宿題 「 秋 」    嶋澤喜八郎  選

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秋の七草食べられぬ草ばかり 秋貞敏子
松茸をやめて椎茸狩りにする 篠原伸廣
喪中はがきこないようにと祈る秋 西原珠眞瑛
食欲に負けて詩人になれぬ秋 吉崎柳歩
一面の椎の実拾う子が居ない 日野 愿
移ろいの秋を愉しむ詩人の目 辻  葉
ヒトの世は如何とはぜる栗の毯 永井玲子
くちづけを促したのは秋の月 松谷大気
点滴の一滴ずつに深む秋 倉 周三
秋深くTシャツだけの子が走る 西原珠眞瑛
秋までがリミットという恋に生き 辻  葉
晩秋のポストへぽとり喪のはがき 長江時子
宝物のように拾っている落ち葉 三村 舞
花時計のダリアを菊に植え替える 日野 愿
秋探し自分探しも兼ねて行く 神野竜二
紅葉や貧しい顔を裏返す 松谷大気
秋ゆらす蓑虫ほどの迷いもつ 岡田幸子
瘡蓋へ秋の音符がやさしすぎ 上嶋幸雀
源氏読む肩に木の実の落ちる音 小寺竜之介
ふかし芋買ってブランコ乗って見る 永藤弥平
つるべ落とし真っすぐな道折り返す 森田律子
一匹の秋のはぐれ蚊寄ってくる 森下よりこ
秋茄子を漬けて樽ごと嫁にやる 井本清山
里芋をつるりとむいて秋にする 橋倉久美子
秋にはいつも予約してある調律師 寺川弘一
よれよれの地図と佇む秋探し 森田律子
月天心読みかけの本伏せて寝る 前田孝亮
銀杏散る売れぬ詩人を追うように 長江時子
落ち葉のために庭を綺麗に掃いておく 寺川弘一
ギンナンも証人喚問も臭う 岡田幸子
大根も菠薐草も美味くなる 日野 愿
柿食って更に静かになった夜 天根夢草
秋も私もモノトーンのままに終わる 辻  葉
秋だから空と話をしてみよう 青砥たかこ
秀・柿を見ているだけで豊かになってくる 三村 舞
秀・青空と会話をしない秋の墓 天根夢草