7月5日OEK第495回定期公演PH

7月5日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第495回定期公演PH
指揮:ニル・ヴェンディッティ、アコーディオン:クセーニャ・シドロワ
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 「色彩と陰影のショーケースーThe best entartainment for you!」と題するオ−ケストラ・アンサンブル 金沢(OEK)第495回定期公演。予習が全く不可能な曲の連続に期待して石川県立音楽堂に向 かった。

   ロビーコンサ−ト及びプレトークは無かったようだ。

 コンサート1曲目は、レスピーギ:《ボッティチェリの3枚の絵》。OEKは8-6-4-4-2の対向配置。金管はHr、Tpのみ。Hp、Orgが加わる。第1曲は春(Primavera)。レスピーギはフィレンツェのウフィツイ美 術館を訪れて着想を得たそうだ。彼はローマ3部作で有名であり、標題音楽が得意。尚、ufficio(伊)は英語でoffice(事務所)である。指揮のマエストロ・ニル・ヴェンディッティは小柄だが、勢力的指揮 を披露。小気味良い。Tp、Obソロ、再びTpソロに続いて。舞曲風に進行終了。第2曲は東方三博士の礼拝。イントロでFlが歌い、FgとObのコラールで三博士の到来を告げ、やや東洋的旋律で進行。codaで再び Fgがその喜び表現し、終了。第3曲は有名なヴィーナスの誕生。Flのイントロに続きcresc.でffの高揚感を演出。しかし、codaはpで余韻を残して終了。私は、東方三博士の礼拝図は知らないのだが、春とヴィー ナスの誕生ではウフィツイ美術館の絵を連想できたのは、流石レスピーギ作なのであろう。習作であった。
 2曲目は、ピアソラ:バンドネオン協奏曲《アコンカグア》(アコーディオン版)。アコンカグア(Aconcagua)は、アンデス山脈にある南米最高峰の山(6960.8 m)である(ウィキペディア)。OEKは弦楽のみで金管・木管は無し。但し、Timp、Drms有り。第1楽章はAllegro marcato。marcato は「はっきりした」であり、Timpのffで開始後Acod(アコーディオン)開始 。やや穏やかな感じの曲に聞こえたが、これはBn(バンドネオン)とAcodの違いなのであり、Bnは鋭く、メリハリのある音色が特徴。 タンゴのタンタンタンタタとリズムを刻むにはBnが向いている。従って、marcatoなのであろう。しかし、アコーディオン版としたのはAcodのより幅広い音色用に編曲されたと思われる。これをクセーニャ・シ ドロワさんが熱演。カデンツァの後一旦悲しげなメロディへと変わり、アップテンポし、ダダダダーンで終了。第2楽章はModerato。Acodによる引きずるような主題。6000m登山はいくつかのベースキャンプが必要。 その苦しさの表現か。中間部にヤングさんのVnソロ。お花畑であろう。後半はHpがリズムを刻みAcodとのDuo。タンゴ風に緩やかに終了。第3楽章Prestoは再びTimpのffで開始。Drmsは木を叩くような擬音。中 間部は何故か舞曲風。Codaは感動的に分かり易く終了。登頂に成功したようだ。アンコールはSergey Voitenko:Revelation(仏 啓示)。Voitenkoはロシの作曲家。ロシア風ジプシー的曲想はAcodによく似合う。 クセーニャ・シドロワさんのしっとりした熱演であった。

 休憩を挟んで、3曲目はサイ: 3つのバラード。続いてクセーニャ・シドロワさんのAcodが加わる。第1曲ナジムは舞曲風。プログラムによれば革命家ナジム・ヒクメットへのhommage(仏 敬意)らしい。第2曲 クムルはトルコ語で「鳩」の意とのこと。第2Vnのリズムがしっかりと展開。Acod開始後は、映画音楽風に進行・終了。第3曲は愛する人たちのためにで、引きずるような曲想で、突然終了。サイと親交のあるシド ロワはこの曲をたびたび演奏しているそうだ。

 4曲目は、イベール:室内管弦楽のためのディヴェルティスマン。divertissement(仏)はdivertimento(伊)楽しみ、気晴らしの意。OEK弦楽5部は2-2-2-2-1。Pfが加わり、Fl、Fg、Hr、Tp、Tb各1。第1楽章 は賑やかな序奏。第2楽章行列はFlによるイントロ。尚、プログラムにあるメンデルスゾーン:《結婚行進曲》は今回は流れず。第3曲夜想曲はPfがリード。第4曲ワルツのFlによるイントロは3拍子ではないと思い きやTpによるジンタが始まる。やはりワルツである。第5曲はパレード。TpのイントロにTbも競演。第6曲フィナーレはPfソロのイントロ。イベールはフランス人なので曲はフランス的洒脱を感じると書きたかった のだが、カンカンも挿入され大混乱の内に終了。気晴らしであったことは紛れもない事実である。アンコールは第4曲ワルツ。聴衆の手拍手で盛り上がりの裡に終了した。

さて、正に色彩と陰影の室内楽的ショーであったのだが、指揮者マエストロ・ニル・ヴェンディッティはOEKが室内オーケストラからフィルハーモニーへの過渡期であることを知らされていなかったと思われる。 彼女が室内楽的プログラムより脱皮し、堂々たるフィルハーモニープログラムを聞かせてくれる機会が訪れることを願うのである。


Last updated on Jul. 05, 2025.
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