燃えるみずうみ
ひまわりの擬態を一晩したままであなたをここに待っていました
生きている指を重ねて感じあう地の底をゆく電車一輛
好きだった世界をみんな連れてゆくあなたのカヌー燃えるみずうみ
パイプオルガンのような光のさす部屋にここはどこかとあなたは言った
シスターよ あなたの中にあかあかと淋しく燃えるサイレンがある
虹になんて謝らないわ黒土に汚れた素足こすりあわせて
カルデラ湖に熱き水涌く真夜中のこころはとてつもなく奪われる
空よそらよわたしはじまる沸点に達するまでの淡い逡巡
ふたりして床に眠れば絵日記の太陽ひとつさびしく燃える
手の甲の火傷のガアゼ剥がすとき森を羽ばたく鳥を想いぬ
(歌集『青卵』より)