10月17日OEK第486回定期公演PH

10月17日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第486回定期公演PH
指揮、ヴァイオリン:佐藤俊介
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 「モーツァルトと同時代人たち〜次代を担う佐藤俊介の弾き振り〜」と題するオ−ケストラ・アンサンブル 金沢(OEK)第486回定期公演。指揮、ヴァイオリン:佐藤俊介に期待して石川県立音楽堂に向かった。

   電車で金沢駅に着き、東口で今年一番のスーパムーンを撮影し、音楽堂2Fへ上がったが、プレトーク、ロビー・コンサートはなかったようだ。

 コンサート1曲目は聞いたことがないヴァンハル:交響曲ニ短調。ヨハン・バプティスト・ヴァンハルはウィーンで活躍したチェコの作曲家だそうだ。コンマス・ヤングさんと一緒に マエストロ佐藤が登場。彼は腕を捲ったYシャツ姿。若々しい。OEK弦楽5部は7-6-4-4-2の対向配置。何故7かというと、協奏曲は別として交響曲ではマエストロ佐藤を含めてという意 味であろう。管は2管編成。第1楽章はAllegro。sfが効果的なイントロで開始。曲想的には坦々と進行。マエストロはVn8の1員として演奏。ハイドン得意の一旦停止後、やはり古典だとの 印象で終了。第2楽章はArioso ma non lento。Ariosoは「風通しがよく明るい」の意。従って、流れるようなイントロ。Hrのトリルも珍しい。pで短く終了。第3楽章はMenuetto。聞き慣 れると分かる綺麗な三拍子。6連符だと思うが、これも効果的。第4楽章はPresto。急を告げ、1拍目のsfがアクセント。ここでも一旦停止し、短いCodaで終了。バロック風モーツァ ルトと思わせる1曲目であった。

 2曲目はマエストロ佐藤のソロが入る、ミスリヴェチェク:ヴァイオリン協奏曲。ヨーゼフ・ミスリヴェチェクはプラハ出身のチェコの作曲家だそうだ。第1楽章Allegroは、軽やかな 雰囲気の前奏で開始。弦が綺麗。短い前奏の後マエストロ佐藤のVnソロが開始。彼はソロを弾く時は客席に向かって、指揮の時はOEKにと使い分ける。ソロVnは特に高音が綺麗。終了前 のカデンツアは余り仰々しくなく、静かな曲想で終了。第2楽章はAdagio。抒情的でVnソロが情感溢れる演奏。短いカデンツアで終了。第3楽章Prestoはff、疾風怒濤で開始。マエストロの ソロはただガンガン演奏するのではなく、強弱を上手く使い分ける。カデンツアを経て、高揚裡に分かり易く終了。どちらかというとヴィヴァルディ風に感じられた協奏曲であった。

プラハ2006
 休憩を挟んで、3曲目はモーツァルト:交響曲第38番《プラハ》。Tp二人、Timpが加わる。1787年1月22日モーツァルトはプラハで自ら《フィガロの結婚》を指揮したが、これに先立つ1787年 1月19日プラハにてこの曲は演奏され、《プラハ》のニックネームが生まれた(Wikipedia、www.ja.m.wikipedia.org)とのことであった。しかし、最近では、この年の待降節にウィーンで催さ れた予約演奏会用に作曲され、プラハ行きの前に既に初演された(西川尚生『モーツァルト』音楽友社、2018)との節が提起されているらしい。兎に角、プラハは綺麗な都市で、2006年 に著者も訪問した。その時の写真を添付する。
 さて、第1楽章はAdagio - allegro。ニ長調にも拘わらず、憂えも少し感じられる荘厳な レーラシド#レ で開始。荘厳さは突然Allegroに急展開。レのシンコペーションとなる。所が、 曲の途中で。Vc奏者が退場のハプニング。絃が切れたようだ。曲はマエストロの精力的な指揮で進行、OEKも良くこれに応えて演奏。ffとpのアクセントも心地よい。一旦退場したVc奏 者が戻り。第2楽章は6/8拍子のAndante。ト長調 レーシラソドー つまり厳かに歩く速さのワルツ。タンタンタタタター で終了。一般的には第3楽章はMenuettoが普通。しかし、第2楽章 を6/8拍子としたため、これがMenuetto代わりとなり、第3楽章は終楽章Prestoになったようだ。Prestoは早い。中間部でFlソロと弦楽の対話がニ長調で綺麗に進行。高揚し、念を押して終 了。ブラボーが飛び交うOEKとこれを引き出したマエストロ佐藤の熱演であった。
 
 アンコールはハイドン:交響曲第60番《Der Zerstreute、うかつ者》第5、6楽章。独語 zerstreut は散漫な、ぼんやりしたの意。曲はハイドン風に進行したのだが、ここで又ハプニン グ。マエストロの見ていた楽譜が床に落ち、散乱してしまった。マエストロはこれを一枚ずつ拾うのだが、その間指揮は空白。是を救ったのがコンマス・ヤングさん。的確に管楽器に指 示を出し、なんとかクリア。コンマス・ヤングさんは流石であり、曲は無事何事もなかったのごとく終了した。これはOEKライブラリアンが悪い。第5、6楽章のみということで一枚ずつ コピーした楽譜を綴じもせず、重ねておいたのが原因だ。
 終了後玄関を出るとスーパームーンは日航ホテルの最上階あたりに達していた。スーパームーンも高くなると普通の月サイズになるのだと感心しながら、金沢駅に向かった。

Last updated on Oct. 17, 2024.
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