「川瀬賢太郎のアメリカ・プログラム」と題するオ−ケストラ・アンサンブル金
沢(OEK)23-24シリーズ最後のコンサート。自転車で出掛けようと思っていたら雨。仕方がないので車に変えて出発。駅西駐車場に着いたら長い行列。時計駐車場に回り、R階に車を止
め石川県立音楽堂に向かった。
音楽堂2Fに上がると、丁度マエストロ・川瀬賢太郎さんのプレ・トークが終了。残念ながら話は聞けなかった。
コンサート1曲目は聞いたことがないアイヴズ《答えのない質問(The Unanswered Question)》。OEKの弦楽5部は10-8-6-6-4の対向配置。パイプオルガン席にはFl、Cl、Obが配置。
VaとVcの静かな通奏低音で開始。木管楽器群が突如短いフレーズ。間をおいて、Tpが甲高いフレーズ。これは質問らしいのだが、Tp奏者を探すが舞台にはいない。何処にいたか?
曲終了後判明する。さて曲はFlの答えの探求が活発となるが、質問には答えられないまま、あきらめて消え去り、質問が最後にもう一度発せられると、弦楽がpで静かに消えていき
終了。尚、Tp奏者は曲終了後舞台袖から登場した。舞台袖で演奏していたのだ。
2曲目はコープランド:《アパラチアの春》組曲。この曲はバレー音楽で、第1曲Very slowlyは19世紀前半のアパラチアの春。朝を思わせる曲想で、絃とFlとHrにHpが加わる。第2曲
Allegroは甲高い弦によるラララララソラソラと1日の始まりを告げる。第3曲Moderato(新郎新婦)は間奏曲風 。新郎新婦の睦まじい踊りで、ClとObソロ有り。第4曲Fastは信仰覚
醒家とその信徒達のスクェア・ダンス。Flが大活躍。第5曲Allegroは花嫁のソロ・ダンス。VnとPicの旋律と共にCbも存在感を示し、輝かしいクライマックス。第6曲Meno mossoは
「より少ない活発」。従って、美しく追憶にふけるかの調べが、第1曲の静かな雰囲気を蘇らせる。第7曲は<シンプル・ギフトによる変奏>。プログラムによると通称「シンプル・ギフ
ト」と呼ばれるシェーカー教徒の聖歌をClソロが演奏。この変奏曲が続き、終了した。終曲第8曲はModerato。静かな祈りの音楽でバレ−音楽は終了した。バッハのコラールと違いコラール
風でないコラールであった。尚、アンコールでローストのコラールが演奏されたのだが、これは後程。
休憩を挟んで、3曲目はご存知ドヴォルザーク:交響曲第9番《新世界より》。独語では《Aus der neuen welt》なので、《新世界より》が正しい。第1楽章Adagbio - Allegro
moltoは、Vcによるゆったりとした序奏。一転してHrのユニゾンと共に力強い主題が展開。第2楽章LargoはイングリッシュHrによる「家路」が流れる。イングリッシュHrはObと同族の
管楽器で、Obよりも低い音を出す。従って、イングリッシュHr奏者はOb奏者が兼任するようだ。ところが、「家路」の最後で問題が発生。違和感のある音。なれない
イングリッシュHrの所為であろうか、これも勉強である。しかし、OEKはそれを引きずらずに演奏したのは立派。尚、プログラムには数小節にのみTubが用いられるが、マエストロの意
向でTubなし版が使われたとある。マエストロ・川瀬の遠慮なのかも。これは堂々とTub有りを主張すべきであった。第3楽章Molto vivaceは民族舞踊のスケルツオ。第1主題、第2主題が
頻繁に現れる。第4楽章はAllegro con fuoco。fuoco(伊)は火だが、この場合は危険。即ち、危険に対して急速にの意。プログラムによれば蒸気機関車。これまでの主題や動機を有
機的及びダイナミックに結合し、高揚の後Codaで一旦pに落とし、再度cresc.して華麗に終曲する。金沢では聞けなかった大オーケストラ版《新世界より》の終了であった。尚、我が
国ではDvorakをドヴォルザークと呼ぶのだが、チェコ語ではドゥボラックと発音するようだ。
アンコールは、弦楽によるロースト:《カンタベリー・コラール》。大オーケストラ版の後の静かなコラールに相応しい素晴らしい弦楽曲であった。OEKの綺麗さはやはり室内楽にあるのであ
り、大オーケーストラ曲を演奏するには現状では荒さが露呈することもあるということが分かった。交響楽団への変身は細心で入念なリハーサルをして可能である。マエストロ・川瀬
にはその先達になって欲しいものだ。
Last updated on Jul. 07, 2024.