庇と急峻に尾根に食い込むルンゼ、東ゼンを始めとする谷は鋭く高度感満点の痩せ尾根の通過はスリリングではあっても、登る尾根そのものは特別な技術を必要としない美しいルートです。谷川連峰の最高峰たる仙の倉山は、通常は平標山からの往復が最も容易とされる奥深い山です。そもそも谷川連峰そのものが、谷川岳という超有名な山には多くの人々が訪れるものの、そこを除けば大部分は訪れる者も少ない静寂の中にヒッソリと佇んでいます。白毛門山から朝日岳、清水峠、蓬峠を経て本峰。そしてオジカ沢の頭から万太郎山、エビス大黒、仙の倉山、平標山と続く長大な連峰の中にあって、清水峠、蓬峠、谷川岳本峰には山麓から通う道が記されているものの、後は平標山に至るまで、一般登山ルートの存在しない首都圏を背後に抱えた山域としては、極めて珍しい不遇の地としてあります。夏はクマザサを始めとしたヤブに覆われ、冬はラッセルを強いられ、マナイタグラ山稜や、万太郎尾根といった結構目立つ尾根であっても訪れる者のいない地です。それどころか、タカマタギ、日白山の如く立派なピークであっても訪れる者の皆無の地も少なくありません。それが、この春の雪山、ワカンが効き、ヤブも埋まり、かつ無茶苦茶なラッセルの無い一時だけが、憧れの尾根に縦横にトレースを着ける魅力的な時期と言えます。この時のみに、この仙の倉山北尾根、タカマタギ山、マナイタグラ山稜等に登山者の声を聞く事ができます。
 実は、この仙の倉山北尾根は私個人にとっては七回目の訪問でした。最初は十代の終わり頃、二月の挑戦は雪崩の恐怖とラッセルに終始し、暴風雪の山頂からほうほうの体で元橋へと下山しました。それ以降は毎回春。3月から4月の山でした。ヤセ尾根での緊張と、頂上直下の広大な雪原の印象の強い、素敵なルートと思っています。昨年と今年、何れも春の南岸低気圧の通過に伴う悪天の為、撤退を余儀なくされました。今年については、冬型の悪天が抜けきらない内に太平洋岸に低気圧が近づき、濃いガスに視界を遮られ、大きく張り出した雪庇と亀裂の入った斜面に適切なルートを確定することの困難、更にそれを突破したとしても、その上に二段になった広大な雪原を通過することが絶対に困難との予想から霙の中をスゴスゴと下りてきました。春の汚れた雪が再び真っ白な雪と変わり、フキノトウの上にも降り積もった雪。谷川連峰のもう一つの春の顔でした。

このページのトップに戻る

高水三山

・3月31日(水)   ・天候  晴れ時々曇り
・コース 青梅線・軍畑駅〜平溝〜高水山〜岩茸石山〜馬仏山〜惣岳山〜沢井駅

 奥多摩にも急激に一気に春の風が吹きはじめました。高水山の山頂直下。「今年はカタクリはまだかな・・・・?」と捜していると、チラホラとある斑点の付いた独特の葉と共に、たった一輪だけ、鮮やかなピンクの花弁を落ち葉の間から覗かせる素敵な姿が待っていました。先週の北八ヶ岳で丸二日間、殆どスノーシューやワカンを外せなかったのが嘘のような暖かさ。一気に咲きだした、春の花。ダンコウバイ、アブラチャンと季節が進めば目立つ事も少ない質素な花も所々で出会えました。そして、今週になって初めて聞くウグイスやミソサザイの賑やかな声。山里は楽しい気分で一杯でした。
 高水三山は最高峰の岩茸石山でも、僅かに800mにも満たない低山です。耳を澄ますと下の集落り生活の音も聞こえる、本当の裏山です。けれども、傾斜がけっこうあり、とりわけ山頂直下は岩混じりの急斜面があったりと、気楽なばかりの山とも言い切れない「山歩き」の適度の緊張感もある山と言えるでしょう。毎年、この時期、春に最初の一歩を踏み出す貴重な山とも思っています。奥多摩にも春がやって来た!もちろん、まだまだ霙が降ることも、思わぬ雪が斜面を白くすることもあるはずです。けれども、確実に一歩、新しい季節の中に踏み出した事を実感させる、春の一日でした。

このページのトップに戻る

北八ヶ岳の核心部

・3月23日(火)〜24日(水)   ・天候  23日曇り時々晴れ 24日晴れ後小雪
・コース 茅野駅(マイカー)ピラタス(ロープウェイ)坪庭〜雨池峠〜縞枯山〜茶臼山〜大石峠〜麦草峠(ヒュッテ泊)〜白駒の池〜高見石〜サイの河原〜渋の湯(タクシー)ピラタス

白駒池に縦横にトレースをつける
白駒池に縦横にトレースをつける

 たしか寡雪の雲取山の「行ってきました!」で書いたはずです。「このまま春になるのでしょうか?いえ!そんな事はありません。」と。そう!北八ヶ岳は再び深い雪の中、しかもサラサラの深雪の中にありました。スノーシューとワカン。この深雪を踏み固めて前進する用具の効用を、今回ほどありがたく「やまあるき」で感じることは中々無いはずです。真っ白な誰の踏み跡も無い空間に不作法に荒々しく一本の人跡を残すのは良い気分です。縞枯山への急斜面。振り返ると一本のトレースが真っ直ぐに下へと伸びていました。二日間の北八ヶ岳彷徨の山旅の中で出会った他の登山者はただの一人。静寂と風の音、時々降る小雪。春の雪山の魅力をタップリと味わった二日間でした。北八ヶ岳の冬は、夏には歩きにくいゴロゴロ石や倒木の道が、綺麗に白い平らな歩きやすい物に変わること、残念ながら縦横に走った感のある車道がただの白い広場へと変わること、そして雪を被った木々が日本離れした美しい森へと変わること・・・・これにあります。必ずしも山頂にはこだわらない、草原、池、溶岩台地と言った北八ヶ岳のそれぞれの顔が、雪でもっともっと素敵になる時に出会う喜びがあります。
 4月27日〜28日の春雪の奥秩父・金峰山を例外として、この冬の「風の谷」の「やまあるき」の雪の山は、実質的にこれで終わり。北八ヶ岳は、五回に渡って縦横に歩き回った感じがあります。毎回ごとに違った表情を見せていましたが、共通するのは雪の森林高地の美しさでした。また、ぜひ、次の季節も素敵な雪との出会いを捜したいものです。

このページのトップに戻る

唐松岳

・3月20日(土)〜21日(日)   ・天候  20日曇り時々雪後晴れ 21日快晴
・コース 白馬駅(タクシー)八方(ゴンドラ・リフト)八方池山荘〜第2ケルン〜八方池〜下の樺(雪洞泊)〜丸山〜馬の背〜唐松山荘〜唐松岳〜馬の背〜丸山〜下の樺〜八方池山荘(ゴンドラ・リフト)八方(タクシー)白馬駅

真っ白な五竜岳を見ながら
真っ白な五竜岳を見ながら

 軽く強いテントの普及と共に雪洞での雪山登山は減っています。整地さえしてしまえば3分もあれば完成するテントの「家」に対して、雪洞は「掘る」と言う大変な作業があります。私達の今回の唐松岳での雪洞は、初めての者ばかりだった事もあり、また、かなり趣味的に凝った大きな雪洞を作った事もあり2時間近くを完成に要しました。中で立てるほどの高さを確保し、荷物棚まで人数分作った楽しい我が家でした。雪洞は「雪があれば作れる」と言うものでもありません。「雪が沢山ある!」と言う事は雪崩の可能性もあります。また、一見、豊富な雪があっても中からブッシュが出てきたり、かなり掘り進んだ所で「霜ザラメ」と呼ばれる雪崩の源ともなる弱層が大きく出てきたりすると「掘りなおし」になってしまいます。さらに掘るのには条件が揃っていても、場所が急峻すぎて掘る作業そのものが危険な場合もダメ。また、出来上がりも狭ければ湿気が籠もってどうしようもないし、広すぎれば寒いしと難しい。いろいろと経験して、ドンピシャリの雪洞を掘れると、とても嬉しく思います。今回は、働き者の男性が二人、ドカンドカンと掘ったため広い雪洞ができました。ローソクの灯一つでキラキラと輝く壁と、どんな風でも物音一つしない静寂の住処はできてしまえば最高です。
広い雪洞の中。ちょっと広すぎ!
広い雪洞の中。ちょっと広すぎ!
 今回の唐松岳はアプローチが容易な北アルプス北部のメジャーなピークです。頂上からは剣岳が圧巻でした。今年は2月に雨が降り、大量の雪が雪崩となってしまった為か、雪庇が小さく、ヤセ尾根も少なく快適な唐松でした。毎年同じだと思ったら大間違い。時には苛められる事もあることをお忘れ無く!

このページのトップに戻る

雪の上高地

・3月16日(火)〜17日(水)

大正池からの穂高
大正池からの穂高

 「風の谷」の雪の上高地を目指した山歩きは、けっこう多難です。最初は自炊で徳沢園泊まりを予定していたのですが、豪雪で徳沢園のほうから「到着できなかった大変だから・・・・」と断られ上高地内の寒い寒い安曇村の連絡所に泊まった経験でした。寒さと雪の印象が強く残りました。その後、沢渡のペンションを使っての上高地だったのですが、一昨年は雪崩で国道が閉鎖となって撤退、昨年はたしかに上高地を一周することには成功したのですが、空前絶後の猛吹雪。車道を辿るのも心細い状態でした。そして今回。やっとやっと快晴の暖かい春の上高地と出会いました。絵はがきのような大正池からの上高地。ゆるやかに噴煙を上げる焼岳。どこからでも見える穂高連峰。時々刻々と変化し大きくなっていく穂高連峰の眺めは河童橋で最高の迫力でした。スノーシューで自由に歩き回った上高地は、夏では想像もできない新しい発見と新鮮さに満ちていました。
 それにしても驚くほどの暖かさ。霞沢岳側からは沢山のブロック雪崩が落ち、アチコチで水が流れだしていました。吹く風も、木々の姿も既に春の気配でした。もちろん、何度かの吹雪が上高地を一層白く染める日も何回もあるはずです。それでも、北アルプスが確実に春に向かいつつあることを実感した雪の上高地でした。

このページのトップに戻る

雲取山登頂と石尾根縦走

・3月9日(火)〜10日(水)   ・天候  9日晴れ 10日晴れ
・コース 奥多摩駅(バス)鴨沢〜堂所〜ブナ坂〜雲取山〜雲取山荘(泊)〜雲取山〜ブナ坂〜七つ石山〜鷹の巣山避難小屋〜六つ石山〜奥多摩駅

ブナ坂近し!
ブナ坂近し!

 暖冬、暖冬と言われながら実は21世紀の声を聞いてから、山は何故か豪雪が続きました。とりわけ雲取山は毎年のように早くからの積雪が覆いました。一昨年に至っては頂上には1mを越える雪庇が張り出し、山頂から雲取山荘までは深い積雪に腰近いラッセルを強いられました。それが今年はどうでしょう。道端にはイヌフグリが可愛く咲く陽溜まりの鴨沢からの道には、所々で雪が凍りついた以外には雪は見当たらず、一応の積雪らしいものが見えたのはブナ坂近くになってからでした。それにしても暖かい陽射し。毛糸の帽子も要らない穏やかな天候の中にありました。葉を落としたカラマツやブナの木々の向こうに黒く大きな飛竜山、大菩薩が肩を並べました。3時半、雲取山頂上に到着。静かな美しい夕暮れでした。翌日も見事な晴天の下でした。「石尾根を歩ける所まで・・・・」という計画でしたが、少ない雪と安定した天候の中、鷹の巣山登頂という予定外の希望も持って私達は、この長い長い尾根の縦走に向かいました。七つ石山では、たった今越えてきたばかり雲取山がもう遙な向こうに退き、朝の山頂で堪能した南アルプスが、またまた大きく望まれました。殆ど平坦な縦走路に千本ツツジ下、巳の戸の大クビレと足は進みます。そして一気の鷹の巣山の登り返しは、一歩ごとに背景の山々が大きく大きくなっていく道でした。雲取山とはひと味違う鷹の巣山からの展望は、南に大きく開けた明るい楽しいものでした。そこから六つ石山への縦走路は本来は南の斜面を緩やかに巻いていくものでした。しかし、私達は水根山、城山と越えていく稜線の道を辿りました。稜線の上は登り下りはあるものの、ブナの木々が美しい防火帯の長閑な楽しい道でした。思わぬ近さで将門馬場の小広いカラマツ林を抜けて雪の斜面を経て六つ石山のドロンコの山頂に着きました。今、越えてきた鷹の巣山が既に見上げる角度で眺められる、ここも明るく広い山頂でした。本当に大変だったのは、実はここからでした。標高1000mを越える下りが、6時間近い行動の後に始まりました。グイグイと高度を下げる急峻な下り、目の前の大岳山がドンドン高くなっていく下りでした。下に町が見え、町の音が聞こえ奥多摩の町の中に私達は下り着きました。
 「風の谷」の「やまあるき」では今回のように8時間を越える行動時間は滅多にないことです。憧れの七つ石尾根の全部を鷹の巣山も含めて歩き通す事ができたことを本当に嬉しく思います。

このページのトップに戻る

杣添尾根から横岳

・3月6日(土)〜7日(日)   ・天候  6日雪 7日雪
・コース 韮崎駅(マイカー)横岳登山口〜林道〜2400m台地(泊)〜三叉峰〜横岳奥の院〜三叉峰〜2400m台地〜横岳登山口

稜線を目指してラッセル
稜線を目指してラッセル
朝焼け
朝焼け

 首都圏、関東に住む登山者にとって冬の八ヶ岳は最も頻繁に登られる山です。首都圏から比較的短時間で達せられる茅野駅までの列車。登山口までの容易なアプローチ。食事付きの暖かい山小屋。施設が整っているから多くの人々が集まり、人々が集まるからトレースがバッチリ付き、安心して登れる・・・・3000m近い本格的な高山であるにも係わらず多くの場合、無理無く登れる貴重な山とのに印象があります。しかし、それは西側に限っての話。東側、佐久側・小海線沿線からの登山コースは夏の清里等の賑わいからは考えられない静寂と困難の中にあります。登山口までの交通機関は無く、深い樹林の中ではラッセルを強いられ森林限界を越えてからは複雑な雪庇やキノコ雪が行く手を阻み、そして何よりも宿泊施設はおろか、他のパーティーの姿を見ない世界が広がります。その八ヶ岳本来の姿。3000m近い寒冷な稜線の姿がそこにあります。今回の杣添尾根は、その何本かの尾根の中にあって、困難が無く、急峻な岩稜やヤセ尾根を持たない代わりに、静かな佐久側のルートの中でもとりわけの静寂と、稜線への標高を自力で勝ち取る八ヶ岳本来の楽しみが満ちたルートです。二日間の間、結果的に一瞬たりとも止む事の無かった雪。残念な事に初日は先行パーティーがおり、トレースが付いていましたが、私達の声以外は響かない、コメツガとシラビソの森の美しい登りでした。二日目は森林限界までは僅か。そこからは久しぶりの本格的なラッセルと自力で一歩一歩と登り詰めていく感触は素敵でした。小さな雪庇が風の関係で左右に入れ代わりながら張り出し、それをかわしながらの登りでした。飛び出した主稜線は、流石に西側からの風が吹いていましたが、岩稜混じりの稜線歩きの末に横岳奥の院の三角点は待っていました。
 下山して見上げた稜線は、皮肉な事に美しく輝いていました。山中に居る間は、ついに全く山の姿も見えなかった事も、何故か嬉しく思える不遇の杣添尾根でした。

このページのトップに戻る

北八ヶ岳周遊

・3月2日(火)〜3日(水)  ・天候 2日晴れ時々雪 3日晴れ後曇り
・コース 茅野駅(マイカー)メルヘン広場(スノーモービル)麦草峠〜白駒の池〜高見石南道〜高見石〜オコジョのコツ(スキー組は高見石北道経由)〜駒鳥の池〜麦草峠(ヒュッテ泊)〜茶水池〜雨池〜雨池峠〜笹平〜五辻〜出会いの辻〜メルヘン広場(スキー組はメルヘン街道経由)(マイカー)茅野駅

高見石下の「コツ」の「歩くスキー」
高見石下の「コツ」の
「歩くスキー」

 春の北八ヶ岳は本来、最も深い雪が覆う時期です。本格的な寒波のやってくる時期が過ぎ、定期的な低気圧が日本付近を通過するようになると、この森林高地は最も深い雪に覆われます。けれども、今年は2月末に土砂降りの雨が降り、ガクンと雪は減ったようです。深雪に足を踏み入れると氷の層があり、どうやら、これが雨の結果のようです。「歩くスキー」とスノーシューは、北八ヶ岳の早春の深雪を利用した独特の山歩きを可能にする道具です。必ずしも夏の登山道に囚われない、気の向くまま、かつてのこの山域を歩いた記憶を元に夏には近づく事ができない場所を動き回る事が可能です。想像もできない角度で浅間山が佐久盆地を挟んで見えたり、本来、見えないはずの山が見えたり、遠いはずの道が近かったり、思わぬコメツガの巨樹があったり、サルオガセの森を抜けたりと様々な驚きと出会えます。今回は高見石の下りでスノーシュー組は「コツ」と呼ばれる溶岩台地に足を踏み入れました。溶岩台地は北八ヶ岳の景色を特徴付けるものです。ゴロゴロとした大岩がゴロゴロし、その上に何重にも倒木が覆い、その上に苔が生え、木々が育ち・・・・と言う世界は夏には到底足を踏み入れられない困難の地です。その上に雪が積もり、それが溶け、締まり、その上に雪が降り・・・・を繰り返した早春の一時、それらが素敵な広大な雪原と化し明るい広場と展望を見せてくれます。今回もそれが可能でした。白駒の池、雨池も広々とした雪原と化し、五辻、出会いの辻も明るい展望の広場へと変身しました。一晩の小雪に白く化粧したタンネの森、いち早く春の訪れを感じて枝の先を赤く染めたダケカンバの木々、鬱蒼たる原生林、森を抜け、ハッと目覚めさせられる南北中のアルプスの大展望。多くの発見が、またありました。
 早すぎた春と凍った雪に、「歩くスキー」組にはちょっと難しい二日間でしたが、必ずしも頂上にこだわらない、北八ヶ岳の魅力を最も敏感に感じられた縞枯山を周遊した今回の山歩きでした。

このページのトップに戻る


 Homeへ戻る