雲を見て飲むあついお茶 わたしたちなんにも持たずここに来ちゃった すれ違うガラス越しにさよならを開くてのひらひらめくひかり 病院の忘れ物の箱の中あなたの白いうつろな指紋 遠くから来る自転車をさがしてた 春の陽、瞳、まぶしい、どなた 腹話術の人形ふいにはずされたようなあなたの笑顔のために
(初出『パピエシアン』99年2月号)
東直子の短歌へ戻る